お題「約束だって言ったのに」
約束だ、って言ったのに。あなたはここにいない。
あんなに堅く、固く約束したのに、目が覚めたら私一人だけがここにいた。
どうして。泣いても喚いてもあなたが姿を現すことはなかった。痛い右足を引き摺りながら探しても探してもあなたの欠片すら見つけられなかった。
どうして。
どうして。
泣いて、泣いて。時間の感覚すら失ってしまって、どれだけ泣いたか分からない。
あなたは今、どうしているのだろうか。悲しんでくれているだろうか。もしかしたら胸を撫で下ろしているのだろうか。これで良かったと思い直しているのだろうか。
そうだとしたら悲しい。悔しい。───…だけど、それでも良かったと思う。
一緒にいられたら良かった。良かったからそうした、けれど。
あなたが残れたのならば、悲しいけれど、悔しいけれど、恨んでしまいそうだけど、ならばそれでも───
「約束だって言ったのに。本当に、ごめん」
男が絞り出すように声を出す。その足下には花。背後には見張りのように数人が付き添っている。
「僕もいきたかった。許されなかった。許してほしいとは言わない。許されない」
男の左足首に包帯が巻かれている。その下には抉れたような真っ赤な痕がある。未だ治っていない傷と言っても差し支えはないだろう。ぽたりぽたりと地面に染みができる。数メートル先は断崖絶壁であるその場で男が身動いだ瞬間に、見張りの一人が男の肩を掴んだ。
「もう、いいでしょう」
男が慟哭する。
「そろそろ見合いの時間です。帰りましょう」
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