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鍋島小骨

001 - 010

001. epilogue

 それから夢に見なくなった。

 魘されることも、泣きながら目覚めることもなくなったし、目が覚めた瞬間に目覚めたくないと拒絶の気持ちが沸き起こることも、夢の中に置いてきた大切な何かを思い出せずに死を生きるような気持ちにもならなくなった。

 「それ」は、今や現実のものとなっている。

 歩き回り寝そべり食べものを要求し私の邪魔をする。何となればそれ自身が私を叩き起こし夢から引きずり出す。

 おまえを現実と名付けよう。

 そう言うと笑い、ではおまえは夢だ、と言葉を返してくる。

 私の現実。

 私は夢か。

 はじめて夢を見つけたんだ、とおまえは言う。

 ああ、私も、はじめて現実を好きになったよ。

 時折私たちは手を繋ぐ、世界と世界を触れ合わせるように。

 いつかまた眠りの汀で私たちは世界を取り替えるのだろうか。おまえが再び夢となり、私を現実と呼ぶようになるのだろうか。

 もしもそうだとしても。

 世界に再びの夜が来るのだとしても。

 私たちはもう、離れることはないだろう。ひとつの星に昼と夜とがあるように、私たちもひとつの世界なのだから。

 こうして物語は終わる。

 そして、終わりは始まりに等しい。

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