第8話

美波とともに休憩時間を使って、外の空気を吸いにきた俺。

美波『やっぱり、一哉先輩は才能あった!』

一哉『才能はないけど…』

美波『ちょっと…意外でした』

一哉『ほらなー笑気を使って才能!とか言わなくていいよ』

美波『そうじゃなくて…その…』

一哉『…?』

美波『キスとか…普通に出来て…2takeでOKだったから…』

一哉『あっ…』

美波『ちなみに…演技上だけじゃなくて…あれリアルなファーストキスだったんです…』

一哉『えぇ!?』

美波『今回…初めて挑戦することになって…』

一哉『ご、ごめん!!』

美波『いや、相手役も決まってたんですけど…最初見ず知らずの人は嫌だって私が駄々をこねて…』

一哉『…』

美波『それで…気分転換に休みをもらって…昨日…』

一哉『そうなんだ…(まじか…)』

美波『初めて…ファーストキス…演技と言えど簡単に奪った…責任とってもらえますか?』

一哉『えっ!?』

美波『私は…先輩が…なんです…』

一哉『…』

美波『…【好き】なんです…』

一哉『…』

美波『返事は…明後日聞きます…それまでに…』

西野『あ!二人!早いね!…よし、いこうか』

美波がそこまでいったところで…マネージャーの西野さんが

外へとやってきた。

一哉『今日はありがとうございました』

西野『美波と一緒に俳優やってみたら~?監督さんかなり気に入ってたし』

一哉『まあ…いつかは…笑』

その日はそのまま西野さんに送られて、家までたどり着いた。






ー自宅ー


一哉『ただいま…』

瑠奈『おかえりー…すごい騒ぎだったよ』

一哉『ああ…』

瑠奈『でも…私の言った通りでしょ?』

一哉『うん…本当に君は…孫なんだね…』

瑠奈『…』

一哉『瑠奈…?』

瑠奈『うん…』

一哉『ひとつ聴いていいかな』

瑠奈『?』

一哉『来なければ…死んでいたかもね…あれはどういう意味?』

瑠奈『!!』

一哉『…そろそろ教えてくれないか…君がきた本当の目的を…』

瑠奈『それは…』

一哉『教えてくれないなら…俺は…愛理を選ぶかもしれない』

瑠奈『!!…それはだめ!!!』

一哉『…どうして?』

瑠奈『わかったよ…話すよ…』

そこから…瑠奈は淡々と真実を語り始めた。


瑠奈『私は…おじいちゃん…いや、水野一哉さん…あなたの孫じゃないです』

一哉『…』

瑠奈『私が来た目的は…おじいちゃんを守るため…』

一哉『友達…?』

瑠奈『私の…50年後の世界にいる私の本当のおじいちゃん。

その…おじいちゃんを助けるために私はここにきた。

私の祖父はあなたを助けるために過去に怪我を負って…植物状態になってしまっている』

一哉『!!!』

瑠奈『あなたは…今週の土曜日に愛理さんに返事をしに行く。

その時…校門にはいる直前で衝突されそうになる…

それを祖父は助けた。幸い二人とも衝突は免れた。

けど…トラック衝突によって散らばった校門の破片のひとつが

祖父に激突して…意識不明の重大になった…

その結果…植物状態になってしまった。

私は…その現場で祖父を止めにきたの』

一哉『…つまり…俺を殺そうと?』

瑠奈『祖父が苦しんでるときに…すぐに結ばれたあなたたちを私は許せない』

一哉『…』

瑠奈『でも…おじいちゃんを止めても…私があなたを助ける』

一哉『なんで恨んでる俺を…』

瑠奈『私が代わりになれば…おじいちゃんとは無縁の少女が植物状態になるということになる…おじいちゃんは自分の孫である瑠奈と幸せに暮らせる。そして、あなたも美波さんと…結ばれて

しっかり…美月さんを産む。兄妹って最初は言ったけど、その兄は本当のあなたの孫…』

一哉『でも…それじゃ、瑠奈の両親…いや、瑠奈自身が辛いだけじゃないのか…?』

瑠奈『私には…苦しむ…というより植物状態でなにもできない祖父を見てる方がつらい。両親は…私が怪我をした。それだけで終わる』

一哉『…』

瑠奈『でも、これを知ったあなたは私や祖父を助けるために

返事をする日を変えてはいけない』

一哉『なんで?』

瑠奈『あなたの存在が消される』

一哉『!!』

瑠奈『怪我をするはずの祖父を助けるために私はきた。

その時点で…あなたが言うように矛盾が生じる。

その矛盾を消すには…あなたの存在をみんなが忘れればいいだけ。そうすれば私がこの時代に来ることもなくなる…最初の状態に戻るだけなの。だから正確には…存在を忘れられる』

一哉『…』

瑠奈『私が助けたいのは祖父とあなたなの』

一哉『…』

瑠奈『お願いだから…それだけはしないで…』

一哉『…わかった…』


俺は…孫ではなかったこの瑠奈が…どれだけいい子であるのか、

こんな幼い…俺よりも幼いのに祖父を助けようと

恨んでるはずの俺まで助けようとしてくれている。

本当に…彼女の言う通りにしてしまっていいのか…

俺はその日…寝るまでずっと考えていた。

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