第103話ハイキングきぶん

 日本の秋を思い出す紅の木々と赤土が赤壁の正体。これで、夕方になればこのエリアは平原すらも紅く染まり、クリムゾンな景色となる。その時の光景はNoahじゃハイビジョンな綺麗さもあって一時の話題にもなった。

 つまり、ここは俺たちNoah組からすると馴染み深い場所なわけだ。

 山の頂上を目指す四人の並び順は自然と決まった。

 俺、エリーちゃん、リオのねぇーちゃん、筋肉怪獣ゼウスゴン。


エリー「山田くん、近くにモンスターはいる?」


 エルフのエリーちゃんが周囲を見渡してから俺に確認を取ってくる。俺は使用中の索敵スキルに反応がないことから大丈夫と返す。


山田「ま、この辺なら敵が来ても心配ねぇし……休憩すっか!」


エリー「お昼にしない?」


リオ「さんせーっ!!」


ゼウス「お前たち三人でしろ。俺は辺りを見廻りに行く」


 ノリが悪い黒助くんは小袋をまさぐりながら木々の奥へと歩いていく。

 ゼウスの行動に若干の気まずさを抱いた女子二人に俺はフォローを入れる。


山田「気にしなくていいぞ! アイツ、たぶんヤニ吸いにいっただけだからよ!」


 ホントのところは違うけど。いや、半分はあってるか……ヤニ吸いにいくのはついで。

 アイツのことだから、女子といるのがそろそろ限界なんだろうな。


リオ「……ひょっとして、嫌われてるのかな……あたし?」


 エリーちゃんと敷物の準備をしながら、落ち込んだ声で言うリオのねぇーちゃんに俺は笑いながら否定する。


山田「あーそんなんじゃねぇよ。アイツはあんまし女とうまくいったことねぇんだ……」


 首を掻きながら、歯切れ悪く言う俺に察してくれたような感じのエリーちゃんが気を遣ってくれる。


エリー「山田くん、簡単なものだけど……」


 小袋からバスケットを取り出して、敷物の上に広げると実に食欲をそそる香ばしい匂いがした。

 中身はキレイに仕分けされており、その種類は四つ。

 たまごもしくは野菜を挟んだサンドイッチ二つ、厚みのある肉を挟んだハンバーガー、具はわからない小ぶりおむすび。


山田「ま、まさかこれは!?」


リオ「ふっふっふー! そう! エリーの手作り弁当だよ!」


エリー「なんでリオが偉そうにするのよ」


 胸を張り出した仲間にエリーちゃんは鋭い言葉をズバっと言った。ダメージ受けんのかなと思ったけど、案外ハートが強いリオのねえちゃんは横目で俺を見ながら続ける。顔がすげぇ自慢げでな。


リオ「お昼にクエストに行ったり、皆で集まってお泊りするときなんかはエリーが料理をしてくれるのです!」


山田「な、なんだってぇー⁉」


 お、お泊り会だと……つまり、パジャマとかパジャマとかパジャマとか……けしからんパジャマだな‼


リオ「さぁらぁにぃ! 私とエリーは一緒のベットで寝ました!」


山田「ふわぁーおー!」


パジャマばんざーい!! 百合ばんざーい!! ベッドばんざーい!!


エリー「ベットが足りなかったからよ……リオだけじゃなくてカエデとも寝たことあるわ」


山田「なんか、ゆりってるなクワトロ・フルール!」


エリー「山田くん、話聞いてた?」


 けしからんなぁ……この世界。

 領主×近衛、格闘ねえちゃん×エルフ。

 百合にも優しい世界か……中々、そそるわぁ。

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