第2話

――あれっ?


糸居は車を停止させた。


何度見ても左にあった進入禁止の看板が、今日は何故か右にあるのだ


――えっと。


糸居は考えた。


左に進めばいったい何処に行くのか。


川にはたどり着けるのか。


そもそもこの道は、何処かに通じているのか。


考えたが結局左に進むことにした。


どうせ右は通れないし、左がその迂回路だと判断したからだ。


糸井が左に進んでしばらくすると、茂みの影から二人の男が出てきた。


そして二人で看板を抱えあげると、それを左の道の入口に置いた。



左の道は進めば進むほどもともと細かったものが更に細くなり、登り下りの傾斜が増してゆき、急なカーブだらけとなっていった。


最初は舗装されていた道も、いつの間にか土がむき出しの道になった。


――これはひょっとしたら判断を誤ったかも。


ためしにナビを見てみたが、ナビ上ではこの道は存在しないことになっている。


糸居は引き返すことを考えた。


しかし車を切り返せるような場所が、何処にもないのだ。


かと言ってこのあまりにも過酷な道を、バックで進み続けるなんて自殺行為だ。


道は細くこれでもかと曲がりくねり、片側はガードレールもないほぼ垂直の崖なのだから。

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