物語詩

紅葉カナ

あなたに捧げる愛の詩

『憂鬱な月曜日』


憂鬱な月曜日

人々の期待を背負って

あなたはこの国から去ってゆく

幼子のような笑顔を残して

そっと私を抱き寄せて小さく囁く

必ず帰ってくると

そして私は歌った

祈りの歌を

この世界はどこへ向かっているの

手足が震えるのを懸命に堪えた

街が歓喜の声をあげるのを聞きながら

憂鬱な月曜日



『孤独な火曜日』


孤独な火曜日

あなたの戦果が届くたび

私は気が狂いそうになる

栄光などいらない

どうか無事でいてほしい

あなたのいない苦しみには耐えられない

そして私は歌った

悲しみの歌を

一人ぼっちにはさせないで

息を殺してあなたの帰りを待った

街に人々の断末魔が響くのを聞きながら

孤独な火曜日



『絶望の水曜日』


絶望の水曜日

街は死体で溢れかえった

人々の涙をかき消して

終焉の鐘が鳴り響く

私は安堵した

もうあなたは戦わなくていいのだと

そして私は舞い踊った

もうじきあなたが帰ってくる

私は待った

二人の部屋を暖めながら

しかしあなたは帰って来なかった

絶望の水曜日



『決意の木曜日』


決意の木曜日

人々は私を嘲笑った

不相応な愛を望んだからだと

街は未来へ向かって進んでいく

しかし私は動けない

この部屋の呪縛に囚われたまま

そして私は歌った

希望の歌を

二人の約束を信じてる

決して涙は流さない

再びあなたと暮らせる日を夢見ながら

決意の木曜日



『愛しい金曜日』


愛しい金曜日

傷だらけの体を引きずって

あなたは私の元に帰ってきてくれた

全ての記憶を失って

それでも私は嬉しかった

戸惑うあなたを抱きしめながら

私は歌った

眠りの歌を

あなたは優しい人だから

誰も傷つけたくなどなかったのでしょう

あなたの額にキスをさせて

愛しい金曜日



『幸福な土曜日』


幸福な土曜日

綺麗なドレスを纏った女性と手を取り合って

あなたは笑っていた

全てを忘れた無垢な瞳で

私は気づいてしまった

もうあなたを苦しめるものは何もないのだと

そして私は歌った

祝福の歌を

あなたの未来に私はいない

木漏れ日の光とともに消えていく

あなたの幸せだけを祈っている

幸福な土曜日



『暗い日曜日』


暗い日曜日

両腕に花をいっぱい抱えて

ふたりの部屋へと帰っていく

疲れた心を引きずって

私には分かっていたのだ

あなたに私は釣り合わない

私は歌った

愛と苦しみの歌を

私は一人ぼっちとなった

そして声を殺してすすり泣いた

木枯らしがうめき叫ぶのを聞きながら

暗い日曜日



苦しみに耐えかねたら

私はいつか日曜日に死のう

生命の蝋燭を燃やしてしまおう

あなたが戻ってきたとき

私はもう逝ってしまっているだろう

椅子に座ったままで

目を見開いて

その目はあなただけを見つめている

でも、どうか怖がらないでほしい

私はあなたを愛しているのだから

暗い日曜日

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