第12話 ひよこ
凛々しい彼女がヒヨコを飼っていたとは知らなかった。彼女は笑顔で、おおきなケース内で密集している黄色いふわふわ達を指す。
「じゃあ一羽ずつ籠に入れてあげててくれる?」
彼女はこれから雑用を片付ける。その間にやってくれと言うのだ。やることは簡単だ。ただ多いだけで。
「何羽いるの、これ」
「二十羽。籠に名前が書いてあるから、ちゃんと入れてね」
ひろい部屋の床の一部を占拠した籠にはなるほどきちんと名札がかけられている。ジョゼフォー、メリッサ、アンダルシア、エスト…りっぱな名前が並ぶ籠だ。
とりあえず端から攻めるかとケースを覗くとおなじ外観の二十羽がピイヨピイヨと鳴いていた。呼べば立候補くらいするだろうか。
「ええと。ジョゼフォー…?」
ピイヨピイヨピイヨピイヨ
一斉におなじ声で鳴かれる。わかんないっての…。
呆然とする私に、着替えてきた彼女は笑った。
「無理?」
「無理だよ。オスメスもわからないし」
「あーやっぱり」
「いったいどこでわかるの?」
「オスメスはお尻だけど、ちゃんと違うの」
顔つきとか足の形とか…と説明されたが私にはやはりおなじヒヨコにしか見えなかった。
ここで目が覚めた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます