287,東北新幹線はやて号
ということで、西方さんの本を買い、僕ら三人は仙台駅へ向かった。なんと予約した列車は僕と同じとのこと。
なお道中、神楽と西方さんが前を歩き、僕は背後に付くというぼっちならではのフォーメーションになった。決して女性二人を警護するためではない。自然な流れでそうなった。
「清川くんは何号車?」
「僕は8号車。神楽と西方さんは?」
「私たちは9号車。隣の車両ね」
「ああ、隣ですね。いいですね、グリーン車」
「乗変すれば?」
乗変は『乗車変更』の略。紙のきっぷの場合1回だけ可。モバイルなら何度でも可。
「普通車のほうが空いているみたいだからやめておく」
というのも本音。お金がないのもある。せっかく確保した最後部席を変更したくないのもある。
背面テーブルで耳障りなパソコンをやられたり、足を投げ出すクズもいる。だからグリーン車とか普通車を問わず、なるべく最後部席で、尚且つ乗車率の低い車両を選ぶ。一応スマホでグリーン車の空席状況も見たが、最後部どころか窓側、通路側とも空いている列は僅少だった。
じゃあアテンダントの監視があるグランクラスに乗れば?
という声もあるだろうが、いまの僕に仙台から東京という短い区間でそれに乗る器量はなかった。
ルールを守って、ゴミのポイ捨てなどせず、騒音も立てず、良識的に列車を利用している者が安心して旅に出れるようにしてほしい。鉄道各社への僕の願い。
一先ずホームへ上がり、列車の到着を待つ。僕らが乗る予定の列車の少し前に旧型の臨時『はやて』が来て、いくらかの客がそれに乗った。
仙台駅オリジナルの荘厳な発車メロディーが流れて列車が発車。続いて到着した新型『はやて』に僕は乗った。ときわグリーンにピンクのラインが入ったノーズの長い車両。
爽やかな外観に反して車内は暖色照明とグレーのシートで落ち着いた雰囲気。背もたれには枕が装着されている。これは上下に動かせて、好みの位置に固定できるようだ。
進行方向右側2列席の窓側はすべて埋まっているが、左側、僕の前の3列席には誰も座っていない。
良かった良かった。
発車してしばらくするときらびやかな仙台の街を抜け、暗い山中の景色が広がる。僕は車内販売のホットコーヒーを購入、パーサーさんに淹れてもらっている間に背面テーブルを展開した。砂糖、ポーションももらった。
ぼんやり景色を眺め、薄暗い
福島といえば、
仙台を発って1時間40分後、東京駅に到着した。
仙台より空気が乾いていて、ガサガサした粉っぽい空気が頬を刺した。
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