44-5 壊れたオモチャ
「長いな……」
注文したピザは先程届いた、しかしまだ会長と先生は風呂から上がってこない……
妹は持ってきた服を出して交代でお風呂に入る準備をしている。
「ピザ冷めちゃうから俺達は後だな~」
「一緒に入ればいいんだよお兄ちゃん!!」
「先生の家で入れる分けないだろ」
「家だって入ってくれない癖に……」
口を尖らせふて腐れて言う妹……いやいや無理だから……
そうこうしていたら、ようやく廊下から足音が、でもなんか騒がしい……まさか……
「にいに~~~~~」
「ぶ!!」
会長が扉を開ける…………全裸で……………ってお約束かよ!!……
「駄目~~~~~」
「ぐはあ!!」
続いて先生がバスタオル一枚で会長を捕まえに!!!、そっちもか……
「にいに~~~~」
俺は慌てて顔を背け栞を見る。
「し、栞!!」
「うん!、はい葵ちゃんお着替えしようね~~」
「にいに、にいに」
妹に押さえられるも手をバタバタさせてもがいて……いる音がする……見てないぞ!、窓ガラスに映ってもいないぞ!!……
「着替えたらね~~先生!!」
「はい、バスタオル」
妹は先生からバスタオルを受けとると、会長に素早く巻く
「はい、巻いたよ~、先生、会長さんの着替えは?」
「洗濯機の上にあるわ」
俺はほっとして振り返る、妹に押さえられもがく会長を見て、会長の裸体が頭を過ぎる、頭脳は子供、身体は大人……どこぞの探偵の真逆、男女も真逆………真逆だとこんな危険な存在に……
しかし……会長、もの凄く綺麗な身体だった……金色の髪、整った体型……本当に外国の有名な着せ替え人形かと思わせる容姿……副会長が人形と言っていた意味が少しわかった気がした……
「はい、行こうね~~」
妹が会長を押さえながら部屋から出ようとした瞬間……
「にいに、にいに~」
そう言って会長が手を伸ばし掴んだ…………先生のバスタオルを……
「ひゃう!!」
「ぐっは!!」
会長が先生のバスタオルを剥ぎ取る、ナイスあ、違う……
4人が一瞬静まり返る……そして
「い、い、嫌あああああああああああああ」
妹と会長を押し退け、全裸の先生が叫びながら部屋を飛び出して行った…………
「先生……そんな所までロリなのか……」
「お兄ちゃん!」
「え? いや……見てない見てない、ほら早く会長を」
「もう~~~~お兄ちゃんのエッチ、裸を見たいなら私のを見ればいいじゃない!」
「いいから、早く着替えさせて来てくれ」
「は~~い、ほら葵ちゃん行くよ~」
「にいに、にいに~~」
「ハイハイ、あ~~と~~で~~ね~~」
そう言って3人は出ていった……つ、疲れる……
####
「おいひいね、にいに~~」
「ほら、ほっぺにチーズがついてる」
「とってえ~~」
「ハイハイ」
少し冷めたピザを4人で食べる、先生は向かいで真っ赤な顔でうつむいて、モソモソ食べている……見たとも見てないとも言えないのでさっきの事はとりあえず無かった事にして4人でピザを頬張る。
「栞は何をしている……」
「え……何が?」
「いや……顔にサラミが……」
「え? とってえ~~」
「イチイチ対抗するなよ…………」
先生は火照った身体を冷ますかのように窓を開けていた、秋も近く夜になると涼しい風が入る。
そして……その風に運ばれるかのように、クルマのクラクションの音が……
駅からは近いが大通りには面していない……しかし何度か音が……そして
「お兄ちゃま~~」
「!!!!」
外から聞き覚えのある声が聞こえた!!
俺は慌てて駆け寄り窓から外を見る……
「あ! そこだ! お兄ちゃま~~~!」
マンションの通りから銀色のオープンカーに乗った美月と婆ちゃんがこっちに向かって手を振っていた。
「うわーースーパーセブンだ、凄い」
俺の隣から先生が覗き見て二人の乗っているクルマの名前を言い当てる。
「先生知ってるの?」
「うん、小説でよく出てくるスポーツカーだよね?」
ケーターハムスーパーセブン、婆ちゃんの愛車だ、酒好きなので日頃あまり乗らないんだけど、前に一度だけ乗せて貰った事がある……ある……が! 怖かった……もう二度と乗りたくない……
クルマの車高が低くなんとドアも付いてない……、身体はむき出し……そして加速が半端じゃない……しかも婆ちゃんの運転も半端じゃない……上手いんだけど……そのスポーツカーの性能をフルに使えるので逆にめちゃくちゃ怖いという……
「お兄ちゃま~~」
「美月~~今行く~~」
「は~~~い」
美月が俺に手を振りながら返事をする。
「先生ちょっと行ってくる」
「うん、こっちからなら鍵いらないから」
「会長は……」
会長を見るとピザに夢中になっていた、これなら少し位離れても平気かなと、そっと部屋を出て玄関に向かう。
マンション入り口で美月が待っていた、俺は自動ドアの前に立ち、扉を開けると美月が飛び付いてくる。
「お兄ちゃま~~~~」
美月を抱き抱える、久しぶりと感じるけど、まだ1週間位しか経っていない
「美月来たのか? 何で?」
「お兄ちゃま、大丈夫だよって大丈夫な時には、あまり使わない言葉なんだよ」
「あ」
「美月には、なんかあった、大丈夫じゃないって聞こえたの!」
そうだった、この小学生は1で10を知る……美月に隠し事は出来ない……
「そうか……」
「それに美月に遠慮して言ってた! 美月少し怒ってるんだからね!」
「え?」
「美月とお兄ちゃまは家族なんでしょ! 家族なのに遠慮するってなに?!」
「あ、えっと……」
「家族に遠慮なんて……そんな寂しい事……しないで!……」
美月が俺の首に抱きついている力を強める、少し震えていた……
「ごめん……ごめんな……美月」
「嫌! 罰として美月と今日一緒に寝る事!」
「ああ、わかったよ」
「あと、今お兄ちゃまが困っている事に協力させて!!」
「え? ああ、うん……そうだな……俺からも頼む、美月の協力が必要だよ!!」
「えへへへ、……もう、お兄ちゃま……、最初からそう言ってくれればよかったのに~~」
「ごめん……ごめんな美月」
そう言って美月を強く抱き締めた。
これで俺は最高の頭脳を手に入れた、美月と栞がいれば会長の事、何とかなる気がしてきた……
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