第9話 『こう、なんだろう。性格いい人と喋ってると自分の曲がった根性がむき出しになる感じ』
青い空に花弁を撒き散らす桜。そんな豪華なセットを背景に立つ青年。
身長は私の頭1つ上ぐらいで結構高め。全体的に筋肉が無いのかひょろりとしている。
柔らかそうな生地の貴族服は例の如く高そうである。売りたい。……ってそれじゃ追い剥ぎか。
しかし、その高価そうな服に反して首に巻かれた黄緑色のマフラー?厚手のスカーフ?はところどころ焼け焦げ、ボロボロである。
髪は暗の黒。寝癖だろう、至る所の髪が重力に逆らってはねている。簡単に言うとボサボサ。
少し長めの前髪から覗く探究心に煌めく目。その瞳の色は昼間の鮮やかな森を映した、泉の碧。
そして例の如く、イケメンである。……滅びろ。
そして、最悪なことに私はコイツを知っている。
【ダニエル・スワチュード】
この世界を反映した乙ゲー『キミだけを救う』の攻略キャラクターの1人。自称ではなく、あらゆる人から認められ、賞賛される『天才魔法研究学者』。ちなみに、私が付けたアダ名は『ナヨっと眼鏡』である。
「…?大丈夫かい?」
はい!
早速出ました!私の大ッ嫌いなイケメン動作~!
小首を傾げるだけでなく、目尻もついでに少し下げる。更には小さい笑顔付けて、優しさ溢れる声で「大丈夫?」と聞く。
いやぁー、イラッとするねぇー。小首傾げるだけででも、イラッとするのに、目尻と微笑みをトッピングした三コンボ。破壊力はコンボで3乗。私のイラッとポイントも、3乗!更には、慈愛を含んだ少し低めのボイスで「大丈夫?」と囁く。
まるで『イケメンが貴女のこと心配してやってるぞー、嬉しいだろー』って言う副音声が聞こえてくるよ。ムカッとくるわぁー。
「本当に、大丈夫?」はーい、お代わり入りマース。
「だっ、大丈夫、ですッ!」
勘弁してよ……。いや、この世界の舞台が『キミだけを救う』がベースだって気づいた時から覚悟はしてたけどさぁ!
私本当にイケメン苦手だし、嫌いなんだよ。なんか、背景にその桜の花弁が舞っているみたいなキラキラオーラ。……って本当に桜の花弁舞踊ってるし。春だし、タマタマだよね?
とにかく、そのキラキラオーラ浴びてるとさ、なんか、自分のひん曲がった根性やら、性格やらが明るみに晒されてる気分になってくるんだよ。
イケメン共が放つオーラは明る過ぎるんだよ。私の暗さが余計目立っちゃうじゃんか!
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