妹は魔法少女である仮定

秋野シモン

ニートは生きづらい

 さて、下手な作家は、話の開始早々に主人公を初め登場人物の紹介をぶっ混んでくる。まぁ、読む上でキャラ設定が分かんなくなったら、最初のページ見ればいいよ、みたいなお助け機能っぽいが、よく考えてみろ、小説が本で出版されるとき、大体は登場人物の紹介ページが設けられているではないか。なのに、本文でも紹介したら、読む側にとっては二度手間であり、正直言ってめんどくさい、まぁ、登場人物の紹介ページが設けられていない作品もあるし、本文でキャラ紹介をするような間抜け作家はそういないから、こんな心配はする必要ないと思うが、なぜこんな話をしたかというと、これから、俺自身のキャラ紹介文をぶっこむからだ。


名前 小野 紫おの ゆかり

性別 男

年齢 19歳

好きなもの 妹、魔法少女、魔法少女の妹

嫌いなもの 生野菜、脂っこいもの、筋肉質なおっさん、うるさいやつ、リア充イケメン、とりまきがいるお嬢様、話が長い校長先生、こっちの体力を考えない体育教師、自分だってヒラの時はペコペコしてたのに出世したら偉そうになる会社員、自分じゃ書けないくせに知ったかぶって悪評叩きつけてくるネット小説の読者、その他色々あるが一番は、


妹のありがたさを知らない全国の兄だ。


俺はいつもの部屋でパソコンに向かい、短めのネット小説を流し読みしていた。すると、相変わらずノックの存在を知らないのか、勝手に入ってくるやつが何名か。


「おっす紫、元気?」


「おまえが来るまでは元気だったよ」


「私も、ここに来るまでは元気だったよ」


「じゃあなんで来たんだよ」


「紫の元気を奪ってやろうかと、そしたらこっちの方が大ダメージ」


「勝手に自爆してろ」


意味のわからない会話をするこいつは、俺の幼馴染みである角松 百合かどまつ ゆり。ミディアム茶髪に紅目の美少女だが、昔ならさておき、今はあまり女として見ていない。

俺より二歳下の現役高校生だが、放課後にはほぼ毎日俺の家に来て、勝手に人の本読みあさって帰っていく。嫌いではないのだが、はっきり言って迷惑だ。


「俺もいるんだけど...相変わらず二人は仲良いな」


「え~私と紫は仲良くなんてないですよ~」


「あ~うん、そーだねー」


「勇人、お前今日は何の用だ?」


「うわ、友人の扱いひどいな~暇潰しに来ちゃダメなのか?」


「...」


「ハイハイ、そうだよ、頼みがあって来た」


はいこれ、と渡されたのは、A4コピー用紙の束。


「新しいの書けたんで、チェック頼むわ」


「お前な、毎度まいど俺のとこに持ってくるが、編集に見せろよ」


「いや、担当の編集さんにも見てもらってるんだけど、いろんな人間の意見が欲しいからさ。いいだろ?お前ヒマのニートなんだから」


「ニートじゃない。ただ、家からほとんど出ずに無職で生きているだけだ」


それに、一応の収入はある。ネット小説の賞金だが。


「紫、それをニートって言うんだよ?」


俺はおもいっきり驚いた顔で。


「何!そうなのか!」


「ハハ、分かりやすいボケしなくていいから。じゃあとにかく、頼んだぞ」


そう言って勇人は部屋を出ていこうとする。


「あぁ、用は済んだし、まだ別の話の続編抱えてるからな」


「そうか、じゃあな」


「さようなら勇人さん」


「お前も帰れよ」


「やだよ、まだノゲノラ読み終わってないもん」


本当、迷惑なんだけど。


「働かざるニートは、文句言うべからず」


「この国はニートに冷たすぎないか」


「社会貢献しないニートは生きづらい世の中なんだよ」


その後、百合は夜になるまで俺の部屋に居すわり続けた。

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