3章 運動会と熱き想い
32話 運動会の種目決め!私の目指す姉の方向性は?
一部ハプニング?があったが、平和な土日を終え今日は月曜日のお昼休み。学生も社会人も、心も体も重くなるあの月曜日です。過ぎ去った至高の土日さんと泣く泣くお別れをし、過酷な1週間の始まりを知らせるにっくき月曜さん。多くの人間がこの曜日を恨みそして嘆いていることだろう。まぁ割と学生生活が楽しく感じている私にとっては月曜最高ー!てな感じなのだけれど、如何せん、真にあの現場を目撃されてしまった身からするとある意味同じ様に憂鬱な日でもある。そんな私です。
「にしてもお前猫語なんて話せたんだな……」
「もうその話はよろしネ!」
ほら来た!いっつもそう!何かネタを見つければハイエナの如く突っ込んで来るは真君!君はぶれないね!でもね、それ土曜の話でしょ?!もう月曜だよ!話蒸し返さなくていいわっ。しつこい男の子は嫌われちゃうんだぞっ。そしてそんな面白そうな話をしていて知らんぷりできる人間がいるはずもなく――。
「猫語?なんの話?」
「ほらぁ!こーなるじゃーん!!」
みーちゃんがすかさず反応してきた。そりゃそうだよね!こんな美味い話をほっておくなんてことしないよね!特に私の話が好きな?みーちゃんは、ことこういった話には必ずと言っていい程反応するもんね!
……なんかデジャヴを感じる。具体的に言うと、うちのママ上と近い匂いがする。
前世と性格は変わってないのだけれど、私に対する反応というか対応というか……そう、距離感が違う。前世でも私をからかったりするのを好いていたみーちゃんではあるが、今のみーちゃんは過剰な気がするんだよね。その片鱗を感じたのが例の私の写真集なんだけど。あれね、前みーちゃんの家に遊びに行ったら、本当に金庫の中に保管してあったんだよね。しかも取り出すときとかもわざわざ手袋を装着してから取り出してたし、あれを眺めてる時もなんか恍惚としてて……正直怖かった。みーちゃん相手に貞操の危機を感じたよね……。
そんなわけだから、みーちゃんにとってこのネタは外せないのだろう。今もめっちゃ笑顔でこちらを眺めてらっしゃる。すっごい可愛いんだけどね……目が……マジだょ?
「川田さん……猫さんと会話できるの?」
今度は澪ちゃんがやってきた。澪ちゃんもこれまた可愛らしい笑顔でこちらにやってくる。みーちゃんと違うのは純粋さ、だろうか。いやみーちゃんも十分純粋というか穢れ無きだと信じているんだけれどさ。澪ちゃんの周りにはお花が咲いている感じがする。ぽわぽわぁ~としている。
「いやぁ……にゃんこと会話できるというか……感極まってと言いますか……」
こりゃ誤魔化せないなぁと思ったので正直に答える。
仕方ないんじゃん!!
にゃんこ可愛いもん!可愛いじゃん!!ぬこ様神だよ!!
そりゃ感極まって、とち狂ってにゃんにゃん言っちゃうよ!どこかのコズミックホラー的な何かみたいな感じで、遭遇すると正気を失っちゃうんだもん!猫好きならこの気持ちわかるよね!?なっちゃうよね!??
「わかるよ~。私も猫さん見ちゃうとつい『ごきげんですかにゃ~?』とか聞いちゃうもん。可愛いよね~」
流石ちゃん澪!わかってくれてる!そしてお花畑!
「そうなんだよー!にゃんこが可愛すぎて……もうなんか涎でそう……」
「なんかクネついててキモイ……」
「そこ、キモイとか言うなっ!」
私が澪ちゃんと猫好きワールドを展開しようとしていると、すかさずそこに真がちゃちゃをいれてくる。君はもう!本当にもう!牛でもアイスでもないけれどもうもう言いたくなるこの気持ち理解してもらえないだろうかっ!moo!!
「琴ちゃんの痴態をモットキキタイ――じゃなかった。この後の『総合』って運動会の種目決めだったよね。みんなどうするの?」
一瞬みーちゃんから不穏な言葉が聞こえた気がするけれど聞かなかったことにする。
そう言えばもう運動会なんですよね。先日にも考えた通り早起きをし、朝のランニングをこなしている私ですが、種目については全然考えていなかった。
全員参加の団体競技だと、綱引き、大縄跳び、二人三脚、体操かな。代表者のみの参加となる競技は、徒競走、走り幅跳び、リレー、借り物競争、障害物競争、パンくい競争だったかな。
突出して特殊な競技はなかったと思うけど、強いてあげるとすれば体操だろうか?何故かうちの学校は体操を推しており、毎年必ず体操を入れている。組体操っていうのかな?なんか音楽に合わせて体を動かして、最後にはピラミッド作ったりするの。一応危険性を考え、ピラミッドは3段までってことになっている。因みに男女は別です。
前世ではこの体操が嫌いで嫌いで……。前世での私はピラミッドの頂点で膝立ちをしてポーズを決めたわけですけども、安定性のないそこそこの高さがあるものがすごーく苦手なんですよ。なんか変な汗出てくるし体がぷるぷるするし。おかげで最後のポージングなんかはすんごいへっぴり腰で引き攣った笑顔を浮かべてたもんだから家族には大爆笑されたよね。勿論撮影の概念と化しているママ上には嬉しくないベストショットを撮られ見事にアルバムに収められましたよ、はい。
なのでできれば今回はピラミッドの最下層がいいのです。学級ヒエラルキー的には上層の方がいいけれど、こと組体操においては最下層が最高であることは間違いない。奴隷のように膝まづかされ、背中にクラスメートを乗せよいしょしなければならない。ピラミッドの頂点に立つものが大手を振れるよう、最下層の私は地べたに這いつくばるのだ。
きっと人の乗りどころが悪ければ、たちまち背中を痛めるに違いない。しかしそうだとしても、私は上位ヒエラルキーにはなりとうないのである。平民は平民らしく城下町を支える大黒柱でいい。
上からの眺めがいかようであろうとも、私は下を選ぶ。だって地面素晴らしいじゃん!地面程安定した足場はないから!人間なんだし足を付けたいじゃん!
と、話がそれちゃったか。
まぁとにかくそれなりに競技はある。ここで大事なのは競技種目になるわけで、どれを選び、そしてそれでどのような成果を残すかによって私の『理想の姉』の印象が決まる。
ぶっちゃけリレー以外だとお茶目な、もしくは元気な姉って感じで終わるだろう。競技性というよりも、エンターテイメント性に趣を置いている競技だからね。故に1位を取ろうがビリを取ろうが、それなりに笑いをとれることだろう。まぁそれもありさね。
さて、では競技性が高く最も熱くなるリレーはどうか。これで良い結果、もしくは熱い場面を魅せようものならば私の印象はカッコいいというところになるだろう。つまりそれは運動もできちゃう才色兼備お姉ちゃんというわけだ。
才色兼備の姉……。すごく響きがいいです……。ぶっちゃけ一昨日の土曜の時点では「ないない(笑)」とか思ってたけど、よく考えれば絶好のチャンスというやつではないだろうか。
実際どうだろう。勉強も運動も両立できて、なおかつ頼りになるし優しくて母性に溢れた姉……かなりいいと思うの。前世の私にそんな姉がいようものなら、あんな捻くれて怠け者な私にはならなかったことだろう。……逆にダメ男になってたかもしれないけれど。
とにかく、前世の自分を基準に考えればそれは凄く理想的であると言える。今生のけーちゃんもおそらく前世の私と同じ思いのはず。根拠は趣味趣向が前世の私と変わっていなかったからだ。であれば、好みの年上というのも手に取るようにわかる。よーちゃんも変わってない気がするのでこちらも問題なし。
……一つ懸念事項があるとすれば、前世の私は一番上の長男であった。それ故に上に兄や姉がいるというのを体験したことがない。それでこの好みだ。しかし私の弟たるけーちゃんは違う。けーちゃんには私という姉がいるのだ。最近は少し仲が良くなったけれど、それでも以前の私は結構横暴な姉であった。そんなけーちゃんが求める姉と私の理想像とする姉は果たして一緒になるのか。
本人の口からは今の姉ちゃんの方がいいと評価を頂いたので、あながちこの方向性で見当違いということはないと思われる……うん。
ま、なるようになる。為せば成る。
とりあえずカッコいい姉というのを目指せば良いのではないだろうか。その上で更に判断すればいい。
というわけで、代表種目はリレーを選べればいいのだけれど……果たしてその座を勝ち取れるかどうか……。
「――琴ちゃん?琴ちゃーん?」
気付けばみーちゃんの顔がドアップで目の前に映った。映ったというか目の前にあった。ちょっと間違えればキスできちゃいそうな距離だ。
「え?あぁ!えっとなんだっけ?」
「だから琴ちゃんは代表種目出るとしたらどれに出たいのーって」
みーちゃんは困り顔でそう言った。どうやら思考の波に呑まれていたらしい。私はごめんごめーんと平謝りをし、自身の出たい種目を口にする。
「そーだねぇ……私はリレーかな。今だったら部活動との差はそんなにないし、出ようと思って出れる最後のタイミングだと思うからさ」
そう、リレーにおいて何が一番の弊害か。それは運動部だ。一応走ることの専門とされている、現役リレー及び短距離選手が運動会のリレーに参加することは禁止されているが、それでも運動部事態の参加は禁止されていない。
つまり日頃から体を鍛えている運動部にこそアドヴァンテージがあるということ。普通ならば文化部では勝ち目などない。しかし、それも一年生であれば別だ。
運動会は5月に行われる。そして一年生は入学して間もない。つまり文化部と運動部にそれ程大きな差はないということ。であれば勝てる可能性は十二分にあるのだ。寧ろこのタイミング以外では難しいだろう。
だからこそ私はここに勝負をかけるのだ。運動会にはおそらくブラザーズも来る。つまりここでいいところを見せなければ「姉ちゃんって……(落胆)」となってしまう!お姉ちゃんとしての吟じをここで示さねばならぬ……。
「あー、なるほどねぇ。確かに琴ちゃん運動得意だもんね。でもぶっちゃけ琴ちゃんだったら来年でも再来年でもいいとこいけそうだよね」
みーちゃんが納得と言った様子で頷いている。みーちゃんだけじゃないい。真も同様だ。
あれ?そうだったっけ?私は頭を捻りそうになる。しかし、次の瞬間じんわりと頭の中に今までの光景、それから自身が運動が大好きで得意としていたのだということを思い出し納得していく。
「まぁね~。とは言え運動部は現役でしょ?流石に来年ともなれば一年分の運動量の差がでそうだし厳しいかも」
「無理って言わないあたりお前らしいよな」
「ん、やる前から諦めてもしょうもないでしょ。勝てるとは言わないけど、それでも勝負になるくらいには思っておきたいじゃない」
「そだねー。ま、私は琴ちゃんを推すからリレー頑張って!」
「わ、私も川田さんに一票だよ!応援する!!」
「うん、ありがとうみーちゃん!澪ちゃん!って、まだ決まったわけじゃないんだけどね」
「あー……琴音のこと知ってるやつなら票入れるだろうさ。お前小学校の時徒競走で一位以外取ったことないだろ。そんなやつ立候補しなくても推薦で無理やり選ばれるだろ」
「あははは、そうかな。そうだといいけれど」
「あー俺も女子だったら琴音に入れるわ」
「俺は取りあえず入れてやるぜ!」
不意に別の声がするなーと思ったら、いつの間にやら誠治と一馬も参加していた。その二人も私を推してくれるようだ。これで5票か。あとは私の熱意によるといったところかな。まぁ、初のリレーで出たい出たいなんて言う人はそうそういないだろうからまず大丈夫だと思うけれど。
私はみんなにありがとーと言い、今後のことを考える。
リレーに出ると仮定したわけだが、勿論勝たなければいけない。リレー選手は体育の時間や、相談をすれば放課後も練習をさせてもらえる。運動会まで残り2週間といったところだが、この2週間をいかにうまく使うかが肝だ。
私は心の中でグツとこぶしを握りえいえいおーと叫ぶ。理想のお姉ちゃんたるもの、イベントで手を抜くなどありえない。私の全力をここでぶつけてやろうじゃないか!
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