シンシア -秘宝城-

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第1話

 早歩きで目の前にわずかながらに光る宝に向かって進んで行く神谷 潤一 26歳だった。

自分だけでも生き延びれれば、大金持ちに成れば、人を裏切ってでも、蹴り落としてでも上に上がればいいという表っ面のいい男が神谷だった。


「へっへ~、のろまなゾンビさん達、俺を捕まえてみろよ~、早くしないとお前らが守っている宝物~、取っちゃうぞ~、ハッハッハ~」 からかって、お尻ぺんぺんと二回したのだった。


歩いて来るゾンビと距離が離れる。 黄金に光る宝の山に近付いて行く・・・目が見開く・・・顔に笑みが漏れる・・・目の前に立つ。

「ハハッ、ハハハッ、ハ~ハッハッハァ~、ヤッター、ザマ~みろっ、俺は、運がいいんだ~、そういう運命の下に産まれたんだ~、ハハハッ、ヤッター」

一人で騒いでいる間に後ろから、二百というゾンビが歩いて近付いて来ていた。


宝の山がレイアウトするように美しく上下左右比対象に雛壇を作り上げていく。 ふと殺気を感じ周りを見渡すとゾンビの大群が居た。 同時に宝の山の周りが地中深くに沈んで行き、ゾンビと神谷の間に深い谷間ができ、神谷は、捕まえられない状態に成った。


ゾンビは、神谷を一・二・三階席から見ていた。

「ハハッ~、ザマ~みろっ、俺を捕まえられないだろう、俺には、神様!?が付いているんだ、ハハッ、ザマ~みろっ、ゾンビ野郎」

 大声を出し、両手を天に向かっていっぱいに広げた、宝の山の前に置いてあるワイン ( ワイン+鎮痛剤+覚せい剤 )を一気に飲み干した。

 宝を持てるだけ、二つのリックにいっぱいに詰め込む。


宝の山の真上から、螺旋のネジが出て来た。 天井から赤い帽子をかぶった棒が出て来て、くぼみをスキーで滑り降りて来た。

ジャンプする瞬間に頭上の赤いリンとネジに付く発火剤とが摩擦し、火を点けてスキージャンプのようにV字で飛んで下降して行った。


地面のガスに引火する。  ゴー!?という音と爆炎に神谷が包まれた。 幾重もの薄い火のミステリーサークルの壁に飲み込まれていく。

「アーアッ、ア~、助けてくれ~、助けて・く・レ~、ア、あ、ア、ア、ア~!?・・・・・・」 ワインを飲んだ事により、熱さ、痛さは、解っているのかは、分からないが、ゆらりゆらりと倒れては、立ち、倒れては、逃げてという行為を何度も×3 繰り返していた。 しかし、最期には、崩れるように朽ち果てて焼却されてしまった。


「一生懸命に逃げようとしていたみたいだけど・・・あ~あっ、やっぱり炎には、勝てないんだね~、あの火の凄さじゃね~、俺達も助からないよ、アーメン、安らかに眠ってくれ、宝を取れなくて残念、残念」

ゾンビは、みな引き返して戻って行った。


「逃げ道は、左側の鋭角の細く小さい道なのにね~、丁度こバカにしてお尻ぺんぺんをした辺りかな~・・・!? 残念でした・・・宝に目がくらんだのかなっ・・・!? あらら、体に『exit』のプレート当たったのかなっ!?」

床に落ちていたプレートを手に取って直して帰って行った。

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