93.時間の速度を操ろう
新文芸コンテストも始まりましたね。どんなジャンルでもOKなので参加してみたらいかがでしょう。必要なのはコンテスト終了時に八万字であることです。
さて、戦闘描写を書いていると、その一挙手一投足を表現するために様々な手法がとられます。現時点で私は長編物では必ず戦闘が入っているので毎回頭を悩ませているところです。
ですが、ここ。物語の本筋と関係ないからってあっさり終わらせてしまうと非常に勿体無い。この場所こそ、作者の腕の見せ所でもあります。
小説では婉曲な言葉と簡潔な言葉で表現する二つの手法が用いられます。
例えば「トウカは宙返りした」となるとあっさりその行動の始点と終点が描かれてしまいます。コメディだとテンポを維持するためにあっさりと書くことも推奨されますが、シリアスな戦闘描写だとなんだか味気なくなります。
その瞬間が戦闘においてどのタイミングなのかによってこの辺りは変わります。
切り札を放つ時なのか。
敵の攻撃を回避した時なのか。
身のこなしを表現するためなのか。
その時その時に合わせて表現は変えていくのがいいと思います。
先の例で言うと
トウカは敵兵の繰り出した槍の一撃を剣で払い落とすと、その背後から追撃をかけてきた魔導士の炎弾を跳躍して回避する。
天空で弧を描く彼女の後ろで輝く太陽が目に入り、槍兵はその姿を見失う。
「やああーっ!」
空中で剣を振りかぶり、トウカは降下しながらそれを頭上目掛けて振り下ろした――。
こんな感じでたった一行に凝縮された言動、視覚情報、跳躍の高さなど多くの情報を表現することができますね。
ここに心理描写を入れると、今度は登場人物の思いを盛り込んだ上で戦闘させるので、感情を揺さぶりながらの戦いを繰り広げることができます。
一つの行動の間に何があったのか、これを小説では事細かに情報を差し挟むことによって臨場感を与え、なおかつそれを描いている間は本編中で時は止まるかゆっくり動くかすることになります。一定の速度で流れる時間を作者は自由に速度調整できます。
毎回言葉を弄して表現する必要はありません。ただ、その場面によって効果的な使い方を選び、そのシーンで伝えたいものをうまく伝えるにはこういったやり方もいいのではないかと思います。
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