本編(四日目)+エピローグ

四日目

 四日目。朝食を済ませた須王一家は、全員車に乗り込んでいた。

「さて、睦月。今更だが、忘れ物は無いな?」

 口火を切ったのは龍範だ。

「はい、お父様」

「ならいい。龍野、話し相手になってやれ。お前らはなるべく小声で喋れよ、龍斗、皐月、龍太」

「「はーい!」」

「小声だっつってんだろ……」

 嘆息する龍範。

 しかし、龍野とシュシュ以外の全員は、あっさりと黙った。

「シュシュ。気分はどうだ?」

「ええ。三日前と違って晴れやかよ、兄卑」

「やっぱりお前はこうでなくちゃな。俺も一時は肝を冷やしたぜ」

「心配かけたわね」

「ま、結局は元に戻ったが、な」

「うふふ」

 談笑を続けること三十分。須王一家は空港に到着した。


「さて、お別れだ。睦月、いやシュシュ」

「ええ。お父様」

「最後に一言、俺の息子に言う事はあるか?」

「はい」

 シュシュが大きく息を吸う。そして――思いの丈を、一言に込めた。


「人を歓迎する方法をもっと勉強しなさい、バカ兄卑!」


「へえ、言ってくれるじゃねえか、シュシュ」

 龍野は涼しく、しかし真正面から受け止めた。

「なんてね」

「え?」

「ありがとう。お兄様」

 そうしてシュシュは、出発ロビーを通り抜けていった。

「さて龍野、帰るぜ」

「おうよ!」

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