第37話 保養所

 ここ、保養所は終のすみか。

 人生のやるべきを終えたと思う人たちが元いた所を去り、ここで一部屋を拠点にして残りの時間をゆったり穏やかに過ごす。自分を含めて、誰もが気ままに過ごしている。人とフロアで話したり、食堂もあるし、散歩にも向いてる遊歩道もある。ペットも飼えるし、花壇や畑もある。

 自分は買い物を終えた足で食堂横の蕎麦屋に寄った。

 ここは元蕎麦屋店主が廊下の一角で屋台をつくり、ふるまっている。

 いつも寄るので今や常連だ。腰を下ろせばいつもの月見蕎麦を出してくれる。

 店主が言った。

「今日、新しい人が来るらしいよ」

「へえ。ひさしぶりだね。どんな人ですかね」

「さあな」

 答えるように、建物の奥から引っ越し屋のかけ声が聞こえてきた。

 右だ左だ気をつけろ…

 なかなかの大きさらしい。家具類は部屋に備え付けだから、そこにわざわざ入れるとは、今度の人は何かこだわりがあるようだ。

 なんだかにぎやかになりそうだ。


 ここで目が覚めた。

 この夢を見たのは2009年。2018年現在、こういった高齢者住宅は現存しているので、自分も住みたいものです。

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