03 今だけと君がつぶやく(かたくなな少女、強情な少年)
「忘れてください」
黙っていると、焦れたようにもう一度彼女はくり返した。
「忘れてください、私の事なんて」
否定も肯定もせず、さらに彼女を抱きしめる。
腕の中の少女は、怯えるように身をすくませた。だがそれだけだ、逃げようともがきはしなかった。
そのことにひどく安心する自分が馬鹿みたいだと思う。
それでも、この少女を離せないと切に思うのだ。
しばらくして、少女は小さくつぶやいた。
「……今だけ、です」
「え?」
「今だけこうしたら……私のこと忘れるって、約束してください」
「……じゃあ、離さない」
離したら、忘れろと言うならば。
離したら、逃げていくというならば。
「絶対に、俺は君を離さない」
今だけを、ずっと続けてやる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます