第11話『大きな壺をいかにして効率よく盗み出し、足がつかないよう高値で売り捌くか。』

 豪華な校門をくぐり抜け、フカフカのソファーが並び、案内人と、荷物運びの人がいる、ホテルエントランスのような昇降口を通り、おそらく高いであろう壺や絵画整然と並べられた廊下を数本渡り歩き、ようやく、アリーナ体育館と言う名のホテル宴会会場に辿り着いた。感想、


「広い、疲れた。廊下無駄にお金賭けすぎっ!」


 まったく、廊下気軽に走れないじゃないか。壺割っちゃうかもしれないじゃないか!

しかも、あんな絵画並べちゃって盗まれても気づかないんじない?盗んじゃうよ?


 それにしても、人多いなぁー。多分これみんな生徒だよね?

広い会場いっぱいに、ズラァっと並んだお高そうな椅子には生徒と思しき人達がお行儀よく座っている。

さっすがぁ、貴族だけ学園通える学校。それにしても何人ぐらい居るんだろ?どれどれ、


「……多分、300人ぐらい、かな。ウン」超テキトー。


 よくよく見てみると、きょろきょろと忙しなく辺りを見ていたり、無駄に緊張感ある生徒が集まっている場所がある。


「多分、あそこらへんに座ればいいんだよね?」



 そう、気軽に呟きながら椅子と椅子の間を歩く……


「うっわ、デリカシー皆無だなぁー」


 嫉妬、嘲り、軽蔑、優越感、好奇、嫌悪、軽蔑……ありとあらゆる負の感情が私という標的に向かって一斉発射された。


「……またかよ、しんどいなぁ」


 まぁ、しゃあ無し、か。

 服装から浮いちゃってるもんね。貴族様たちからすれば身なりが安すぎるんだろうね、きっと。

……まぁ、当たり前だよね。

 更には、主人公ちゃんは平民。そういう低い身分でありながらも、魔法を持って生まれ、貴族しか通えなかったはずの学園に特待生として入学。おまけにスンバラシク美しいと来た。

そりゃ、目立たないはずがないよ。


「あっ、口に血ついてる」ゴシゴシ。


 あのオッサン、絶対に許すまじ。

 ドレスが皺くちゃなのも、リボンが解けかかってるのも、髪がボサボサなのも、喉が乾くのも、蝶々結びが出来なくてどうしても縦結びになるのも、ぜぇーぶあのオッサンせいだ。

 疲れて、この視線から受けるダメージが大きくなったのはあのナヨっと眼鏡の長話のせいだ。


「あっ、この席かな?」


『キーラ・グレイアム様』と達筆な日本字で彫られた椅子があった。

ウン、間違いなくこれだね。……あー、よかった。日本語で。あのナヨっと眼鏡が、無駄に変な言葉使って来るから不安だったんだよね。

まったく、自分が天才だからって理解出来ない言葉バンバン使いやがって。チョーシのり過ぎ。


「これだから格好づけるイケメンは」


 いざ、腰を落ち着けて、辺りを見回すと、まチラホラ空き椅子があった。なんだよ。あのナヨっと眼鏡『もう、入学式が始まってしまう』って言うから急いだのに。


「……いや、大して急いで無いな」


 廊下にある壺やら、絵画やらをいかにして盗み出し、足がつかないようどこで売るかってこと考えながら歩いてたからどちらかと言うと、ゆっくり見るめに歩いたよ。


「……まだ、はじまらないのかな?」


 そう呟きながら、リボンを例の如く縦結びにしていた時だった。会場の明かりがすべて消え、その暗闇の中前方から眩い光が迸ったのは。

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