第15話 VS寄生獣
ビュル!
<ギィン!>
腐角食が弾かれる。
あれは…『寄生獣』!?
作中では「寄生獣とは人間のことじゃないか?」との示唆もあったが関係無い。
魔物は徐々に姿を現しながら、頭部が分かれ、硬化した刃を矢次早に繰り出してくる。
男も腐角食を硬化し、魔物の刃に応戦し続ける。
<ガィンガィンガィンギィンギィンギィン!>
男はさりげなく腕を刃のように硬化し、隙をついて魔物の心臓を一突きした。
トスン。
魔物は一瞬何が起こったか分からない顔をしたが、男が刃を引き抜くとどす黒い体液が胸から迸った。
「チギャアアアァァ…」
魔物はシワシワに枯れていった。
男は一旦ワープゾーンを腐食パン妖精に閉じさせると、魔物を腐角食に取り込んだ。
障気が強い。
どす黒い何かが男の精神を不安定にさせる。
不安、怒り、恐怖。
そのような精神衛生上好ましく無いものが、心の底にまるでヘドロかコールタールのような重黒く粘重な何かがへばり付く。
これはヤバイ。
男の第六感が警鐘を鳴らす。
男は知っていた。
『人間は弱い』ということ。
地球の覇者のように振る舞う人間は、知恵と数で君臨したに過ぎない。たった一人では野生の猪一匹すら素手では勝てない。
向こう見ずなつもりは無かったが危なかった。
男は考えた。
神は元々人間は向こうの世界から来たと言った。
なるほど人間にしてみればこちらの世界はまさしくユートピアだろう。
いかに退廃した荒野が拡がろうとも、常にあのような精神状態に侵されることを考えればここは天国にさえ思える。
しかしどこの世界の人間も、世代交代が進む度に先人の苦労を『知らない』、『今が当たり前』だと感じてしまう。それは経験が圧倒的に足りないのと、進化の過程では過去ばかりではなく、前を見ていかなければ生きていけないのかも知れない。
つまり、人間に全ての過去は引き継がれない。
なるほどこの世界の神がここを死守しようとする訳だ。
少しでも良い環境を整え、それを糧に生きさせて繁栄させていく。
それも良いだろう。
しかし男はそれも人間のエゴだと捉えた。
何故か?
今出てきた魔物にはフォーカスしていないのだ。
男もまた異形。だからこそ魔物側の気持ちも分かるような気がした。
先程取り込んだ魔物の意識の中に、微かに『淋しい』という気持ちを感じたからだ。
自分に似た『人間』のみを救い、魔物は廃除する。
それこそが代々、この世界の神が行ってきたエゴではないか?
男はそう考えると神殿を後にバイクで飛び去っていった。
つづく。
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