40-2 美智瑠との初デート


 「わーーー、わーーーー」

 美智瑠が上を見上げて興奮ぎみに声をあげる。


 JRと地下鉄を乗り継ぎ赤羽橋駅へ、改札を抜け地上に出ると直ぐに東京タワーが見える……なるほど……「格好いいな」


 スカイツリーと違い鉄骨の組み合わせ感が凄い、手作り感満載だけどなんか格好いい……確かに高さも洗練さも未来感も全部負けてるけど……フォルムが凄く格好いい気がする……


「でしょ? 格好いいし綺麗だ」


「ああ、そうだな」

 俺と美智瑠は東京タワーを見上げる……


「じゃあそろそろ展望台に行くか?」

 しばらく見ていたが、いつまでも見ているわけにはいかないのでそろそろと思い美智瑠を東京タワーに行くように促してみると……


「え? 行かないぞ」


「は?」


 「展望台からじゃ東京タワーは見えないだろ?」


「は?……いやまあそうだけど、普通は上からの景色を見るもんじゃないのか?」


「それだったらスカイツリーや都庁の方が良いだろ? 僕は東京タワーを見に来たんだ」


「え~~~~本気で?」


「本気も本気、本気と書いてマジと読むぞ!」


「いやそんな使い古されたギャグとかじゃなくて……本当に?」


「本当だ!、その代わり写真を撮ってくれ」


「写真?」

 ああ、インスタとかで流行ってるしな、着物写真とか撮るの……


「美智瑠インスタとかやってるのか?」


「やってないぞ、君に撮って貰いたいだけだ」


「ふーーん、まあいいぞ、ほら」

 俺はカメラ渡せと手を出す。


「ん? ゆうはスマホを忘れたのか?」


「は?、いや持ってるけど」

 なんだ?今日は美智瑠と全然噛み合わないぞ?、まあいつもそんなに噛み合ってないけど……


「じゃあ撮れるじゃないか、ほら」


 美智瑠はポーズを取る……傘を持ちすました顔で俺を見る。


「えーー、なんで俺が……」

 自分のスマホで撮る意味がわからないが、とりあえず言われた通り写真を撮る……うーーん東京タワー入らねえ……


「美智瑠もうちょっと離れて……そうその辺」

 俺は寝転がるように低く構えて写真を撮るよしよし……ん?


「撮れたか? よし!次に行くぞ」


「ん? 次?」


 美智瑠が俺の腕を取り歩く……


「どこへ行くんだ?」


「えっとな、こっちだ」


 そう言ってスマホを取り、地図を起動し二人で歩く……



 なんだ? このデート……デートか?



 そのまま歩き芝公園に入る、9月迄あと僅か、夏の日差しも弱くなりつつあるが、今日も暑い、日傘を差しているとは言っても浴衣ではなく着物、美智瑠の首筋にも汗が滴る。


「暑くないのか?」


「暑いのは好きなんだ」


「そうか、俺はちょっと苦手かな?」


「大丈夫か? 休む?」


「いや、大丈夫、でどうするんだ?」

 芝公園内を散歩する、外国人観光客がチラチラこちらを見ている、て言うか……みんな見ている……そりゃ目立つよ超美少女が着物姿で練り歩いているんだから……


「そうだな、おお、この辺でまた撮ってくれ」

 美智瑠はそう言うとポーズを取る、今度は後ろ姿で首だけ振り返える……見返り美人……

 また東京タワーをバックに入れて写真を撮る、何ポーズか撮ると


「よし! 次に行こう」

 そう言うとまた俺の腕を取り歩く……


「なあ美智瑠……一体何なんだ?」


「ん? ただのデートだぞ」


「ただのデートではないと思うんだが、何考えてるんだ?」

 何かを企んでいるとしか思えないんだが……


「ん? 別に、ただ僕の写真を撮って貰いたいだけだぞ」

 いや……でも……


 そう言いつつも、美智瑠とまた歩く、芝公園を抜けると大きな寺が見えてくる、芝の増上寺に着く、ここでも観光客がこちらに注目する。


「よし、じゃあここで」

 そう言うと美智瑠は再びポーズを取る。


 周りの視線が痛い、そして声が聞こえる……


「え、何かの撮影?、凄い可愛いい誰? タレント? アイドル?、でも髪が銀色、コスプレ?、撮影にしてはスマホって? 男の子は普通、なんか暗そう……」


 ……ほっとけや……


 またも増上寺と東京タワーをバックに何枚か写真を撮る……

 美智瑠は澄ました表情で、色々なポーズを取る……


 そのスマホの画面を見ると、何か浮世離れした美智瑠がそこにいた……

 美智瑠って……物凄く綺麗だよな……


 写真では、喋らない、性格も分からない、そのままの美智瑠がそこにいる。

 普段と違い、客観的な視線で美智瑠を見ると、改めて思った、美智瑠って……




 美智瑠って…………ここまで綺麗で美しかったんだ……



 再び美智瑠は俺の腕に捕まる。


「よし、次だ!」


「まだ行くのかよ?」


「何を言っている、まだまだ始まったばかりだぞ! 元はと言えば君が予定をたてなかったからだろ」


「わかったよ、で、次はどこだ」


「あっちかな?」


 そう言って増上寺を後にする。

 浜松町方面に歩くと大きな門が見えてくる、芝大門、増上寺の大門がある。


「よし! ここで撮るぞ」


「マジか……」


 この辺りは観光客ではなく駅前通りで結構人がいる、そしてそろそろお昼、サラリーマンが昼食にぞろぞろオフィスから出て来はじめていた。


 そんな中で銀髪美少女が着物で門と東京タワーをバックにポーズを取る……


 周りに少し人が集まる、人だかり迄はいかないが、立ち止まり俺達に注目し始める……おいおいおいおい


 周りを気にすることなく澄まし顔でポーズを取る美智瑠……


 俺が撮っていると周りから写メを撮ろうとする奴が何人か出てくる、そいつらに、視線で威嚇しつつ美智瑠の前に立ちふさがり、撮影を邪魔する。


 そしてその一瞬の隙を尽き、美智瑠の手を掴み小走りで人混みを駆け抜ける。




「何かんがえてるんだよ~~」



「あははははは、やっぱり目立つな~~~~」



 俺は美智瑠と手を繋ぎ、芝大門から浜松町方面に、小走りで駆けていく




 でも…………なんか……面白くなってきた。



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