26-1 最強の敵参戦!!


                 既読 へい


 かいちょ あんた未読スルーとかいい度胸ね


                 既読 いや、ちょっと石垣島まで旅行に


 かいちょ へー、いいご身分だ事


                 既読 お陰さまで……


 かいちょ ちょっと顔貸しなさい


                 既読 あ、すいません、無理


 かいちょ 良いから来なさい


                 既読 いや、本当に無理


 かいちょ じゃあ、あたしが行くわ、何処?


                 既読 えっと新幹線……


 かいちょ は?


                 既読 長野に向かってますので、無理


 かいちょ ……あんた本当にいつかやるから……



 生徒会長からの最後のメッセージを未読のままそっとスマホの電源をオフに……

 どうせオフにしても困らねえよなって言いたいんだろ……実際困らない……ううう。


「お兄ちゃん、誰とライン?」


「あー、なんか生徒会長が話しがあるって」


「へーーーいつの間にライン繋げたの?お兄ちゃん」


「いや、まあ無理やりって言うかなんと言うか……」


 俺と妹は現在長野駅に向かって新幹線に乗っている。


 石垣島から帰って1週間も経っていない。


 ちなみに会長のラインは石垣島にいたときに来たが、めんどくさいんで未読スルーしてそのままさっきまで忘れてた……


「それより母さんは?」

 母親の実家に行くのに母がいないってなんだよ


「朝ね、お兄ちゃんが起きる前に病院に行っちゃった、なんかお母さんの休みで代わりに入ってた人が、逃げちゃったんだって、だから代わってくれる人が見つかったら行くって」


「マジか、どんだけ忙しいんだ母さんの仕事……、え?、でもじゃあ最悪来ないって事?」


「うーーんわかんない、でもお母さんには悪いけど、私は超ラッキー、お兄ちゃんと二人旅~~」

 妹は俺の腕にしがみつき、そして俺を見上げそっと目を閉じる………………いや、しませんから


「あ、すいませーん、コーヒー2つください」

 丁度俺の横に車内販売が来たので、コーヒーを頼む、駅弁食べたかったけど、今峠の釜飯販売してないらしい……、まあ新幹線だと駅弁ってなんとなく情緒がないから良いけど少し残念。


「もうお兄ちゃん!!」

 目を見開き、怒りを顕にする、石垣島での一件から隙あらばキスを迫ってくる妹、いや、しないから、あれは危なかった、本当に南国マジックだよ。


「え?栞も飲むだろ?」

 とぼけた振りをして、妹にコーヒーを渡す。


「飲むけど、もう!」


 あーーコーヒー旨い……


 軽井沢を抜け一路長野に向かう新幹線、妹は俺が手を握ったら機嫌が良くなったのか?、鼻歌まじりで車窓に映る山の景色、その先の田園風景を堪能していた。


 長野駅で乗り換えて、信越本線から篠ノ井線で約1時間程、長野県安曇野市に到着


 駅から川を挟んで反対側に母の実家がある。

 頼めば迎えに来てもらえるだろうけど、天気も良く、河原の涼しい風と景色を堪能したかったので、キャリーバックを引き妹と並んで田舎道をのんびり歩く。


 安曇野の綺麗な空気を吸いつつ、ゆっくり歩くと、大きな日本建築の家に到着。

 そこは母の実家で現在叔父と叔母夫婦とその娘、そして祖母が暮らしている。


 結構立派な門まである、その家の、ちょっと似合わないインターホンを鳴らすが返事がない……


 今日到着する事は言ってあるので、留守って事はないだろうともう一度鳴らそうとすると、門の扉の向こうでなにやら音がする。


 鍵を開けた音と共に、扉が開くと、中から小さい物体が俺に向かって突撃してきた。




「ゆうにいちゃまあああああああああああああ!!!」


 そう叫びながら凄い瞬発力を活かして、俺の首筋に掴みかかる。


 俺はそれを優しく抱き止め、そして言った。


「美月ーーー元気だったかーー、2年ぶりだなー、可愛くなったなーー」


「えーーー、前から可愛いでしょーーー!!」


「そうだな、可愛い可愛い」


 昔から、子犬の様に俺になついてくれている、俺のいとこ、山野井 美月やまのい みつきと2年ぶりに再会する。


「み、みつきちゃん、久しぶり……だね」

 俺の後ろにいた妹が、わたしも居るんですけどと、アピールするように美月に挨拶する。


「あ、栞ねえちゃま、いたの?」


「み、みつきちゃん、ひどい……」


「うそうそ、栞ねえちゃまも元気そうで、また綺麗になったねー」

 そう言いながらも、俺の首に抱きついたまま離れない……


「美月は今何年生だっけ?」


「えーー忘れたの、前に来たときは2年生だったでしょ、いま4年生だよーー」

 小4にしては、大きいのかな?、まあ女の子って成長早いし、そしてこの子は特に昔から祖母の影響なのか大人っぽく、幼稚園の頃から俺に付き合え、結婚しろと言っていた、まあ小4になったんだから、さすがにそんな事は言わないとは思うが、妹の例もあるし、ちょっと怖い……


「ゆう兄ちゃま、何して遊ぶ!!」


「その前に叔父さんと叔母さんと、お祖母ちゃんに挨拶しないとな、ちょっと離してくれる」


「えーーーやだああ」


「頼むよ」


「じゃあ、今晩美月と一緒に寝てくれる?」


「ハイハイ」

 俺が美月の頭を撫でながら了承する。


「え!!!」

 突然妹がびっくりしたような表情で大きな声を出す。


「ん?」


「お、お兄ちゃん、みつきちゃんと一緒に寝るの……」

 え? 駄目なの? 小4だとアウト? え、いとこでも? どうなの?


「えーーっと、そうだよな、もう大きくなったからな美月」


「えーー、前は一緒に寝てたでしょーーー、いいもん、じゃあ、寝るまでこのまま離さないもーーん!」


「わかった、わかったから、苦しい……、じゃあ叔母さんに聞いてからな、とりあえずお祖母ちゃんに挨拶しないと」


「はーーい、お母さまなら全然大丈夫だよーやった、寝るまでお話ししようねーー」


 とりあえず、離れてくれたので、美月の勢いで倒してしまった荷物を起こそうとしながら何気なく妹を見ると、なんか小さな声でぶつぶつ言っている。


「…………お兄ちゃん……、やっぱり…………あの雑誌にも…………白井先生…………ロリ…………だから私…………キスも…………」


 妹がヤンデレ通り越して……また病んでる……





     

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る