54-4 兄妹と姉妹

「そんな事が……」


「うん、ごめん……皆も……」

 翌日、本日の活動を止めて生徒会室に集まって貰い俺は皆に昨日の事の顛末を話した。


「えっと……、ちょっとよく分からないんだけど、何で嘘がバレたんだ?」


「あ、いや、まあ……栞の勘……かな?」

 言えるか、そんな理由……本当に美智瑠に殴られる……


「ふーーん」

 なんか腑に落ちない顔で美智瑠が見ているが、俺は愛想笑いでごまかした。



「でぇこれからぁどうするのぉ?」


「3年の票は今の所期待出来ない、今日は澪は休んでいるらしい、まだ頬の腫れがちょっと残ってるからって、さっき雫が帰りがけに言ってくれた」


「そうなんだぁ、雫ちゃんはぁ?」


「とりあえず今日は澪の側に居るって」


「ふーーん、随分仲がいい姉妹ね」


「ああ、まあ……」


 俺は皆に雫と澪の関係は言わなかった、いや言えなかった、ここに居るメンバーは俺と栞が付き合ってるという事を知ってる……あれ? 知ってるっけ?



「美月ちゃんはぁなんてぇ?」


「澪の出方と栞次第だって、どう動くか分からない以上、今はやれる事をやるしかないって、あと週末こっちに来るらしい」


「へえ美月ちゃん来るんだ」


「ああ、美月ファンクラブの票を取り込む為に仕方なく……くっそう……ロリコンどもめ」

 俺の可愛い可愛い美月に……くそロリコンどもめ!


「美月ちゃんかわゆす、かわゆす」


「セシリーその待ち受け後で削除な」


「しょ、しょんな~~~~~」


 その時ピロンと皆の携帯が同時に鳴った。


「ん? 同時に?」

 俺の携帯も同時に鳴ったので、何事かと見ると……


「栞から……メール?」


 妹が俺にメールなんて……何かあったのかと、俺は慌てて本文開いた。


「な、ななななな!!」

 妹からのメールにはこんな事が書かれていた。



『この度生徒会長に立候補をしました、皆の為に頑張ります。

 そして生徒会長になった暁には、私から皆に重大発表があります!! 祝福してくれると嬉しいな、では投票宜しくお願いします』



「重大発表? 祝福?」


「くっ……し、栞……」

 まさか、本当に俺との関係を、俺への思いを全校生徒に言う気か! 生徒会長になって本気でこの部屋にダブルベッドを入れる気か!


でも例えば仮に今そんな事を言ったらどんな処分が来るか、退学迄ある。

しかし生徒会長になれば対抗出来ると踏んで……だから会長に立候補したのか?

妹ならそこまで考えて行動しそうな……いや、俺の事になるとあの妹はポンコツになるから全く考えてない可能性の方が……


「栞ちゃん遂に動き出したのね」

 遂に来たかと会長が複雑な顔をする。


「え? 栞ちゃんてぇ、このままぁ何もぉしないとぉ思ってたぁ」

 ああ俺も、もしかしたらって……なんだかんだ言っても俺の味方だと……俺はほんの少しだけショックだった、でも本気の妹に勝たないと会長も納得しないだろうし……



「これでほとんどの1年女子の票……全体の約7割は栞ちゃんに……2年でも女子の半数以上は……」


「つまり3年の票の7割以上取らない勝てないって事だな……」

 3年の女子ほぼ全員の票を取らないと勝てない……なんてこった。


「やっぱり栞君に勝つなんて……」

「栞様に楯突くのは……天につば吐く行為デース」

 今日は何故か良く喋るなセシリー……


「澪さんはぁどうなのぉ? 栞ちゃんにぃ叩かれてぇ怒ってるんでしょぉ?」


「ああ、そうなんだけど、会長にもかなり、わだかまりがあるみたいで」


「私が謝ればなんとかなるかな?」


「それは……止めた方がいいと思う……」

 逆にプライドを傷つけ兼ねない……


「そ、そうね……そうかもね……」


 でもこれで、ほぼ切望的な状況になった、3年票が仮に半数でも勝てない……そもそも栞の友達は3年にも居る、澪の協力が無ければ半数も入らない……



「…………」

 俺達は妹の力に対して全く無力だと言う事を痛感する……メールだけでこれ程絶望的な状態になるとは……やっぱり無謀だったのか。


 全員がその絶望的な状況に押し黙る……誰も口を開けない……


 どのくらいの時間が過ぎたか、そろそろ完全下校時間、もう吹奏楽部の音も聞こえなくなった……シーンと静まり返る校舎、そろそろ俺達も下校しなければならない。

 

 俺が皆に声を掛けようとしたその時、生徒会室の外から何やら揉めている様な声が聞こえる。


 そしてその音がどんどん大きくなり遂に扉の前で聞こえ、そして!


「バン!!」


 大きな音を立てて生徒会室の扉が開いた。


「あら、雁首揃えてまだ居たのね」


「お、お姉ちゃん!」

 

 扉が開くとそこにはゼエゼエと息を切らしながら腰に手を回し必死に止めようとしている雫連れて、頬にガーゼを当てた澪が仁王立ちで立っていた。

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