第14話 ジンクスってあるよね




 うちの店、なのかぼく自身なのか。

 ジンクスがある。


 ぼくが休憩に行くと、店が混むらしい。しかも、かなり混む、らしい。


 らしいというのは、ぼく自身がいないから分からないわけで、休憩からもどってくると、よく言われる。


ザキ江「いま、すごい混んでたんですよ」


雲江「は?」



 周囲を見回しても、店が混んでいた痕跡はまったくない。


 最初は冗談だと思っていたんだが、どうやら本当らしく、しかもぼくが休憩から戻る前に混雑はすっと引くらしい。まあ、ぼく自身がいないので、よく知らないんですが。




 むかし店にいたエノちゃん(60代 女性)は、マジで怒っていた。


エノ「もう、いま雲江さんがいないとき、すごい混んだんだからね」


 初めのうちはこんな反応だった。だんだん腹が立ってきたらしい。何回か続くと、


エノ「もう、ちょっと! すごい混んだんだから! どうにかして!」


 そして最後には、


エノ「ちょっと、雲江さん、いいかげんにしてよ!」


 いや、ぼくにキレられても……。




 ちょっと前は、休憩が終わってドアを開けた瞬間、目が合ったザキ江さんに爆笑された。


 なんでも、混雑するほど来ていたお客さんが、すっと引いたので、「そろそろ雲江さんが休憩からもどってくるよ」と話していた10秒後にぼくがドアを開けたかららしい。


 だからと言って、人の顔見ていきなり爆笑はないと思う。





ノリ「最初は、みんなそう言っているから、冗談だと思ってたんですけど、本当だったんでビックリしましたよ」


 真面目に感想述べられても困る。





 ある日、お店が暇だった日のこと。売り上げがヤバいと思ったかどうだか、B店長がこう言いだした。


B店長「ちょっと暇だから、雲江さん休憩行ってきて!」



 ………………。



 休憩から戻ったら、怒られた。


B店長「雲江さんが休憩行っても、店、混まないじゃない!」


雲江「知らんわ!」


 ジンクスなんで、効果を保証するものではありません。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る