42話 組体操で私は最下層ヒエラルキー。
無事、障害物競争は真が一位を取り終了した。
私の応援がありましたからね!まぁ当然ですけども!私勝利の女神ですけども!
私が一位を取ったわけではないけれど、自分のことのように嬉しく思う。やはり親友効果絶大やな!
それにしても真のやつ、最後の指令は一体何を引いたのだろうか?
大分長いこと考え込んでたみたいだしかなり難問であったに違いない。でもそこで誠治を連れていくということは意外と面白みがなくて固まっていたのだろうか。だとすればあの怖い表情でこっちに来たのも頷けるというもの。
さて、運動会の前半戦も大詰め。残るは私が最もやりたくなかった組体操となります!
確か私の前世、ちょうどよーちゃんが中学に入る時には危険だからということで組体操は無くなったのだけれど、残念ながら私の世代は残っているのよね。なんで今からなくなんないんですか?!あんな不安定な足場とか最低でしょ!私はピラミッド最下層だけれど、それでも背中が最高に重いし、最悪痛くなるよ!!
『午前の部最後の競技は組体操となります。生徒の皆さんは集合して下さい』
幾度と聞いたアナウンスが流れる。それに合わせて生徒たちが整列し校庭に行進する。私の心境としては、これから
「はぁ……憂鬱だよ……」
「私は楽しみだよっ」
私が憂鬱にしていると、半面、みーちゃんはにっこにこととても楽しそうにしていた。一体何が楽しみだと言うのだろうか。残念ながら私にはよくわからない。
「だってぇ、私は琴ちゃんの上に乗るわけでしょ?んふ……タノシミ……」
「ん?なんて?」
「ううんっ!なんでもないよっ!頑張ろうね!」
「うん、頑張ろっ」
なんかみーちゃんから黒いオーラが漂っていたけれどなんだったんだろうか。不穏なことも言っていた気がするけれどよくわからなかったし……。最近みーちゃんがちょっと怖いです。ぞぞぉ……。
さて、みんなが所定の位置に並び終わると軽快な音楽が流れ始める。
その音楽に合わせ様々な型というかポーズを取っていく。その辺の組み方については特に難しくはない。正直少し練習して、それなりに息を合わせられれば簡単に出来てしまう。
だが、だがっ!ピラミッド!お前はダメだ!
本当、本当に!なんでこんなもんがあるんでしょうか!こんな無駄な競技一体何のためにあるのでしょうか?!危険なだけで良いところなんて見栄えだけだよ!その見栄えも結構プルプルしてるから危なっかしいしハラハラしちゃう。つっかえ!やめたらこの競技!
しかし、私の拒絶の意思なんてしったことかとピラミッド作成のお時間がやって参りました!はぁ!どっこい!
私は陰鬱な気分になりながら地面に両手と膝を当て跪く。
くっ……!こんな格好させられるなんて……!でも心は折れない!どれだけ屈辱的な体勢をさせられようと、私!心だけは決して!屈したりしないんだか――ぐぅぇぇぇぇぇえええ……、背中に圧が、圧がぁぁぁぁぁっぁぁぁぁぁあああああ!!!!
「琴ちゃんの上だねぇ……」
瞬間私の血の気が引いていく気がした。
なんか今聞こえた気がするょ?
私の上に乗るのはみーちゃん。そして声がしたのは正に私の上。つまりこの不穏な声の主はみーちゃんであるということ。
あ、なんか凄い背中がこそばゆい!何かが私の背中をさわさわしてるぅぅ。もう絶対これみーちゃんだよ!何やってんのみーちゃん?!あっ……そんな、ちょ、やめっ……んんっ!
「んふっ。琴ちゃん大丈夫ぅ?声……辛そうだよ?」
顔を上げることができないのでみーちゃんの顔を見ることはできないがきっと愉悦の表情であることだろう。だって凄い、声がね、もう楽しそうと言うか、そう黒いんですよなんか。
でもその声は嫌な感じではないというか、聞いてると背中がゾクゾクしてくる……何か新しい扉が開きそう……あっ!私は被虐趣味とかじゃないからね!ノーマルだから!
「ほぉら琴ちゃん?プルプルしてたら崩れちゃうょ?くすくす……」
まさか……身近なところにラスボスがいるとは思っていなかった……。
てか何?!みーちゃんてこんな性格だったっけ?!私の前世の記憶ではちょっと不思議ちゃんな感じだったけれど、それでもこんな暗黒微笑浮かべたりしてなかったと思うんだけれどぉ!!??
「琴ちゃーんほらほらぁ危ないよぉ……」
耳が、耳がこそばゆいよぉ!
なんでわざわざ他の人には聞こえないように囁いてくるかなぁ!これ私のことイジメて楽しんでるよねぇ!一体いつからこんなに悪い娘になっちゃったのみーちゃん!私そんな娘に育てた覚えはありませんっ!あっ、やめっ……んにゃー!
背中に乗せたみーちゃんとの謎の戦いを繰り広げながらなんとかピラミッドが完成する。それと同時にところかしこから拍手が送られる。歓声とかも聞こえてくる。きっと花形であるピラミッドの頂上に立つものは気持ちが良いことだろう。
私は別の意味で気持ちよくなりそうだけどな!
上から順に徐々に人が下りていき背中の重みが一つ、また一つと消えていく。そしてみーちゃんが下りる瞬間首筋に何かが這う。
「ひゃんっ!」
たまらず私は声を上げてしまった。
すると周りの生徒がどうしたの?と言わんばかりに私を見てくる。それを顔を真っ赤にしながら何でもないよぉと言って誤魔化す。
『これで午前の部は終了となります。休憩は13時までとなります』
アナウンスが流れ皆口々にお腹すいたーとか言って和気藹々としている。
私はみーちゃんの方を向くと彼女は何事もなかったのかのように笑顔であった。それはもうつやつやとしていてスッキリしている感じだ。
「ちょっとみーちゃん!」
「なぁに?琴ちゃん」
「さっきのなんだよー!支えるの大変だったんだからね!」
「さっき?なんのことかわからなーい」
「なんでさっ!?」
「あっははははー」
「もう!まちなさーい!絶対許さないんだからー!」
私がみーちゃんを追いかけるとみーちゃんは楽しそうに逃げていく。私の方が足が速いはずなのに中々追いつけないのは本気で走っていないからだ。
絶対許さないとは言ったが本気で怒っているわけではない。みーちゃんと私の絆はそんなことで崩れる程やわではないからだ。とは言えちょっと大変だったし、何より変な声出しちゃったのを周りに聞かれているので恥ずかしくもあったのだけれど。
色々と杞憂のあった組体操だったけれど、なんだかんだ何事もなく?終わりました。それにやってみたらあっという間だった。嫌なことはすっごい長く感じるもんだけれどそんなことはなかったよ。もしかしたらみーちゃんがそれを見越してあんなイタズラを仕掛けてきたのかもしれない。
そう思うと何だか胸がポカポカとするし、本当にみーちゃんは優しくてわかってくれる娘なんだなぁと思う。前世では初恋の相手というちょっと複雑な娘だけれど、でも今生では最高の親友になってくれそうな気がする。大人になってからもずっと、ずっと付き合っていける友達になれたら嬉しいな。
まぁ、でもさっきのはちょっとやりすぎじゃないかなぁ!?
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