58-5 生徒会活動再び


「はあ、はあ、はあ」

 美智瑠の息が荒くなっている……いや、まあ仕方ないか……それにしてもすげえ姉貴……


「あ、裕君、そこの引き出しに薬箱があるのね、その奥に『あれ』入ってるから、いざとなったら使ってね」

 行ったと思ったらまたキッチンの扉を開け顔だけ出して美智瑠の姉貴がそう言った……


「あれ?」

 あれってなんだ? 薬箱? 何かは知らないけど、まあとりあえず覚えておこう。


「ば、ばかああああああ、早くいけえええええ!」


「ハイハイ、じゃあ本当、ごゆっくり~~ね~~」

 再度シュタッと手を上げて出ていく……俺と美智瑠は暫く黙って扉を見ていた。

 

 …………まあ、さすがに3回は無いか……



「あうううう、また熱出てきそう………」

 美智瑠は頭を押さえつつ、わざとらしくフラフラとふらつく演技をした。


「あ、そういえば大丈夫なのか?」


「あ、うん、大丈夫、朝は本当熱っぽかったんだ、ただ風邪じゃなくて…………」


「風邪じゃなくて?」


「い、言わせんな!!」


「言わせるって……ああ生理か」


「ば、ばかああああああ!」

 顔を真っ赤にして俺を睨み付ける。ロシアの血を引く美智瑠は白い肌の為に真っ赤になりやすい。真っ赤に照れた美智瑠は本当に可愛くてついつい虐めたくなっちゃうんだよな。


「あ、ごめん……」

 しかしこういうのは駄目だ。美智瑠は女の子だし、それに完全にセクハラだ。


 栞は結構あっけらかんとしてるからあまり気にしてなかったけど、そうだよな、こういうのは普通言っちゃ駄目な事だった……

 

「いや、良いんだ……まあとにかく来てくれてありがとう……」

 気を取り直しお礼を言う美智瑠、まだほんのり赤い顔で照れながら笑うその姿に俺は本当に天使か妖精かと思わされる。


「ああ……、うん、でも良かったよ」


「良かった? 僕にその……が来ててか!!」


「ち、違う、その話題から離れてくれ……その栞に色々言われて落ち込んでるかと思ってさ」


「ああ、それか……勿論落ち込んでるぞ、今も絶賛自己嫌悪中だ!」


「そんな自信満々に落ち込んでるって言われても」


「図星だったからな、言い返せなかったよ、流石だと思ったよ、流石……裕の妹だって……」


「俺の妹ってのは関係無いと思うんだけど?」


「そんな事ないぞ、君は相変わらず自分を蔑むな……栞君は君を見て育ったんだろ、真っ直ぐな君を見て……裕っていう真っ直ぐな人間を見てああいう人になったんだろ?」


「そんな事は……」


「そうなんだよ、僕は君と初めて会った時にそう感じたんだ! 真っ直ぐに僕を見てくれた君のようになりたいと、それがこのざまだよ、栞君に痛い所を突かれたって思ったよ」


「美智瑠……」


「悔しいな、僕ももっと……君と一緒にいられたら、もっと君を見ていられたら、こんな人間にならなかったんだろうって」


「そんな事ないよ、美智瑠は素直で良い子だよ」


「ううん、僕は僕の事しか考えてなかった……見た目を気にされる事が一番嫌いな僕が……皆からの見た目を気にしていたんだ。副会長になって生徒会に入って、僕は偉くなったと思っていたんだ……回りの人間を下に見ていたんだ。回りからの目を……見た目を気にしていたんだ。最低だよ……本当に僕は最低な人間だよ」


 目の前で美智瑠は目に涙を浮かべ俺を見つめた、その目から悔しい悔しいって叫ぶ声が聞こえて来るようだった。



「美智瑠」


「ふえ!?」


 俺は美智瑠の頭を胸の所で抱き、そして優しく美智瑠に言った。


「大丈夫、最低なんて事はない、美智瑠は皆の為に何かしたかった、そうだろ?」


「う、うん、でも」


「良いんだよそれで、偽善だってなんだって人の為に何かする、したいって思う事は良い事なんだ。一番駄目なのはそう言って言い訳をして何もしない奴等だよ」


「……」


「美智瑠は頑張り屋だからな、何でも一生懸命やろうってなるのを栞は止めたかったんだよ、突っ走るなって、周りをよく見ろって……そう言いたかったんだと思うよ」


「……」


「今回は、新しいメンバーとこれから1年頑張ろう、一致団結をしよう、した方が良いんじゃないか? って思って言ったんだと思うよ。まずは足元を固めようってさ、会長は色々あってまだ皆を信用しきってないからな、まずはそこからってさ」



「ふ……ふ、ふぐう」


「美智瑠?」


「ふぐう、ふ、ふわあ、ああ、うわああああああああああああああああああああん」


「おい、美智瑠?!」


「うわああああああああああああああああああああん」

 美智瑠は号泣し始める、俺にもたれかかり俺に抱き着き号泣する。


 俺は美智瑠の頭をそっと撫でた、そして泣き止むまでなで続けた。


 銀色の髪は物凄く綺麗で美しく、撫でる程に光輝くその髪を……俺はずっとずっと撫で続けていたいと思った。








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