第20話 試験勉強


奏太に会ってからは、しっかり大学にも行くようになった。



もちろん、溝呂木さんにも電話をかけて、今までの愚行と心配をかけてきた事への謝罪を述べた。



溝呂木さんは



「まぁ、誰だってそういうのあるよ!うちも何も言えなくて、ごめん!今まで通りに、仲良くいきましょーや!」




と、有りがたい言葉をもらった。




俺も現金な奴なのか、溝呂木さんや奏太に話を聞いてもらうと、あれだけ悔やんでいた事をあたかも忘れてしまったくらいに吹っ切れてしまった。




それだけ、二人は俺に気をかけてくれ、そして支えてくれたのだろう。





もちろん、未來を忘れるはずはない。




完全に吹っ切れることもないだろう。





でも、今は目の前にある目標に、真正面から向かえる気がする。




いいよな?未來。




もし、怒るなら幽霊じゃなくて、夢の世界で叱ってくれ。




そしたら、反論して喧嘩して、もっと仲良くなろうよ。



なぁ、未來?




一人の勝手な妄想に過ぎないが、未來はいいよって言ってくれるはずだ。




きっと、言ってくれるに違いない。




うん、そうだ。




だからこそ、頑張る。




まずは、テストだな。




そう、慶央大学には独自のシステムがあり、試験において優秀な成績を修めると、司法試験対策の専用講義が受講できるようになり、

特別な自習室も借りられるようになる。




俺はどうしても手にいれたい。




まぁ、お金がないからってのもあるけど。




でも、せっかく最良な環境をもらえるなら、もらいたい。




スーパーの安売りで、一個なら100円で三個なら198円なら、多少多くとも三個買ってしまいたくなる性分だ。





大学を休んでいたのは、痛手だがそんなのは俺にとってはに過ぎない。




やるしかないんだ。




早速、溝呂木さんに連絡をとり、休んでいた部分の講義ノートを見せてもらうことにした。




溝呂木さんは4限で終わるそうだから、少し待ってよう。





「お待たせー!」



後ろから目隠しをされた。




柔らかい手が顔の全神経を通して、精力を与えているかのようだ........。




(あぁ........、天国だぁ........)





そのまま、黙っていると




「あ!エロいこと考えてるやろ........。この変態!」



と、をされた。





痛いけど、気持ちいい感じする。





俺って意外とMなんだな。





「いたっ!溝呂木さん、少し乱暴じゃありませんか?!」




「な~に?私が悪いって言うんか?じゃあ、悪かった根拠を言うてみ?」




言えないだろって言う顔をしてきた。



ごもっとも。

助けてもらうのは、俺の方なんだからな。




「いや、ごめん。俺が悪かった」




「分かればええんよ。そんなことより、勉強しよ?」




「いいよ。じゃあ、見せてくれる?」




「ええよ。あっ、ここな。この時の事象の具体例がめちゃめちゃ面白かったんよ。何かって言うと................」




ここからは彼女の独壇場になった。



久しぶりに話すせいなのか、気持ちが高ぶっているのか、はたまた俺の勘違いなのか。




真実は知らないが、彼女の顔は赤みを帯びている気がした。



そして、何よりも話が途切れることはなく、4限の後からの待ち合わせだったのに、気づけば待ち合わたお店の閉店時間まで、話し込んでしまった。




俺の心も、溝呂木さんを欲していたのかもしれない。




乾ききった土に水をあげると、物凄い勢いで吸収するというのを聞いたことがあるが、

正にそんな感じだ。



まるで、だ。




「あのう........そろそろ閉店時間なんですが........」



「えっ........!あっ、はい。すぐに出ます!」



会計は俺が払った。



ここぞとばかりに、男を見せとかないと........。



いや、別に下心満載ではないからね?








「こんな暗くなるまで話すとは思わんかったわぁ」




「でも、楽しかったよ。ありがとね、溝呂木さん」




素直に感謝した。




「えっ........、あっ、ええって。ええって。うちも楽しかった!こういう話が出来るのは、直也君しかおらんのよねー」




「そうなんだ。俺で良かったら、いつでも話そうよ。法律の話はなかなか話さないしね」




「ほんと!じゃあ、今度勝負ね!」





何の勝負?



あっ、テストの事か....。




「いいよ。その代わり、負けた方が勝った方の言うことに同意することを条件としよう。そうじゃないと、対価がないだろ?」



俺は色々なプランを考えて、敢えて条件を持ち込んだ。




「................、ええよ。うち、負けへんからな!」




上等だよ。絶対に勝ってみせる。





「よし、じゃあお互い頑張ろうぜ」




「うん!じゃあ、テストの日までグッバイ!」





手を振り、予備校が立ち並ぶ方へと消えていった。





(俺も帰って勉強しないとな)





そのあと、早めに帰宅して勉強に勤しんだ。







この結果がどうでるか........。





それは、俺の勉強次第だ。















  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る