衝撃の新学期

44-1 壊れたオモチャ


 長かった休みが終わり遂に新学期が始まる……

 いや本当に長かった……色々ありすぎた、そして何一つ解決していない……

 

 妹の事も、美月の事も、麻紗美も美智瑠も……

 俺は制服に着替えながら夏休みにあった事を考えていた……


「でも、まあ……学校が始まれば少しは……」


「お兄ちゃ~~~~ん、さあ行こう~~~」


「きゃああああああああああ」

 ノックしてええええええ、朝から妹が部屋に乱入してくる……本当少しは平常運転になってくれよ、気が休まらない……


「えへへへへへへへへ」

 着替え覗いてヨダレを垂らすな……相変わらずポンコツなうちの妹……いいから出てってくれええ……



 何とか追い出し、着替えた後に久しぶりに栞と登校する。

 通学路では、いつも通り挨拶三昧、久しぶりに会う友達は、凄く嬉しそうに栞と話す、さすがに今日は素通りはあまりしない、やはりみんな栞と話したくてしょがなかったらしい……俺と話したくてしょうがないやつは…………はいはい、いない、いない……


 教室に入るとさらに皆が栞に話しかける、俺はそそくさと席に着く……

「まあ、さすがに今日はね」


「おはよう~~裕ぅ~~」


「おう、麻紗美、おはよう」


「新学期だねえぇ、またよろしくねぇ~~」


 そう言って隣の席に着く、ああ癒しだな~~

 麻紗美の声に癒されているうちに始業のチャイムが、本日はホームルームだけ……

 進学校だとガッツリ授業だろうけど……さすがうちの高校だな……


 しかし……待てど暮らせど、先生が来ない……

 皆が少しざわざわし始めた頃にようやく現れる、なんだよテレポートしてこいよ、そのツインテールは伊達か?


 なんて思ってたら、少し先生の様子がおかしい


「みんなごめんね……遅れちゃった、じゃあ日直挨拶を……」

 いつも明るく冗談から入る先生が今日は普通だった……なんだ、この違和感……


 とりあえず連絡事項等通常のホームルームをこなし、このあと学年単位で講堂に集まって、まあ校長やらの話しを聞くとの事……めんどいな……


 皆がガタガタと椅子をならし、だらだらと講堂に移動し始めると、先生が俺の方に歩いてくる……なんだ?


「裕君、ちょっと生徒会室に来てくれる、あ! 栞さん、ちょっといい」

 先生が俺に近付くのに気が付き、俺の方を向いていた栞にも声をかける


 女子の皆は栞と一緒に行くつもりだったので立ち止まると


「ごめんね~~皆先に行っててえ~~」

 先生が笑顔で皆講堂に行くように促す


「えーー、栞~~じゃあ早く来てねえ~~」


 そう言いながら皆がぞろぞろと出ていくのを見計らい、先生が教室に残った俺と栞に言う


「ごめんね、ちょっと二人に来て欲しいの、お願い!」

 真剣な顔の先生を見て、俺と栞は何事かあったと推測する。


「わかりました」


 そう言って3人で生徒会室に向かう……


 歩きながら先生を見るも、こちらを見ずに早足で少し前を歩く……

 俺と妹はただならぬ雰囲気に顔を見合せアイコンタクトで会話をした。


『なんだかわかる?』

『全然?』

 多分そういう顔つき、お互い検討もつかない……


 生徒会室の前に着くと、先生が一旦立ち止まり、俺たちを見る。


「とりあえず、二人に見て欲しいの、出きれば内緒で……」


「何を?」


「見てもらえばわかるわ……」

 そう言って扉開けると………………げ!



 部屋の正面には金髪の生徒会長が座っていた……金髪!!?


「とりあえず入って」


 俺達を部屋にいれるとすぐに扉を閉める先生……なに? なにがあった?


 再び生徒会長を見る、何か様子が変だ……いつも高慢な態度の生徒会長がボーーっとしている……というか……反応がない


「先生……これは?」


「早朝フラフラと学校内を歩いてたの、私今日は色々準備があって朝早く登校したら見つけて……それでとりあえずここに……」


「他には見られてないって事?」


「今の所は……ただ……」


「ただ?」


「とりあえず副会長に電話はしてみたの、そうしたら……」

 そう言うと、なんとも言えない顔になる先生……


「?」


「私と夏海は夏休みを以て副会長と書記を辞任いたしました、会長には承認を受けておりますって……」


「ええええええええ!!」

 

「私は聞いてないって言ったら、生徒会規約に顧問の承認の必要は記載されておりませんって……」


「そんな……」


「でもそれだけでこんな状態に?、かつらまで被って」


「かつら? それ地毛よ?」


「ええええええええええ」


「染めたのか……、何で?」


「さあ?、うちの学校頭髪はあまりうるさくないけど、さすがにここまで……、しかも現生徒会長がこの髪はまずいわね、まあそんな事よりも、この状態を何とかしないと」


 目は開いているが、完全にどこか別に世界にいる、よく妹が妄想の世界に行っている時の目だった。


 俺は会長に近付き、目の前に立ち顔を覗き込む……


「おーーーい、会長~~~」


 反応がない、まるで屍のようだ……


「うーーーーん」


「全然反応しないのよ、よくこれで学校までこれたわね」


「家族には?」


「えっと、生徒のプライベートをあまり言いたくないんだけど、緊急事態だし……会長は、親御さんが亡くなられていて、独り暮らしなの、一応保護者はいるんだけど……色々あってね」


「…………なるほど……」

 

 ……あの強気な会長の裏にそんな過去が……


「おーーい、おーーーーーい、かいちょ~~~」

 全く反応しない……えっと会長の名前って……確か……あ!青井さんと結婚して青井あおいになっち前の葵だ


「おーーーい葵~~~」


 俺がそう呼ぶと、会長の身体がビクッと動く


「あ……、動いた、おーーーい葵~~~」


 再び名前を呼ぶと、会長が俺をゆっくりと見る……そして


「に」


「に?」

 遂に声まで出したが……次の一声でとんでもない事を言った……






「にいに……、にいに……帰って来てくれたの、にいに~~~~」


 会長が俺に抱きつく、涙を流してって……ええええええええええええええ



「会いたかったよおお、にいに~~~~ずっと会いたかったよおおおお、大好きだよおお、にいに~~~~~~」




 栞、黒髪美少女の実の妹、美月小4ロリ美少女のいとこに続き、3人目の妹?、金髪美女に告白された…………マジか……会長年上だぞ…………





  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る