第33話なまえ
ロイオ「さ、寒い……」
触手のせいで宙ぶらりんのままがくがく震えながら、なんとか声を発した。
聖騎士のスキルで冷気の波に呑まれても無傷ではあったが、氷河期の中に放り込まれたみたいに寒い。ダメージ無効でも気温は無効できないのか……普通そうだけど……期待してた俺がいる。
ねこねこ「ロイオー生きてるー?」
オブ「今助けます!」
セアラ「待て、あの悪魔がいない……」
セアラの一言に駆け寄ろうとしていた二人が止まる。
俺も宙ぶらりんになりつつも辺りを見回す。
「ここだ」
ロイオ「お、お前……いつの間に俺の上に……」
俺の足を掴んでいる触手の上に立っていた悪魔の女。下から見るとその豊満な体つきはホントにエロい。なんなら、エロの権化。
「流石に、あれほど強力な魔法を受ければただでは済まないからな。テレポートで回避させてもらった」
地雷魔法を仕掛けたはずだったが、テレポートには反応しないのか……。
ていうか、テレポートだと?
ラノベやゲームやアニメや漫画じゃ当たり前かもしれんが……。
そんなスキル、俺たちは使ったことも見たこともないぞ。
ねこねこ「テレポート……やっぱり『Noah』とは少し違う世界みたいだね」
ねこねこが思考を回している中、悪魔は足元の触手を細長い尻尾で切り落とす。
ロイオ「うおっ!?」
頭から地面に直撃。
鼻やら首やら至る所を強打して、涙目だ。
骨は折れてないはずだけど痛み耐性が皆無なので痛い。
オブ「大丈夫ですか、ロイオさん?」
心配して俺を抱え起こしてくれる優しい聖騎士。
あ、アカン。目の前でこのいい香りと端整な顔近づけられると惚れてまう。
背中越しで結構ギリギリだったのに……これはアカン。目の前のエロの権化よりこういう清純系の方が俺はグッとくる。
ロイオ「あ、ああ。大丈夫だ……それより、アイツを一発殴る」
「なぜだ?」
ロイオ「散々、俺を煽った挙句、オブを操って斬りかからせやがって……」
「それはこの城の霊のためにやったことだ」
ロイオ「勘違いに始まり、高みの見物に終わってたくせに」
ねこねこ「サキュバスのおねーさんやさしーねー」
セアラ「棒読みだな」
俺たちのやり取りを受けて、悪魔は腕を組んで触手から降りた。
地に立つとこの悪魔非常にデカい。
二メーターはないかもしれんが、その他諸々含めて色々デカい。
「だが、この城に住まう霊は仲直りしたようだ。怨念を感じられない」
ロイオ「なに? それなら、イベントが発生するはずだ」
ねこねこ「ロイオ、ここリアル。ゲームみたいにイベントシーンに切り替わったりしないよ」
「お前たちが何を言っているか分からんが……そういうことだ。わしがここに巣食うことはもうない」
どういうことだよ。絶対わかってないなこいつ。納得した風だけどぜっったい、わかってない。
オブ「……ということはここから立ち去るのですか?」
「なんだ、娘よ? わしと離れたくないのか?」
セアラ「貴様っ、図に乗るな!」
元操り人形を未だにおちょくる悪魔に憤ったセアラは悪魔に斬撃を放つ。
翼を広げて空中へと逃げた悪魔は、俺に視線を向けて得意げになった。
「人間よ、そなたがくれた呼び名をこれから我が名としよう」
ロイオ「はぁ? 名前なんて……」
記憶を遡ってみるが心当たりはない。
そんな俺を他所に、悪魔は黒翼を羽ばたかせ、高らかに声を発する。
「我が名は、ビッチ。また、いずれ会おうぞ」
・・・('Д')
ねこねこ「ロイオ、顔文字みたいな顔してるよ? いいセンスしてるってぷぷっ」
テレポートで姿を消した
その後すぐ、ねこねこが絶句している俺の顔を覗き込んで弄り始める。
……アイツはあれでいいのか……? 悪口だぞ、暴言だぞ……。
まあ、我ながら的を射た名前だとは思うが……言葉の意味をわかってないぞあれ。
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