不適切な融資の為の改ざんとは・・・スルガ銀行や西武信金の事件から考えてみた
『不正融資1兆円』 『審査書類の改ざん』『不正融資黙認 スルガ銀行だけじゃない』『審査部への営業からの圧力』『原点回帰は難しい』『西武信金の落合理事長辞任』『業務改善命令』
スルガ銀行事件や西武信金事件は銀行業界にある様々な問題点を浮かび上がらせました。その中で原点回帰は本当に難しいのか?銀行はオワコンなのか?
翻って自分はどうだったか・・・
まずは、取引先から資料を受け取り審査をする。それが、決算書であるとか試算表や、または計画書等様々なものがあるが、その資料は基本は正しいというところから始まっている。
その上で、事業を行い利益を出して融資を回収していく判断をすることになる。
ところが、倒産事例とかでもあるように取引先の資料が正しいとは必ずしもいえないことも事実である。いわゆる、粉飾というものだ。
具体的には、決算書が税務申告様の他、銀行提出用、取引先への提出用等だ。因みに税務申告以外で変えるのは、融資を受けやすいようにとか、取引先の取引条件が良くなるように等理由があるが、もちろんこれはやってはいけない事だ。
銀行員もよくわかっているから、粉飾があるかないか含めた審査はとても複雑で専門的であるといえる。
だから『銀行員が改ざんするなんてありえない』かというと、実情は違っていた。
担当者時代にあったことを今話そうと思う・・・
銀行の審査の一つにコーポレート審査があるこれは、前述である決算書を元に企業の格付けをするのだが、財務・非財務にわけてまず診断する。
財務は安全性や、収益性や成長性等の企業の数値と平均値を比べて機械的に判断する。
それに比べて、非財務は社長の経営能力や歴史人材等を担当者が目で見て確認し判断する。どうしても、担当者が判断するから担当先の非財務は高くスコアリングされてしまう傾向がある。
二つの数値の合計が総合格付となるので担当じゃない本部から見たらワンランクぐらい格付が上がってしまう。但し、これは、改ざんかというと違うと思う。なぜかというと、担当者として実際人物や会社を見た上で判断しているので改ざんではなく、「熱い思い」と言えなくは無い・・・
改ざんは、財務診断の方が重要である。営業利益、経常利益、減価償却等様々な部分で決算書から実体を見抜いていくわけだが、その反対に担当者が実態を隠すような修正をするのだ。ここではいうのはあまりにも問題が大きくなることから詳しくは言わないが、巧妙に修正して財務診断をかさ上げする。
なぜ、このようなことをするかというと、ここでも銀行のノルマが原因の一つといえる。総合的な格付の高い企業の融資に数字のノルマが課されているからで、格付けの低い企業の融資はノルマが無いか逆に、融資後焦げ付く恐れと判断されマイナスの場合もある。
だから、担当者が改ざんしてまでもいい会社に見せてノルマを達成しようとするのだ。
次に、銀行のもう一つの審査である、プロジェクト融資の審査について考えてみる。
スルガ銀行の不動産プロジェクトも同じだが、まず取引先からは銀行の必要な書類が全て充足することはまずない。
事業計画は普通に考えれば、空室率や価格の変動等をストレスかけて作成し、それを更に銀行が厳しく審査すれば、金利を2%以上かけたら計画が成り立つはずが無い。
それを審査を通す為の資料だとして作成してしまうのが、ミソであり、つまりは審査ではなく、融資するための作業なのである。担当も上席も、感覚が麻痺してしまって、本部を巻き込んだ組織の崩壊の原因だと考える。
私も、上司の次長から、
「資料が来ないから、稟議がかけないのではなく、一を聞いて十を想像して作成しろ。それが担当の目利きだ!」
と言われ、資料を作成したものだが、どうしても稟議を通す為の資料になりがちだったといをざるを得ない。
また、取引先には、
「こういう形の計画を出してほしいといったこともある。」
こういうことが、最後には、無い数字を改ざんして融資資料につなげるものなのだろう。
『銀行員の感覚が、改ざんではなく、あくまで内部資料だから銀行の都合のいいように作っても、誰にも迷惑をかけないんだ。だから、世間で何がおかしいのかよくわからない』
『だが、銀行の普通は世間では普通ではない』
■目利きは、将来の事業見通しを極めること。
■一を聞いて十を想像するのではなく、一知りえた情報から仮説をたててそ
れを検証していく姿勢が重要であること。
それをわすれていたことは、組織風土の中で「麻痺していた」ことではすまされず、組織が崩壊していたのだろう・・・ということだ。
今の銀行業は大きな転換期に来ているのだろう。ノルマの廃止や、コンサル強化といろいろ打ち出しているが、私は、銀行はやはり金を貸すのが仕事だと思う。金を貸さない銀行員は、意味がないとまで言いたい。
銀行のお金が企業を成長させ、社会を成長させる手助けを少なからずしてきたと自負している。但し、現実的には融資を断ることも多いし、すべてのニーズにこたえられていないのもある。ノルマに追われた現場もある。
これらをふまえても、ここを乗り越えることをしていかないと銀行に未来はないし、銀行の未来がない日本経済もやはり未来はないのではないだろうか?
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