お題「私が君の手を引いた理由」
私が君の手を引いた理由。
それは「引ける」と思ったからだった。
雨に打たれてぐちゃぐちゃになって一人で泣いていた君。見つめる私に気づいた君は、泣きながら私を見上げて、目が合った瞬間に大きく目を見開いた。その顔が愛おしく思えて、だから手を差し出したんだ。……正直に言えば、選んでくれるとは思わなかった。
君との生活は悪くなかった。
泣き虫で私を窺う様子ばかり見せていた君は、いつの間にかよく笑うようになっていたね。
一緒に何かを食べる、そんなことですら君は目を輝かせた。
私の言うことやること、全てに興味を持ってついて歩く様はまるでアヒルちゃんのようだった。
とても微笑ましくて、愛らしくて、少しでも長く続けばと思わずにはいられなかったよ。
だけどもう、おしまい。
君を探している人たちがいる。
居場所があるなら帰らなくてはいけない。少なくともそれは私の元ではないんだ。
君は泣くかもしれないね。初めて会ったあの日のように泣くかもしれない。だけどそれはきっと次の話の始まりになると思うんだ。
きっと二度と会えないだろう。君の幸せを心から祈ってる。
───これは誘拐犯Aが逃亡前に残した一通の置き手紙である。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます