61-10 明けまして……おめでとう
3人で近所のお寺へ初詣に来ている。
栞と美月は晴れ着を着ているが、ちなみに俺は普通にコートである……もう浮いてるなんてもんじゃない、まあ日頃から栞と二人で歩いても、浮いてる感半端ないけどな。
栞と俺、一緒に歩いていても、学校でなら兄妹って見てくれる。全然似ていない兄妹、でも兄妹とし皆の認識はある。
でも学外なら、俺と栞は恋人として見られているのか? 釣り合わないカップル?
俺は栞が好きだ、多分、え? いい加減認めろって? いや、本当にわからないんだよ! 昨日この気持ちが恋だってわかっただけで、俺が栞に恋をしていると仮定すると、府に落ちるというか、納得出来ると言うか……
でも、でもさ、だったらどうなんだって、だからどうなんだって話だよ。
今現在俺と栞は兄妹として付き合うって所で止まっている。そうあの入学式の前日栞から告白されてから何も変わっていないんだ。俺はいいよって返事をした。してしまっているんだ。今さら付き合おうっておかしいだろ? もう付き合っているんだから。
でだ、俺は栞に兄妹らしく付き合うって言っている。その兄妹らしくの兄妹を取り外すとどうなるか?
どうにもならんだろ? てかアウトだろ? 兄妹で兄妹らしく付き合わない……その、恋人同士になるって、完全にアウトだろ。
そもそも俺と栞は今二人暮らし、兄妹なら別になんて事はないけど、これが恋人同士となると話は変わる。
同棲……そう、同棲って事に、いやいやいやいや不味いだろ、不味すぎるだろ?
だって、だってさ、可愛いんだぞ、綺麗なんだぞ、俺だってなぁ、色々と我慢してるんだぞ? 栞を、妹を恋人認定なんてしてしまったら、そう認識しあの家で二人きりで生活なんぞしたら、栞に迫られたら…………歯止めが効かなくなるじゃねえかああああああああ!
駄目だ、それだけは駄目だ、そんな事になったら退学になる。いくらうちの学校が自由な校風だって言っても、兄妹が正式に付き合って、二人きりで暮らしているなんてバレたら、間違いなく退学に……そして間違いなく親バレに……いくらうちの親が放任主義者だって、妹と付き合うなんて許してくれるわけない。間違いなく栞は名古屋に連れていかれ俺と栞は離れ離れに……嫌だ、それは絶対に嫌だ、離れたくない、栞を離したくない、俺の側に……
つまりだ、栞と一緒に居続けるには、全部隠すか、今まで通りにするかの2択……てか今まで通りの1択になる……なるんだよ。
だって、だってだよ、わかるよね? わかるだろ? 栞と俺ができちゃったら、いわゆる一線越えちゃったら、言うよね? 栞は言うよね、間違いなく言いふらすよね? なんなら校内放送で宣言するよね? 俺は多分1週間不思議な舞を躍りながら登校すると見ている。
そして、最大の問題、栞は隠し事をしない、聞かれたら答える、なんでも答える。学校で絶対にどうしたのって聞かれる。いや、聞くだろ不思議な舞を踊って登校していたら。
そうしたら言うね、栞は絶対に言うね、俺と……って、それも詳しく言うね!嬉しそうに言うね!細かく細かく言うね!! 18禁じゃないと書けない事迄全部友達に説明するね!!! ベットで俺がどうしたか全部包み隠さずに…………
ああああああ、おわた~~~俺の、俺と栞の人生おわた~~
駄目だ駄目だ、破滅だ、破滅が待っている……破滅するのがわかっているのにそのボタンを押すか? お前は押すか? 俺には無理だ、絶対に無理だ。
そう、俺が栞に手を出すって事は核ミサイルのボタンを押すのに等しいって事だ。
世界が終わるんだ俺が栞に手を出したら、俺の俺達の世界が終わる。
世紀末が待っているんだ。俺はモヒカン刈りの雑魚にだって倒されるくらい弱いんだ、一子相伝の拳法も知らないんだ。
とにかく俺は誓う、いくら妹の事が好きでも、栞に恋をしたってわかっても、俺は妹には手を出しません、絶対に出しません!!
「ねえ……お兄ちゃん、まだ?」
「あ、ああ、今終わった」
「長かったね何をお願いしてたの?」
「え? いや、お願いというよりは誓いって感じかな?」
「ふーーん」
「し、栞は何をお願いしたんだ?」
「私? 私はね~~」
「お姉ちゃま、願い事を他の人に言うとその願いは叶わなくなるんだよ?」
「え! そうなの?」
「うん」
「じゃあ言わない絶対に言わない!」
「えーーー聞きたいな栞の願い事」
「言わない、私の夢だもん、絶対に叶えさせる私の夢」
「栞の夢……か、目標じゃなくて夢なんだ、なんでも出来るのに」
「うん……今の所は……夢…………」
栞はそう言うと俺の手を握る、強く強く手を握る。栞の夢……目標ではなく夢……つまりは叶わない、努力では手に入らない物……って事か。
「叶といいな、栞の夢」
「………………うん」
俺がそう言うと栞さらに強く手を握る、強く強く手を握ってくる。まるで俺にすがる様に、俺に叶えてくれと言うように……
「ねえねえ、わたあめ食べたい」
「あ、私も~~」
そう言って美月が屋台に走って行く、俺の手を離して栞も美月を追いかける……
俺の手に栞の温もりが感触が残っている。俺はその手を見つめて思った。
栞…………痛いよ……血が……口の火傷に続き、手に爪痕がくっきりと……そこから血が滲んでいた。
俺の正月は俺の1年は……怪我から始まった。
ああこれから始まる1年が……恐ろしい。
あ……そういえば……今、栞……隠し事、出来たなぁ………………
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