~交わりの街で~・4

 悲鳴が聞こえたのは足元を流れる川から。

 デュー達が駆けつけると男が一人、ロープにしがみついて川の流れに逆らっていた。


「うぉぉぉぉ思ったより深い! そして速いぞっ!!」

「カシュー、大丈夫!?」

「しっかりするでガス!」


 今にも流されそうな男をカシューと呼ぶのは彼の仲間らしく、必死で彼に呼び掛けていた。

 カシューを唯一支えるロープは、今にも千切れそうに頼りない。


「なんのこれしき、もうちょっとで反対側にっ……」

「まずい!」


 ぐい、と強引に引っ張られたロープが悲鳴をあげ、シュクルが思わず叫んだその時。


「っ!」


 いつの間に取り出したのかロープを自分と橋の支柱に括りつけ、美女は勢い良く飛び込んだ。


「あっ……おい!」


 派手な水音がしたかと思えば美女は泳いでカシューの元に辿り着き、彼を抱えて戻ってくる。

 一連の出来事に一同はただ見守るだけだった。


「げほっ……た、助かった……」

「カシュー!」

「良かったでガス~!!」


 無事戻ってきたカシューに仲間達が慌てて駆け寄る。


「もう、だから無茶だって言ったじゃない!」

「す、すまん、マカデミア……」

「カシュー、確か泳げないんじゃなかったんでガスか?」

「おぉう、忘れてた!」


 なんて事を言いながら無事を喜び合う三人。


「全く、びしょ濡れになっちゃったわ~」


 濡れた服を絞りながら美女が戻ってくる。


「お陰で助かった。ありがとう」

「いえいえ、どう致しまして」


 と、カシューはすかさず立ち上がり、


「そうだ、こうしてはいられない! 早く王都に行かなくては!!」


 と、セリフに合わない妙にカッコつけたポーズをとる。


 すると残る二人もカシューの両側に並んで、


「ウォール!」


 大柄な男が勇ましいポーズをとる。


「マカデミア!」


 妖艶な女性がセクシーに決める。


「カシュー!!」


 そしてリーダーらしく真ん中で先程とは違うポーズをとるカシュー。


「「「三人揃って!」」」

「旅芸人集団かの?」


 一番盛り上がるであろう所をミレニアに遮られ、三人は華麗にずっこける。


「違うでガス! オラ達は旅の傭兵団、その名も漆黒の……」

「どう見てもお笑い集団じゃぞ」


 少女にばっさり斬り捨てられ、ウォールはショックにうなだれる。


「んじゃポーズもとった事だし、早く王都に向かいましょ?」



 マカデミアが二人にそう呼び掛けるとカシューが動き出す。


「はっ、そうだった……それでは諸君、さらばだ!」

「あ、ああ……」


 そして三人は、風のように去って行った。


「あやつらも王都に向かうのだな……」

「らしいな」

「んでもってあそこで溺れてたって事は、川を強引に渡ろうとしたって事じゃの」

「う……」


 同じ思考回路がここにもいたらしい。

 ミレニアは楽しそうにデューを見ている。


「実際にあんな馬鹿をした訳じゃない。一緒にするな」

「そうよねぇ、失礼しちゃう」


 そんなに変わらないだろう、とシュクルは内心でつっこんだ。


「さぁて、濡れちゃったし一旦街へ帰ろっかにゃ~」

「そうじゃの。わしらも行くぞデュー」

「待て、もしかしてさっきの話……決まっているのか?」


 先を歩き出す女性二人がデューの言葉に振り返った。


「だって行き先一緒でしょ?」

「わしらにも拒む理由はないしのぅ」


 どうやらいつの間にか決まっていたらしい。

 残るシュクルは……というと、諦めたように首を振った。


「……やれやれ。物好きもいたものだ」

「決まりね♪ あたしはイシェルナ。イシェルナ・キッシュよん☆」


 イシェルナはよろしく、とウインクして見せた。


「んじゃ、街に戻ったら王都に向けて出発ね☆」

「けって~い! なのじゃ♪」

「「……はぁ」」


 好きにしろ、とデューとシュクルは溜息を吐くのだった。

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