第8話

 飛び交う銃弾。

 かすめる銃弾。

 命中する銃弾。

 後頭部さえも貫かれても死なない身体。


「痛い……痛いよ」


 ボクは、頭を押さえる。

 ただ声を小さくして涙を流す。


 やがて銃弾が止まる。

 苦痛から逃れれる。

 そう思った。


 しかし、外は騒がしい。


 ボクは恐る恐る銃弾によって空けられた穴から外を覗く。

 するとそこにいたのは、狼だった。

 二足歩行で歩く狼。

 身体はまるで霧のように透けていた。


「コイツもしかしてゲルンガじゃないのか?」


 銃を持った男がひとりそういって笑う。


「なにがおかしい?」


 ゲルンガと呼ばれる狼がその男を睨む。


「だってお前を殺せば――」


 男はその言葉を放つことなく首と胴体が離れ離れになった。


「我を殺すか……

 しかし、できなかったようだな愚かき者よ」


 他の男達が一斉にゲルンガの方に向けて銃を放つ。

 しかし銃弾は、ゲルンガの身体をすり抜けていた。


「銃が効いていない?」


 男たちが怯える。


「怯むな!撃ち殺せ。

 的を撃ってレベルが上った俺らに敵はいないはずだ!」


 男たちは、めげずに銃を放つ。


「本当に愚かなものだな」


 ゲルンガが腕を振り上げそして振り下ろす。

 するとゲルンガの腕から紫色の霧が男たちを包み込む

 男たちが苦しみだし、そのまま動かなくなった。

 絶命する。


 ゲルンガは、ボクの方を見る。

 そしてゆっくり近づいてくる。

 なにをされるかわからない。

 ボクは、馬車から飛び降りる。


 馬車から離れる際、見てしまった。

 銃で蜂の巣にされた運転手。

 そして、転がる首に苦しみ死んだ男たちの姿を……


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