23-1 天国に一番近い海
幸か不幸か、思わぬことで落ち着いた三人は、脱衣場で着替えながら話していた。
「そ、そういえば、栞とゆうは同じ部屋で二人きりじゃないか!麻紗美君、二人の仲を疑っていて、どうして同じ部屋にしたんだ!」
付き合っていると聞いて、今夜もし二人がという心配が込み上げてきた美智瑠は、麻紗美に問いただす。
「えーー、美智瑠ちゃんー、それはぁ、今さらだよぉ、だってぇ二人はぁ、毎日同じ家にぃいるんだよぉ」
「そ、そうか、じゃあ、二人は、その、もう……」
そう言って栞の顔を赤い顔して見つめる。
「えーー、お兄ちゃんは、私に手なんか絶対に出さないよ、そもそも今は兄妹として付き合ってるって意味で、お兄ちゃんは私を元カノって言うし……、そんな簡単に手を出してくれたらあんな苦労しないよ」
「あんな、あんなってなんだ!!」
「それは~、色々だよ~」
「く、くそう、ズルい、よし!明日は僕の水着でゆうを悩殺してやる!!」
「あー、それなんだけどねぇ、私ねぇチョッとぉいい場所を見つけたんだぁ、ガイドブックにぃ書いてあったんだけどぉ、凄い綺麗な場所がぁあるんだぁ、そこでぇゆうに、私を見てもらいたいなぁ」
「え、それは何処だ!!」
「えっとねぇ、なんだっけ?、何とか島ってぇ書いてあったぁ」
「島?」
「うん、船でぇ行くんだぁ、明日そこでぇ皆でぇ泳ごうかなってぇ、どうかな?」
「いいよ!行こう!」
栞と美智瑠は声を揃えて言った。
こうして3人の裕をめぐる奇妙な戦い?が始まった。
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部屋のチャイムがなる、ようやく妹が帰ってきたか……
俺は扉を開けると同時に妹が俺に抱きついて来た!!
「ちょ、ちょっと、栞!」
妹は俺の胸に顔を埋めている。
「お兄ちゃん、ごめん、ちょっとだけ……」
そう言って、妹は俺の背中に回した腕に力を込める。
「いいけど、あの二人と何か合ったの」
「ううん、お兄ちゃんの悪口を三人で言ってただけ……」
「えーー、ひどいなーどんな悪口を言い合ったんだー?」
「お兄ちゃんは優しすぎるって……」
「……それって悪口なの?」
「うん……、私達にとっては悪口だね……」
そう言うと妹は顔を横に向け、耳を胸に当てる
「お兄ちゃんの心臓の音聞くと安心する、お兄ちゃんが生きてるって、私の近くにいるって感じる」
俺は妹の様子のおかしさに、何か言おうと思ったが、言葉が出なかった。
そのまましばらく妹の好きにさせていたが、部屋のチャイムの音で終わりを告げた。
「ご飯の時間だよー」
扉を開けると二人が部屋の外に来ていたので、そのままレストランに向かう。
沖縄料理が出る和食のレストランで4人席に着くと、次々に食事が運ばれて来る。
「これなーに、プチプチしてる」
妹が緑色の海藻の様な物を食べながら感想を述べる。
「それはー海ブドウだねぇ」
「じゃあ、このコリコリしてるのは?」
「それはー、ミミガーだってぇ」
麻紗美がメニューを見ながら答える
「ミミガーって?」
美智瑠も食べながら聞くと
「豚の耳だってぇ」
「えーーー僕耳食べてるの!」
そんな楽しく皆で食事をしている、さっきの妹の様子がおかしかったのは明らかなんだけど、3人に喧嘩をした様子はない。
あれは何だったんだろうなどと考えていると、麻紗美がガイドブックを出してみんなに見せる。
「えっとねぇーさっき言ってた島ってぇこれ」
「えーー嘘?すごい!」
「綺麗……」
麻紗美が見せてきたのはガイドブックの写真
その海の青さはこのホテルの前の海と比べ物にならない美しさだった。
「え?これ外国?」
俺はその海の写真を見たときに、一瞬本で見た天国に一番近い島と言われているニューカレドニアの海を思い浮かべた。
「ううん、日本だよぉーここからいけるのぉ」
「日本なんだ、天国に一番近い島のニューカレドニアかオーストラリアのグレートバリアリーフかと思った。」
「くわしいねぇゆう、でも日本だよぉ」
麻紗美は次のページをめくると、石垣港から1時間20分と書いてある。
「1時間20分?結構かかるな、往復3時間弱か?日帰りできるの?」
3日このホテルに泊まる為に、日帰りではないと行けない、まあ行けるんだけど勿体無い。
「えっとねぇ、1日3便あるから朝と昼と夕方かな?朝行けば夕方まで向こうにいれるからー大丈夫だと思う」
うーーんなんか落とし穴があるような……、まあいいか
「じゃあいこうか二人は大丈夫?」
そう言って妹と美智瑠を見ると……
「えへへへ、天国に一番近い、お兄ちゃんと天国にえへへへへ」
栞が異世界ではなく、天国に行っていた……
多分5分は帰って来ないので、美智瑠に確認を取ろうと美智瑠を見ると
「やるぞ、やるぞ、やるぞ、やるぞ、悩殺だ、悩殺だ、悩殺だ」
気合を入れて自分の世界に入っている……
なんかよく分からんが、妹が二人になっていた……
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