No.55 「キーン」
レッドテン病院から退院し自宅に帰ってきたグレイ。その彼を運命は更に残酷に締め付ける。
その出来事の前兆は突然訪れる…。
フラッグ「ただいま、母さん。」グレイ「この人が…」フラッグ「ああ。お前の母さんだ。」
グレイの視線の先には母親、キーンがそこにいた。
記憶が無いはずのグレイには、母親のキーンが恐ろしく見えた。まるで獣が鋭い眼で睨んでいるような邪気を感じた。
キーン「…おかえりなさい。グレイ。」
恐怖を感じているからか、グレイは震えていた。
グレイ(この人がお母さん…。何だろう…少し…恐い…。)
身震いしながらも震える口元から言葉を返すグレイ。
グレイ「た、た…、ただいま戻りました…。」
キーン「…どうしたの?体が震えるいるわよ?…寒いの?」
グレイ「い、いえ…。」
キーン「燃やしてあげようか?その身体…。」
グレイ「!!?」フラッグ「母さん、いくらなんでも今の言葉は酷いよ…。冗談でもな。」キーン「アッハハハ!!本気にしないでよ、嘘に決まっているじゃない。」フラッグ「まったく…グレイは記憶障害と診断されたんだ。優しくしてくれよ…」グレイ「…………!!」
そのあまりの恐ろしい言葉にグレイは恐怖心を覚えた。
自分が何者なのか少し見えてきたということがあったからかもしれない。
この時グレイはかつての記憶を感じつつあった。
その記憶の中に恨み、憎しみ、恐怖…。様々な感情が戻ってきていたのだ。
グレイ(僕は一体…何だ…?…僕はここに本当にいたのか…?この世界に…存在していたのか…?僕は…誰なんだ……!!?)
キーン「あら、記憶障害なの?私と同じねぇ…。」
グレイ「!?」キーン「私、最近忘れっぽいのよ…。」フラッグ「…そうなのか?お前も少し休んだ方が良いんじゃないか…?」キーン「えぇ…。そうさせてもらうわ…。」
フラッグ「グレイ、今日はもう遅いから家に作り置きしてあるご飯を食べよう。父さんも今日は早く休むよ。グレイも疲れたろう、早めに休もう。」グレイ「…………。」フラッグ「グレイ?」グレイ「あ、はい…。わかりました…。」
その夜、グレイが自分の部屋に入り部屋に灯りをつけたあと、グレイは部屋の寝床で自分が何者なのか深く考えこんでいた。「……。」(…僕は…一体…誰なんだ…!?)
キーン「そう深く考える必要は無いわよ。」グレイ「!」
部屋に入ってきたのは母親のキーンだった。
グレイ「…母さん…」
キーン「…。残念だけど私、あなたの母親じゃないの。」
グレイ「…え?」キーン「私ねぇ…。グレイ…?あなたのこと…殺したいほど憎んでいるのよ。」
頭が混乱するグレイ「……え…え?…どういうことですか…?」
キーン「…あんたが私の理想をメチャクチャにしたからよ。」
グレイ「……えっ…?」
ため息をつきながら話すキーン「何で私、あんたの母親なんかに生まれ変わっちゃったのかしら…。」
キーン「グレイ…あんたは都合が良いわねぇ…。記憶障害?できれば私も記憶を無くしたいものだわ…。ホント、あんたっていつの時代でも憎たらしいのね…。」
グレイ「何を…言っているんですか…?」
ふふっと怪しく微笑むキーン。
キーン「あのねぇ…私もあなたと同じで記憶が書き換えられてないのよ。」
グレイ「…え…?」
キーン「私もあの世界で生きていたんだよ。獣たちが世界をうろめくあの醜い世界でね。」
グレイ「…え…ちょっと…何のことですか…!?」
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