第12話 ひよこ

 凛々しい彼女がヒヨコを飼っていたとは知らなかった。彼女は笑顔で、おおきなケース内で密集している黄色いふわふわ達を指す。

「じゃあ一羽ずつ籠に入れてあげててくれる?」

 彼女はこれから雑用を片付ける。その間にやってくれと言うのだ。やることは簡単だ。ただ多いだけで。

「何羽いるの、これ」

「二十羽。籠に名前が書いてあるから、ちゃんと入れてね」

 ひろい部屋の床の一部を占拠した籠にはなるほどきちんと名札がかけられている。ジョゼフォー、メリッサ、アンダルシア、エスト…りっぱな名前が並ぶ籠だ。

 とりあえず端から攻めるかとケースを覗くとおなじ外観の二十羽がピイヨピイヨと鳴いていた。呼べば立候補くらいするだろうか。

「ええと。ジョゼフォー…?」

 ピイヨピイヨピイヨピイヨ

 一斉におなじ声で鳴かれる。わかんないっての…。

 呆然とする私に、着替えてきた彼女は笑った。

「無理?」

「無理だよ。オスメスもわからないし」

「あーやっぱり」

「いったいどこでわかるの?」

「オスメスはお尻だけど、ちゃんと違うの」

 顔つきとか足の形とか…と説明されたが私にはやはりおなじヒヨコにしか見えなかった。



 ここで目が覚めた。

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