古国の末姫と加護持ちの王
空月
第1話 闇と月光
月光に照らされた男の顔は、喜色に彩られていた。
「ああ、長かった……」
万感をこめて呟く。
「何十年も耐え続けてきたような気がするが――実際には十年足らずか。我は存外堪え性のない人間だったのかもしれぬ」
自らの足元に転がる人物の顔を覗き込む。これから自分に起こることを知らぬが故の無垢な寝顔に、歪んだ笑みを浮かべた。
「お前自身に非はない。罪もない。それは知っている――だが我にとって、お前の存在は邪魔以外の何物でもないのだ。言ってしまえば、お前の存在そのものが、罪と言えよう」
そっと、その額に浮かぶ【
「その印さえなければ、もっと長く生きられただろうに」
――……かわいそうな、我が弟よ。
囁いて、男は手筈を整えるため、その場を離れたのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます