23-8 天国に一番近い海


 「ぐうえっ!!」


 蛙が潰された様な鳴き声と共に目が覚める……


 どうやら美智瑠が俺にしがみついていたらしいが、それを見た妹が美智瑠にエルボーを噛ましたようだった。


 美智瑠と妹の女子プロレス騒ぎで麻紗美も起床、二人をなだめ帰る準備をして食堂に向かう。


 朝食を頂き、朝の船で戻ろうかと思ったが、旅館の女将が港に問い合わせたそうで、今日は波が穏やかなので多分大丈夫だから自転車で、島一回りしてきたらと言われ、せっかくなので、レンタサイクルでみんなで出かける事にした。


 荷物を預け、とりあえず、この島一番の見所、最南端に向かう。


 家の石垣壁の間をいくつか抜けると、急に畑や野原の田舎道になる、ただ意外に舗装されており、自転車で普通に走れる。

 結構道は狭いが、何せ車がほとんど走っていないので、何も問題ない。


「え、この石が積んであるの何?」

 美智瑠が、目の前に見えた大きな石いくつも積み重なって円筒状になっている巨大なオブジェのような物を指差した。


「それはねぇ、コート盛りだってぇ」

 麻紗美が持ってきたガイドブックに書いてある文を読み出す。

「なんか海を監視したりぃ、ノロシをあげたりぃしたって書いてあるけどぉ、よくわからないねぇ」


 なんか説明がざっくりだな、後でwikiで見てみるか……


「海が見えるの?、登って見よう」

 ちゃんと登りやすいように階段になっており、石を積み上げて作っているだけなんだが、結構よく出来ている。


「あーーー、うん、まあ見えるね」

 遠くに綺麗な海が見えるけど、監視するには遠い気が……どんだけ目がいいんだ昔の人

 それほど高さはないけど、周りに建物はないので確かに遠くまで見える。

 と言っても遠くの海と畑しかないが……


 コート盛りを後にし、最南端に向かう


 ひたすら細い道を走るが、はっきり言って何も無い、おそらくサトウキビ畑ばっかり、おそらくというのは、成長していないとなんだかわからないのでおそらくと言っただけ、まあ紅いもとかも栽培しているらしいので、紅いもかも知れないが、パッと見わからん。


 そして、何故かきのうもいたヤギ、今日は至るところで見る、さすがに妹もヤギだーーって騒がない


「なんで繋がれているのと、繋がれていいないのが居るの?」

 騒がない代わりに、素朴な疑問、フラフラ歩いてる奴、畑の隅に繋がれている奴、日陰で寝てる奴、色々いる。


「さあ?」


「食べるぅらしいよぉ」


「えーーーーたべちゃうの」


「癖があるからぁ、私たちはぁ、あんまりおいしくないかもってぇ、島の人はぁ、お祝いごととかにぃ、食べるってぇ」


「へーー、ヤギ汁って聞いたことあるなー、ハイジも食ってたのかな?」


「あのお爺さんなら捌きそう……」


 そんなこんなで最南端到着


「おーー、僕らは今日本で一番南にいる4人なんだー、なんか凄いね」

 美智瑠が言って気がつく、沖ノ鳥島に調査とかで誰かいなければ、陸地だとこの4人が現在一番南にいる事になるな確かに


「よし、記念撮影しよう」

 若干興奮気味に、近くの石を三脚がわりにして、最南端の碑を前に4人で記念撮影

 3人が俺にしがみつく、凄い当たってる、当たってる、当たってる?


 撮影した後に妹が指を指す。

「ところで、これ何?」


 来るときに、最南端の碑より気になったのが石で出来た道の様な物


「えっとねぇ、全国の石を集めたぁ、蛇の道だってぇ」


「なんでそんなものがここに?」


「さあ?」

 うーん色々謎だ


「あれって何?」

 さらに妹が遠くを指差す


「あれはねぇ、星空観測所だってぇ」

 麻紗美がすっかりガイド役になっている


「望遠鏡がぁあるってぇ」


「へーー行く?」


「いや、昼に行っても意味無いだろう」


「写真とかぁ飾ってあるってぇ」



「うーーん、でも、そろそろ戻らないと、最終便になっちゃうから行こうか」

 1日3便、昨日の事を考えると、昼に出るのにしようと決めていた。


 帰りはぐるっと島内を一周している結構広い道路をまわって帰る。

 この小さい島にしては、広すぎる道路で、歩道まであったりする場所も……、交通量的に絶対にいらない気がするし、その歩道、さらに道の端まで雑草で覆われている箇所もある。


 まあ、色々大人の事情が垣間見えるのを無視して、旅館に戻った。


 途中綺麗な飛行場もあったが、それも大人の事情でほとんど使われていないらしい……


 近所の旅館の方に他のお客さんと一緒に港まで送ってもらえたので余裕で到着、旅館の方にお礼と別れを告げ、ターミナルの中に、無事チケットも買えて石垣島に向かう。



「ううううう、気持ちわるいいいいい」


「お兄ちゃん、帰りもジェットコースターみたいだねえ、楽しいねーー」


「………………」


 今日は穏やかって言っていたが、それでも、やはり波が結構ある。


 美智瑠の逆襲も心配なんだが、一番心配なのは麻紗美……


『私はねぇ、嫌な事があるとぉ、意識を無くせる特技があるのぉ、ただねぇこの特技、使いすぎるとぉ帰って来れなくなるって言うかぁ、本当に死にたくなっちゃうっていうかぁ』


 来た時のセリフを思い出す……


 頼むから無事に帰ってこいよ~麻紗美~~~!


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る