第25話 宰相

「……要するにアレですか?

 リグレシア皇国はスターリング王国との戦争で自信をつけてしまったということですか?」


「ま、有り体に言えばそういうことになりますね。

 兵員数で勝る人間種のスターリング王国にすんなり勝ったということもありますが、何よりも当時のヘカート大陸における人間種国家の軍隊が魔法戦に対して脆弱であったことが露呈したこともリグレシア皇国と皇国民達の自信を更に増長させた一因ですね」



 俺の質問に対して警視庁所属の元白バイ隊員にして現在はシグマ大帝国中央議会の勅撰議員である『斎藤 武雄』こと『ステン・トマス・ゾロトン』は、「どうにもならない」とでも言いたげに首を左右に振りつつ肩をすくめ、リグレシア皇国が戦争の道へと突き進んで行った理由を淡々と話す。


 彼の言うように当時のヘカート大陸における人間種国家の軍隊は兵員の数が多く、物量に任せた白兵戦闘や攻城戦は得意であった。が、反対に大規模攻撃魔法を用いた魔法戦闘を苦手としていたことと、大規模攻撃魔法の前では数の暴力などは意味がないことがスターリング王国との戦闘時に露呈し、リグレシア皇国政府首脳部は残りの二つの国――――『オーエン共和国』と『アバカン公国』に侵攻することを決定する。



「実際には、戦勝気分に浸って勢いづいた世論と軍部の圧力にリグレシア皇国政府が耐えられなくなったというのが実情です。オーエンとアバカン両国の軍隊にさえもすんなりと勝てたとなれば、それまで冷静な判断力を少なからず保っていた皇国政府さえも増長してしまうのは仕方ないかもしれません……」



 ゾロトン議員の言う通り、スターリング王国との戦闘からそれほど時間を置かずしてリグレシア皇国軍はオーエンとアバカンの両国に侵攻を開始。皇国軍はスターリング王国軍と戦争をしたときと同じように大規模な戦術級攻撃魔法による大規模魔法戦闘で両国の軍隊を破り、瞬く間に首都を制圧してしまった。


 そしてスターリング王国でそうしたように両国の王族とその血縁者や政府首脳陣を拘束し、略式裁判の後に一人残らず処刑してしまったのだ。






 ◆






「では、私はこれで失礼します。

 不自由をお掛けしますが、迎えが来るまでお二人はくれぐれもこの部屋から出ないようにお願いしますね?

 内務省や治安警察軍には私から話を通しておきますが、末端の保安官や警官達は何も知りません。

 それと、憲兵隊や情報省の人間などに見つかると厄介なことにならないとも限りませんので、十分に気をつけてください」


「分かりました」


「それでは、失礼」


『またの』




 ゆっくりと扉を閉めたシグマ大帝国中央議会勅撰議員『ステン・トマス・ゾロトン』は旅館ホテルの廊下を歩き始めると、待機していた2人の部下が直ぐに駆け寄ってきて自分の前後を守る位置に立ち、こちらと歩調を合わせて廊下を進む。そして廊下に誰もいないことを確認した護衛兼秘書のアチザリットが彼にそっと耳打ちする。



「ステン様、先程皇城より連絡がありました。

 宰相閣下がステン様に面会を要請されているとのことなのですが……」


「宰相閣下が? …………分かった。

 連絡してきたのはベネリ宰相補佐官かね?」


「はっ。 その通りでございます」


「分かった。 では私が直接、宰相補佐官へ面会に応じる旨を連絡しよう。

 すまないが、支配人に部屋を用意するように伝えてくれたまえ」


「かしこまりました」



 己の上司からの指示を受けてアチザリットは了解の礼をしてから静かにステンの元を離れて行った。






 ◆






「どうぞ。 旦那様」



 コトリと置かれたティーカップとソーサー。

 カップの中には色鮮やかな紅茶が淹れられており、立ち昇る湯気に含まれた香りが鼻をくすぐる。


 飲む前に鼻に香る匂いだけで既に美味しいということが判る紅茶を一口含むと、その予感は確信へと変わる。上質な茶葉と美味しい井戸水が出会うことで織り成す素晴らしいハーモニー、一口目は何も加えずに飲み、二口目は添えてあるレモンを軽く絞り加えてから飲む。



「うん、美味い。

 それにしても、忙しいところすまないね。 奥さんは元気にしているかね?」


「はい。 旦那様から紹介していただいた治癒魔導師殿のところで治療させていただくようになって、妻の体調もすこぶる快調になりました。

 最近は以前よりも元気になりすぎて、こちらが困るくらいですよ」


「それは良かった。 奥さんを大切にな」


「はい。 お気遣いありがとうございます。

 それでは私はこれで。 ごゆっくりどうぞ、旦那様」


「うむ。 ありがとう」

 


 人好きのする笑顔を見せて自分の妻の容態を嬉しそうに話し、それから部屋を退室して行く支配人を見送るステンは自分も同じように彼へ笑顔を返してそのまま見送る。他人の妻のこととはいえ、大切な知り合いや部下が家族のことを幸せそうに話す様子を見ていると、先程まで感じていた緊張が嘘にように吹き飛ぶのだから不思議なものだとステンは感慨深い思いに駆られる。



「さてと……」



 支配人から出された紅茶をもう一口飲み、充分に喉を潤したあとで上着の内ポケットからあるものを取り出す。懐から取り出されたのは幅五センチ、長さ十二センチ、厚さ二センチ程の大きさの物体が二つほどで、一つは黒い水晶で作られており、もう一つは赤い水晶で作られていた。


 一見すると、少し厚めの水晶の板に見える“ソレ”は表面に線と文字が薄く彫り込んであり、黒い水晶のものは『一〜十』までの数字と『通話』『切』の文字がそれぞれ漢字で印字されており、赤い水晶のものは数字の印字は無く、『直通』と『通話』『切』の文字のみが印字されている。


 ステンは二つある水晶体のうち、赤い水晶体の板を手に取って右手の親指を『通話』の文字に添えてから微弱な魔力を流し込み、地球の電話器と同じ要領で耳に当てる。すると、己の視界の端で赤い水晶体が淡く光るのが見えたが、直後に水晶体から若い女性の声が聞こえてきた。



『こちら皇城、交換です』


「中央議会勅撰議員のゾロトンだ。 ベネリ宰相補佐官に繋いで欲しいのだが」


『畏まりました。

 ですが規則ですので、一応、議員殿の魔力特性と身分確認をさせていただきます』


「分かった。 では、頼むよ」


『少々、お待ち下さい』



 一瞬だけ水晶体に接している耳と手から微弱な魔力が伝わってくる感触を受けたステンであったが、気にすることなくそのままの姿勢でいると相手から自分の身分確認が完了したという内容が伝えられた。



『…………ゾロトン議員殿の魔力特性及び身分確認が完了しました。

 それでは宰相補佐官にお繋ぎします』


『私だ』


「やあ、スティーブ。 久し振りだね」



 一瞬だけ無線機のようなザザッとした雑音が聞こえた後で聞く者によっては少々威圧感を感じさせる男性の声に切り替わる。ステンはその声が聞こえると同時にそれまで正していた姿勢を崩し、顔の筋肉を弛緩させて柔らかい声で水晶体へと話し掛けた。



『ステンか? 忙しいところ済まない。 実は宰相閣下から指示があってな?

 閣下がお前と会いたいと仰られているのだが、今何処に居るんだ?』


「今は北区の私が経営している旅館だよ」


『そうか。 今から皇城に来られるか?』


「もちろん。 宰相閣下直々のお呼びとあれば、何処であろうと直ぐに馳せ参じるさ」



 お互い気心が知れた同世代の男からの皇城への招聘要請。

 そしてその要請を出しているのは彼の直属の上司である大帝国の宰相とくれば断る理由はない。二つ返事で了承の旨を彼に伝える。



『分かった。 では、直ぐに来てくれ。

 近衛兵と皇城警護官達にはこちらから話を通しておこう』


「頼む。 では、今から向かうとするよ」


『うむ。 皇城で会おう』


「ああ」



 同じ帝都の中にいるにも関わらずお互い公務が忙しい為に中々会えずじまいだったが、久しぶりに気負う必要のない本物の友人と会えることを楽しみにしながら、ステンは水晶体――――この世界の携帯通信機であり、シグマ大帝国の中でも限られた者しか持つことが許されない皇城直通伝送器の通話を切ってゆっくりと席を立ち上がった。

 





 ◆






 シグマ大帝国の帝都北側に位置する皇城『オーバル』にひとりの男が訪れていた。

 一見すると只の杖に見えるように偽装された魔法杖を右手に持ち、漆黒の三つ揃いのスーツ背広を着込み、控えめに整えられたカイゼル髭とつばが広いボーラーハットから覗く金髪が特徴的な中年の男。


 五十代前半とは思えなほどに軽い身のこなしで皇城の廊下を颯爽と歩く彼に対し、すれ違う皇城の警備兵や侍従、侍女達は皆一様に頭を下げて礼をする。そんな彼――――『ステン・トマス・ゾロトン』はある一画に存在する扉の前へと来ると、それまでよりも背筋をシャキッと伸ばしてから扉を軽く叩くノックした



「勅撰議員のゾロトンです。

 宰相閣下の要請に基づき、参上致しました」


「少々お待ちください」



 扉が開いて中から姿を現した女性の秘書官に対してゾロトンは自分の身分を明かし、宰相に呼ばれたことを伝えると彼女は一度扉を閉めるが、数十秒後に再び扉が開いて秘書官は彼を室内へと誘う。



「どうぞ。 宰相閣下が奥でお待ちです」


「ありがとう」



 彼女以外に常駐の警備兵――――皇城警護官4名が待機している秘書室を通り抜けると、出入り口のちょうど反対側に位置している重厚な作りの木製の扉がタイミング良く開き、部屋の主が笑顔でゾロトンを出迎えた。



「おお、ゾロトン殿! よくぞ来てくれた。

 卿は相変わらず元気そうであるな」


「宰相閣下もご壮健のようで、何よりです」


「うむ!……と言いたいところだが、寄る年波には勝てないものだ。

 魔法使いである貴殿が羨ましい限りだよ。

 やはり『魔導士は魔力の影響で老化が遅い』というのは本当なのだなぁ」


「何を仰いますか、閣下こそお若いではないですか。

 それに明日の大帝国の行く末を担う閣下がそのように気弱ではどうなさります」


「はははっ! これは嬉しい。

 一流の魔法使いである貴殿に言われてしまっては年寄りぶっても仕方がないな」



 この国の最高権力者である皇帝に一番近い位置にいる男であり、この部屋の主でもあるシグマ大帝国皇帝府長官であり、宰相の地位を兼任している男――――『サイモン・ルーファス・モスバーグ』はステン・トマス・ゾロトン勅撰議員の顔を見るなり相好を崩して彼に話し掛け、ステンはそれに対して同じように笑顔で彼が壮健であることを喜んでいた。


 サイモンが言うようにステンの見た目は五十代にしては若く見られるほうだろう。他の同年代の者たちは年相応か、或いはそれ以上に歳を取っているように見える者も多く、その中にあって元軍属魔導士であるステンは他の議員達と比較しても充分若い容姿を保っている。


 常人より遥かに高い魔力と軍人時代からの鍛錬を欠かさないことが彼の若さの秘訣なのだが、そのステンから見ても宰相であるサイモンは充分に若く見える。顔や手に年相応の皺こそ見られるが、皇帝やステンより十歳以上も歳上であるにも関わらず、スッと伸びた背筋にハキハキとした喋りに回転の早い頭脳は充分に若いレベルだと言えよう。


 そんな二人はお互いに仕事が忙しいこともあり、マトモに会える機会が限られているためかサイモンは彼の肩を親しげに叩きながら好々爺然とした笑顔で己の執務室へとステンを誘う。皇帝陛下に代わってこの国の舵取りを司る宰相の執務室とは思えない程にこじんまりとした部屋は、広過ぎず狭過ぎずの丁度良い広さだ。


 執務机の前に置かれた一流の職人が丁寧に作り上げたであろう重厚な革張りの椅子にサイモンがこの部屋の主人らしくドカッと腰を下ろし、続いてステンが静かに着席する。すると、彼の体重を受け止めた椅子は適度な弾力をもって彼を包み込み、極上の座り心地を彼に提供した。



「…………して閣下、今回のお呼び出しの件ですが?」



 席に座り、すかさず秘書官が淹れたての紅茶が入った茶器を机に配膳する。

 それを黙って見つめていたステンは秘書官が退出し、扉がキチンと閉まったことを確認してから話を切り出す。



「うむ。

 それなんだが……貴殿、とんでもない相手と接触したという報告を聞いておるが本当なのか?」



 先程までの好々爺然とした雰囲気は何処へ行ってしまったのやら、そこにいるのは別人と言っても差し支えないほどに雰囲気が変化した文字通り本物の権力を持つ者のそれであった。その視線はそれだけで並みの役人や兵士であれば逃げ出したくなるほど鋭く、心の中まで見透かしそうな迫力を伴っている。



「はい。 閣下のご指摘通りです。

 実は先程までその人物と会っていました」


「ほう?」



 しかし、それに対するゾロトンはそんな雰囲気など何処吹く風とでも言うように涼しい顔で宰相の問いに素直に応じる。情報省や内務省、司法省に国防総省など大帝国全ての省庁より上位に位置する皇帝府長官を兼務する宰相のサイモンがこちらに問い掛けてくる場合、確実に裏が取れている内容しか聞いてこない。


 そのような問いに対して嘘の答えを返すということはシグマ大帝国……延いては忠誠を誓う皇帝陛下への背信行為と同義である。



(正確にはそれ以上の存在であるこの世界の神様と……なんだがね)



 だが、物事には言って良いことと悪いことが存在する。

 元日本人転生者でシグマ大帝国人であるステンであっても、相手がこの世界全体を管理する神が相手であれば只の人間でしかない皇帝や宰相とどちらを優先するべきかは自明の理だ。


 だから彼はこの世界を管理する神が存在していることを口には出さない。

 その代わり、それ以外のことについては正直に話すことを皇城に呼び出された時点で決めていたのである。



「報告では魔王領国防軍所属である上級魔族の佐官もしくは将官と聞いているが、一体何者なのだ?

 聞いたところによると例の貴族霊園と共同墓地に反魂魔法の術式を敷設したのも、この魔族の仕業であるという報告が上がって来ているが?」



 今回の騒動についてシグマ大帝国外務省が第二都市メンデルに置かれている魔王領の大使館に件の魔族軍人について問い合わせを行ったらしいが、返ってきた内容は『貴国内に赴いている魔王領の軍人は当大使館付の武官以外に存在せず、本件の魔王領国防軍人と疑われている者は該当者が見当たらない』というものだったらしい。


 そのような回答が魔王領の大使館を通じて正式に返答されてきたため、シグマ大帝国側では「魔王領の軍人を装った過激派テロリストや他の魔族国家の工作員スパイではないか?」という意見も出てきたのだという。


 しかし、国土省の魔力計が感知した反魂魔法の魔力反応の分析結果は紛れもなく高位上級魔族のものであったため、魔王領以外の魔族国家であれば王族とほぼ変わらない魔族階位にある高位上級魔族が「過激派の構成員や情報機関の工作員の可能性は考えられない」という結論に至った。


 そして、「ああでもない。 こうでもない」とシグマ大帝国政府の上層部内で意見が噴出する中、帝国中央議会の勅撰議員であるステン・トマス・ゾロトンが件の魔族軍人と接触したという報告が情報省、治安警察軍双方から上がって来たため、真意を正すため宰相直々に彼を皇城へと呼び出した次第である。



「して……彼の魔族は一体、何者なのだ?」


「件の魔族の名前は『アゼレア・フォン・クローチェ』という上級魔族です。

 20年ほど前に行方不明になっていた魔王領吸血族大公家の次女で、当時は国防省保安本部所属の魔導少将でもあった者ですね」


「ブゥッフゥーーーー!! えほっ!! ゲホゲホッ!!」



 秘書官が淹れた紅茶を飲みながら彼の話を聞いていたサイモンはステンの話を聞いた瞬間、口に含んでいた紅茶を盛大に吹き出す。驚きのあまり、口からだけではなく鼻からも紅茶を逆流させて激しく咽せていたサイモンの異変を察知した秘書官が執務室の扉を勢い良く開けて室内へ乱入して来たのだ。



「閣下! 大丈夫ですか!?」


「えほっ!! えっほ!! 何か拭くものを持て……」


「 は、はい!」



 サイモンの指示を受けた秘書官は彼の言う通りに拭くものを持って来るために秘書室へと戻って行く。因みにステン自身はさり気無く避けていたお陰で吹き出された紅茶の霧を被らずに済んでいた。



 



 ◆






「さっきの話は本当なのか? ゾロトン?」



 秘書官が持って来た布巾で吹きこぼした紅茶を拭き取りながら、先程ステンが回答した内容の真意を尋ねるサイモン。宰相本人が吹きこぼしたとものはいえ、本来ならば秘書官が拭くべきなのだろうが、普段から「自分で出来ることは自分でする」という姿勢を貫いているサイモンは秘書官から布巾を受け取って自ら汚した机や椅子を綺麗に拭きあげていた。



「はい。 全て本当のことであります。 宰相閣下」



 バレット大陸一の国土と人口を誇る大国であるシグマ大帝国の宰相が自分でやったこととはいえ、机や椅子を布巾で拭いている光景は中々にシュールだ。その様子を見て思わず苦笑してしまいそうになる己の表情筋を戒めながら、ステンは宰相であるサイモンからの質問に対して正直に答える。



「むうぅぅぅ……!!

 しかし、何故あの『赤目の煉獄』がこの帝都にいるのだ?

 ……というか、あの上級魔族は二十年ほど前に死んだと聞いているぞ?

 確実に本人なのか?」


「はい。

 私は以前、観戦武官として魔王領国防軍とその同盟軍が戦闘を行っている戦場に赴いて彼女の姿を見たことがあります。

 髪や瞳の色が当時とは少々変わっていましたが……あの魔力は間違いなくクローチェ魔導少将本人のものでした。

 念のため身分証も確認しましたが確実に本人です。 ただ……」


「ただ? 何なのだね?」


「以前見かけたときよりも魔力量が大幅に増加していました。

 それも当時とは比べものにならないほどに……」


「なんとそれは……」



 実はサイモン自身も『アゼレア・フォン・クローチェ』の姿は一度見たことがある。彼はステンとは違って魔導軍人ではなく外務省出身の元役人であったが、二十五年ほど前にシグマ大帝国の在魔王領大使館に大使として赴任していた時期がある。



(あの女魔族の将軍がこの帝都に居るだと?)



 サイモンはほんの数秒ではあったが、目を瞑って過去の記憶を辿る。

 大使として在魔王領大使館へと赴任した際、魔王以下王族や政財界の重鎮達との立食のパーティーが魔王城で開催された時に国防省及び国防軍の代表の一人として彼女の姿が会場にあった。


 魔族とはいえ女性としては中々に背が高く、軍服を着用していることもあり、女性とは思えないほどに威圧感と独特の迫力を伴っていた。宴の会場はサイモン達シグマ大帝国側を除けばその殆どが上級魔族で占められている中にあって、あの女魔族だけは他の魔族軍人達とは雰囲気が違っていた。


 

(いくらあの女将軍が上級魔族だったとはいえ、あの雰囲気は二度と味わいたくはないのう……)



 『竜に睨まれた子羊蛇に睨まれた蛙』という例えはあのような状況を言うのだろうと、当時大使だったサイモンは身をもって経験した。魔王直々に彼女のことを紹介されて、あの女将軍がこれからの魔王領国防軍を率いて行くことになるだろうという説明を受けているとき、あの血のように真っ赤な瞳に見つめられている間、彼の身体は金縛りにでもあっているかのように全く動けなかった。

 

 そして後になって彼女が魔王を遥かに超える魔力や武力を持ち、全魔族の頂点にいる存在であることと、様々な戦略級・戦術級軍用攻撃魔法やそれに相当する大規模攻撃魔法をたった一人で扱えることを知ったサイモンは当時、近衛師団魔導連隊長だったステンの観戦武官として派遣されたときに提出された報告書が真実だったことを知り、思わず胃液が逆流して吐きそうになった記憶を追い払うかのようにかぶりを振る。



(先程、ステンはあの女将軍の魔力が格段に増加している言っていたか?)



 『殲滅魔将』『赤目の煉獄』『鏖殺姫』『災厄の魔族』『冥界の姫将軍』などなど……禍々しい二つ名を幾つも与えられた魔王をも超える史上最凶・最悪の高位上級魔族。その魔族の魔力が増加した上にこの帝都に居るのだという事実に対し、シグマ大帝国宰相で元モスバーグ公爵家当主であった『サイモン・ルーファス・モスバーグ』皇帝府長官は先程飲んだ茶が胃から逆流しそうになるのを必死に抑えていた。



「信じられん。 もしこれが事実であれば、戦略級攻撃魔法をたった一人で扱える上級魔族がこの帝都にいるということであろう?

 これは速やかに陛下を避難させるべき事案ではないか……!」


「落ち着いてください。 閣下」


「これが落ち着いていられるか!

 魔王領は我が国と友好関係にあるとはいえ、事前通告も無しに国を滅ぼせる力を持った上級魔族を帝都に寄越したのだぞ!

 これは宣戦布告と同義ではないのか!?」


「確かに宰相閣下や私のように、過去クローチェ少将と会ったことがある者にとってその認識は間違っていません。

 魔王を超える力を持つ上級魔族がこの帝都に存在しているなど、悪夢以外の何者でもありますまい」



 サイモンやステンのように本物の上級魔族達と相対して彼らのことをよく知っている人間種の数はそこまで多くはない。恐らく魔王領に住んでいる人間を除くと、他国で直に上級魔族達と接したことがある人間種と言えば、サイモン達のように大使や駐在員として在魔王領の大使館や領事館に赴任した経験がある役人や駐在武官、あるいは観戦武官として魔王軍が展開している戦場に赴いたことがある軍人だけだろう。


 あとは在魔王領のギルド職員や現地に事務所を置く国際通信社の記者、魔王領と取引がある企業の社員くらいで一般の国民や役人は噂程度にしか上級魔族のことを知らない。何せ魔王や大使、総督を除けば上級魔族達が魔王領の外に出て来る機会は戦争や外交・通商交渉以外では殆ど無いため、余計に誤解された噂が先行して広がっているのが現状だ。





 そして最も有名なのは『上級は歩く災害』という噂だろう。

 実はこの噂は真実でもあり、嘘でもある。





 この噂は『上級魔族は人間種や獣人、長耳エルフ族、中・下級魔族を遥かに超える魔力と身体能力を持っている』ということから広まった話ではあるが、実は上級魔族であっても『歩く災害』の枠に入る者はごく一部に過ぎないという事実が存在していたりする。


 例え上級魔族であっても職業軍人のように本格的な戦闘訓練を受けていない者や護身用としては強力過ぎても、軍用攻撃魔法には及ばない攻撃力しか持たない上級魔族は多く、下手をすると長年野戦将校や兵士として様々な戦場を経験してきた中級魔族や変異種魔族のほうが相対的に強いという驚くべき結果があったりするのだ。


 そのため、魔族の頂点に立っていると考えられている『魔王』よりも彼の周囲を守っている護衛の中・上級魔族ほうが実は強いという事実があるのだが、これらの事実も先行する噂や固定概念の所為で未だに多くの人間種の国々において上級魔族全体が『歩く災害』として誤った認識が持たれている。


 だが、あのクローチェ少将だけは別である。

 魔王どころか吸血族の大公と淫魔族の公爵を両親に持ちながら、その2人と実の姉を合わせても及ばないほどに有り余る強大な魔力と武力をその身に宿しているなどバケモノ以外に例えようがない。


 しかも本人は実戦経験豊富な野戦将校出身の魔導将軍という絶対に敵に回したくない相手だ。ステン自身も魔導戦闘にはそれなりに自信があるが、肉弾戦のような非魔導戦闘ともなるとその戦闘力は一段落ちる。だが、あの魔導将軍はベテランの戦慣れした龍族兵士や長耳族精鋭の特殊部隊員達が束になって襲い掛かっても鼻歌交じりで返り討ちにする強さなのだ。


 時代やバレット大陸の情勢次第ではになっていた魔族なのである。サイモンが飲んでいた紅茶を思わず吹き出したのも、今こうやって自分の目の前で狼狽しきっているのも無理のない話だろう。


 その上以前よりも魔力が増加し、この世界を管理する神が後ろ盾として控え、元日本人で現在は神の末席に位置している存在と行動を共にしていると知った瞬間、ステン自身は何も聞かずに自分が経営している旅館から逃げ出したくなったほどだ。



(間違ってもサイモン宰相が榎本君とクローチェ少将の身柄を捕縛や国外退去へと動かないように誘導しなければ。

 ……でないと、この帝都が更地になってしまう)


「閣下、落ち着いてください。

 クローチェ少将はこの国を滅ぼすために来たわけではありません。

 これは不幸な事故と偶然が重なった結果なのです」


「どういうことだね?」


「実は…………」



 慌てるサイモンを宥めるためにも、ステンは肝心要な部分だけをボカして皇帝府長官を兼任する宰相を相手に一世一代の交渉を始めることを決意する。

 この帝都とそこに暮らす人々が地図から永遠に消え去らないためにも……






 ◇






「ああぁーーーっ!?」



 室内に情け無い声が響き、同時に人間が宙を舞っていた。

 声の主は文字通りの涙目になって勢い良く飛んでベッドへと荒々しく着地する……いや、落下すると言ったほうが適切だろう。



「げぼぉっ!」



 スプリングの代わりに綿がこれまでもかと詰め込まれているベッドに落下し、拍子抜けするような情け無い声を上げているのは誰であろう、榎本孝司こと俺である。


 ここはシグマ大帝国の勅撰議員であるステン・トマス・ゾロトン氏が経営している旅館の一室だ。帝都ベルサの『東区地下街特別区』に拠点を置く獣人で構成された犯罪者集団の半数をアゼレアが皆殺しにし、その見返りにと提供された旅館の部屋で寛いでいたのだが、どういうわけか俺はベッドへと投げ飛ばされて大の字に転がされている状態になっていた。



「ア、アゼレア? うぎゃあ!?」


「ウフフフフフフフッ!!」



 突然のことに訳が分からないなりに上体を起こして状況を確認しようとした瞬間、こちらに向かって跳躍してきたアゼレアが俺の腹の上に着地し、そのままの勢いで笑いながら腰を下ろす。獰猛な笑みを浮かべている彼女はまさに獲物を前にした肉食獣そのものであり、さながら自分はその獲物といったところだろう。



「な、何? 何なの一体!?」



 アゼレアの赤金色の瞳が妖しく光り、そのままこちらの目を覗き込んでくるのを見ながら自分の頭の中は突然のことにパニックを起こしていた。



(一体、アゼレアはどうしたというんだ?

 さっきまで普通に俺やイーシアさんと会話をしたいたというのに……?)



 正直、全く訳が分からない。

 少し前に斎藤さんことゾロトン議員がこの部屋から退室し、俺とアゼレアとこの世界を管理している神様であるイーシアさんの2人と1柱で議員からもたらされたリグレシア皇国の中枢にいるという日本人の情報に対してどのような対応をするかという話をしていたのだが、結局はリグレシア皇国とその支配地域に赴くか皇国の中枢に詳しい者を見つけて情報を収集するという結論に至った。



「…………もう駄目! 我慢出来ないわっ!!」


「え? アゼレア? どうした……って、…………どぅわあーーーー!?」



 ノートPCの画面に映っていたイーシアさんがフェードアウトし、電源が落ちて画面が黒くなった直後、アゼレアが息も荒くこちらの左腕をむんずと握ってきたと思ったときには俺は既に部屋のベッドに向けて投げ飛ばされていた。


 そして着地というよりは墜落といったほうが正しいくらいにベッドへと放り出された俺に、アゼレアは某三代目の大泥棒のように喜び勇んで飛び掛かってきたのである。顔を見上げると、彼女の顔は完全に上気しており、耳まで真っ赤になっている。



「フーーーッ!! フゥーーーッ!!」


(げっ!? アゼレアに牙が生えてる!!)



 正確には牙が伸びているのだが、いつもは吸血鬼然とした牙は見えていないため牙が生えているように見えるのだ。そしてその牙を覗かせた口からは荒く熱い吐息が漏れ出ており、文字通り高温の蒸気のように白い霧状になっている。



「ア、アゼレア! ぎょえぇーー!?」



 彼女を落ち着かせるために何か言葉を掛けようと思った矢先、アゼレアがこちらの首元に手を伸ばしてきたと思った瞬間、俺の着ているシャツの襟元からズボンの股にかけて右手が手刀のように一閃したかと思った直後に上から下まで綺麗に切り裂かれて閉まったのだ。



「な、な……!?」



 幸いにも下着までは切り裂かれなかったが、縦に真っ二つにされたシャツやズボンの切断面を見ると、カミソリで切られたかのように鮮やかな切り口が存在している。その余りの切れ味によく皮膚まで切られなかったものだと背中に悪寒が走り、全身の毛穴から冷や汗がブワッと吹き出てきた。



「ハァ、ハァ、ハァ、ハァ!」


「ア、アゼレア! 落ち着いて、落ち着いて!

 そうだ、深呼吸!! 深呼吸しよう!

 はい、ヒッヒッフゥー!  ヒッヒッフゥー!」


「フーーーッ! フーーーッ!」


「イヤイヤイヤ! 余計興奮してどうするのよ!?」



 アゼレアを落ち着かせようと深呼吸するように促したのに何で余計に興奮しているのだろう?

 と思っていると両手首を俺の頭の上で纏めて拘束された後、彼女の左手がこちらの下着に伸びて来て…………



「フフフッ!」


「ギャー!? やめて!! パンツはやめてぇーー!?」

 ……って言うか、アゼレアも何脱いでんのぉー!?」



 “んばっ!”っとばかりに下着を脱がして俺を真っ裸にしたアゼレアはこちらの両手を右手で抑えたまま、己の左手だけで自分が着ている制服を器用に脱ぎ始めたのである。腰に巻いていた帯革を剣吊帯で佩いでいた軍刀ごと荒々しく外し、次いで制服の上着へと手を伸ばして左手だけで全てのボタンの留めを外してしまう。



「んだぁぁぁーー!!

 女性って普通は性欲よりムードを大事にするんじゃないのかよぉー!?

 誰だぁ!? 『女性はムードを大切にする』って言ったのはぁーー!?」



 順調に制服を脱いでいくアゼレアを見て思わず自分の口から叫び声が出てしまう。以前、仕事が休みの日に偶々見たテレビのワイドショーにおいて女性の性格を特集したコーナーでは、『女性は男性と違ってムードを大切にする』と言っていたが、目の前で制服を脱いでいくアゼレアからはとてもではないがムードを大切にしている気配はない。


 どちらかと言うと、ムードよりも己の中に沸き起こった激しい性衝動に突き動かされているようにしか見えない。その証拠に今のアゼレアは吸血族の特徴とも言える牙が伸び、彼女の持つ赤金色の瞳が高輝度LEDの如く爛々と妖しく光っている。



「ウフフフフフフフフッ!!」



 制服のズボンとロングブーツを一緒に脱ぎ去り、次にネクタイ剥ぎ取ってYシャツのボタンに手を掛けるアゼレア。彼女は特撮ヒーローに出てきそうな悪の女幹部っぽい笑い声をあげ、獲物を前にした肉食獣のような獰猛な笑みを隠そうともせずに一気にYシャツのボタンの留めを外し、遂に下着だけの姿になってしまった。



「うお…………!」



 扇情的な赤い下着に包まれた双丘が姿を現す。極端に大き過ぎず、世の男どもが理想とするロケットのように突き出た胸がこれでもかと存在を強く主張している光景に、こちらの視線が釘付けにされてしまう。


 芸術の域まで達してかのような胸の谷間の曲線にみっちりとした肉が詰まっていそうな、それでもって非常に触り心地の良さそうな双丘がプルンと揺れる。固定化されて動かすのが困難な視線を頑張って下に向ければそこにあるのは引き締まったくびれと僅かに浮き出た腹筋が見える。



(うわぁ……なんじゃこりゃあ)



 アゼレアの裸は過去に一度目にしたことがある。だが、それは魔力が枯渇して雪が降りしきる中倒れていた彼女を介抱する際に濡れた制服や下着を清潔なパジャマと肌着に交換するという、所謂救護活動の一環であったため、じっくりしっぽりとは見ていない。


 しかも、あのときはアゼレア本人は魔力枯渇と寒さの影響で肌が病的に青白くなっていたため、魅力的なスタイルではあったものの、扇情的な雰囲気ではなかった……だが、今のこの状況どうだ?


 桜のように淡く桃色に色づいて上気した肌は美しく、鍛えられることで引き締まった体は健康的であるにもかかわらず、出るところは出て、絞まるところはバッチリ絞まっているお陰でむせ返りそうなほどの色香を周囲に振り撒いている。

 しかし……



(確かにエロいけど、怖ええよ!)



 獰猛過ぎる笑みに殺気さえも伴った視線は初対面の人間であれば、顔を合わせただけで回れ右して即座に逃げ出しそうなほどの迫力を全身から醸し出している。それは俺とアゼレアの関係を知らない者が見れば、文字通り俺が彼女に“喰われる”と思うのではないだろうか?



「ごめんなさいね、孝司。 本当ならば落ち着いた雰囲気でコトに臨みたかったのだけれど、地下特区での戦闘からずっと“ここ”が疼いて辛抱堪らないのよ。

 もうこれ以上抑えていたら狂ってしまいそうなの…………」



 そう言いつつ己の下腹部を摩るアゼレアはここにきて初めて辛そうな表情を見せる。

 先程までの悪役じみた怖い笑みは鳴りを潜め、代わりに気弱な女性の苦悩に満ちた顔がそこにあった。



(ああ、そうか……)



 彼女の表情を見て直ぐに理解した。

 これはストレスなのだ。


 この国はアゼレアにとって完全にアウェイな状態だ。もしかしたら何処かに彼女の知り合いがいるかもしれないが、事故が原因とはいえ、不法入国の状態ではお大手を振って会いに行くわけにはいかない。


 しかも彼女は魔王領の魔導少将で吸血族大公の娘という身分だ。只の一兵卒と違って彼女の両肩には非常に重い責任がのし掛かっている状況で、この国の治安機関に拘束でもされたら洒落にならない国際問題が発生するのは必至だろう。


 しかもなまじ国を滅ぼせるほどの武力を持っているだけに、自分の持つ力や権力で事態を解決出来ないどころか、この国の一政治家に都合の良いように利用され、本来なら殺す必要がなかった子供や女性を手に掛けてしまうことになった状況は彼女にとって相当のストレスだったに違いないのだ。


 普通の人間なら物に当たるなり暴飲暴食やふて寝、趣味に打ち込むことなどで解消される筈のストレスが彼女にとって『性欲』という形で現れてしまっているのは、恐らく淫魔族や吸血族の血がそうさせるのだろう。


 今までは将官という肩書きや世間体がその衝動を抑えていたのだが、魔王領本国から遠く離れたシグマ大帝国の帝都ベルサという環境と魔王領はおろか、この世界に何のしがらみも持たない俺が相手ということも手伝ってアゼレアの理性という箍が外れてしまったに違いない。



「ふう……」



 俺は一息ついて全身の強張りを解いてリラックスした状態で彼女の顔を見上げ、次いで彼女の顔を正面から見据えつつこちらに引き寄せる。



「……孝司?」


「辛いよなあ。 アゼレア、俺はこの世界には全くのしがらみが無い。

 だから遠慮せずにその心と身体に溜まっている鬱憤を存分にぶつけてくれ。

 俺にできるのはそれくらいしかないから……」


「…………ありがとう」



 こちらの意図を明確に読み取ったアゼレアは満面の笑みのまま自分の唇を俺の唇に重ねる。それは激しいもの……ではなく、小鳥が啄むような軽く優しい接吻だった。



「あっ、でも痛いのは止めてね?

 俺、マゾっ気は無いから」


「フフッ。 マゾっていうのが何かは知らないけれど、大丈夫。

 痛いことはしないわ」



 こちら目を見据えながら苦笑するアゼレアの表情はとても魔族の将軍には見えない、年相応の若い娘のそれであった。そして再び近付いて来る彼女の顔は今度は進路を外れて俺の首筋に到達する。


 そしていつの間に外していたのか、ブラジャーが外されることでその拘束から解放された二つの素晴らしい双丘が俺の胸板に接触して形を変える。その素晴らしくも甘美な感触によってそれまでアゼレアの纏う肉食獣のような迫力に圧されて縮こまっていた己の股間に控えている何某が一瞬で戦闘態勢を整える。



「私、初めてだけれど、凄く気持ち良くデキることだけは保証するわ。

 何たって淫魔族族長の血が流れているんですもの。

 それに吸血族族長の血も……ね」


「え!? ちょ、ちょっと待っ……アイタァァーーーーッ!!」



 驚きもそこそこにして、自分の悲鳴が部屋の中に響き渡る。

 そして俺は初めてということもあって加減を知らないアゼレアに自分のありとあらゆる体液を文字通り搾り取られる羽目になり、道路で干からびたミミズのようになった俺は三途の河を視界の端に捉えつつふとこんな思いがこみ上げてきた。



(……絶倫って何だっけ?)



 そんなしょうもないことを考えつつ、俺は気を失った。

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