箱の中 箱の外

 娘が朝食に目玉焼きを焼いている間、男は農業新聞を読んでいた。


 その時流していたラジオからはじめて聞く言葉がリビングに響いた。


 男は発音学の教授で、なまりが強いのではなく普段我々が使っている言葉ではないと気がついた。


 根気強く調べた結果、翻訳に成功した。


 は箱の中に生息する生命体の存在を知り、交渉を試みている。


 箱の外にいるはこちらの返事を待っている。


 しかし街の人達は誤訳だと疑っていた。


 何故なら自分たちが箱の中にいるという事実に気づいていなかったから。


 それに、四角いラジオの中から聞こえた声が「自分たちは箱の外側にいる」と言うのは、なんだかおかしな話だ。

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