ひらがなてんせい
鋼野タケシ
ぶらり いせかい ふたりたび。
1 ひらがなてんせい
てんごくも じごくも しんじない
ましてや りんねてんせい だとか
いせかいてんせい だなんて
ばかばかしくて わらってしまう
それなのに
どうしてだろう
どうしても
みとめたくないけれど
どうやら ほんとうに
ぼくは
しんでしまった
らしい
そして いわゆる
いせかいてんせいを なしとげた
らしい
らしい というのは
こうして しんだぼくが
あたらしいすがたで
いしきが のこっているから
そう おもっただけで
ちょっと かくしんはない
かくしんは ないけれど
ぼくの いまの すがたは
ごらんのとおり ひらがな なのだ
◇◇◇
なにか きごうが でたぞ
そうか ばめんてんかんするとでる きごうか
ということは いま
ばめんが きりかわったんだな
しかし どうやって ぼくは しんだのだろう
どうせ とらっくに はねられたのだろうけど
いまいち おもいだせない
ああ ぼくは しぬんだな
なんだか そうおもったのは おぼえている
まぶしいひかりに つつまれて
きづけば ぼくは みしらぬばしょで
こうして ひらがなに なっていた
せいぜんの ぼくは
というか しぬまえの ぼくは
しょうせつか だった
ちょっと みえをはったが ぷろではない
いわゆる わなび だった
わなび しっているだろうか
しょうせつか とか しなりおらいたー として
ぷろをめざすひとを ひにくる いいかた
えいごの うぉんと とぅ びー
りゃくして わなびー と いう らしいけど
それから とって わなび だ
あのころのぼくは
ひとかどの しょうせつかになって
なおきしょう とか あくたがわしょう とか
なにか そういう ものを とるつもりだった
ゆめなかばで いのちをおとして
なんのいんがか えん なのか
ぼくは こうして ひらがなに なってしまった
それにしても それにしても
ここは まっしろで なにも ないところだ
これは もしかして はくし なのだろうか
ぼくは はくしのせかいに
ひらがなとして てんせいしたのだろうか
ああ しかし まいったな
ひらがな だけだと
いいたいこと つたえたいことが
とても いいにくい
かんじも かたかなも つかえない
かんたんふ ぎもんふ くとうてん これもない
いまの ぼくは ひらがなだから
ひらがなしか きざめない
しねば なにも もっていけないと
えらいひとは いっていた
ざいさん とか めいよ とか
そういうはなしと おもっていたけど
ことばまで うばわれるとは おもわなかった
でも ひらがなの ぼくが
こうして はいまわれば
はくしのなかに ぶんしょうが うまれる
ぶんしょうを のこしつづければ
この はくしにも
ものがたりが うまれるはずだ
ぼくは しんでも
ふでをおらない つもりで いきてきた
あいにく しんでしまったけれど
こうして ひらがなとして てんせいしたのは
きっと しんでも しょうせつかとして
ものがたりを のこせという
かみさまの いし だろう
ひらがなに うまれかわったのなら
ひらきなおって
ひらがなとして
ひらがならしく
このはくしに ものがたりを しるそう
ひらがなてんせいの はじまりだ
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