5「ありきたりな回想シーン」

「片付いたぁ!!」


 なんやかんやあってようやく男性の部屋が片付き、一段落していた。

 部屋はルーシアが来たばかりの時とは全くもって違い、美しくて何もかもが整理されており、この家の外観からは想像もできないような部屋となっている。


「助かったよ。ありがとう」


「驚いた。あなたの口からお礼の言葉が出るなんてね」


「流石にお礼ぐらいはするさぁ。無礼な人間は肌荒れが進行するって俺のひいじいちゃんが言ってたなぁ⋯⋯」


 いや、絶対嘘だろ。無礼と肌荒れのどの部分が関係してるのか? ていうかひいじいちゃんもひいじいちゃんだわ。ルーシアはあえて口には出さないでいた。


「さてと⋯⋯。そろそろ俺が剛林 亜蓮だってことが証明できたかな?」


「あなたは一体どの場面で自分の証明をしたつもりなのよ! 私はあなたを剛林 亜蓮だとは認めてないんだからね!!」


 ルーシアは背伸びをしてさらに威嚇しようと試みたが、男性の方が圧倒的に背が高いので全く意味が無い。


「そんなこと言ってぇー。どーせ意地はってるだけのくせにぃー」


 男性はしゃがみ、ルーシアの顎を中指で持ち上げた。いわゆる顎クイのようなものである。


「⋯⋯何をしているのかしら? また機関銃で殺されたくなかったら早急に私の顎を持ち上げている中指をどかすかちょん切るかしなさい」


「あの弾なし機関銃で?」


「⋯⋯っ」


「そんな弾なし機関銃じゃあ俺は殺せないなぁー。⋯⋯その機関銃って物しか壊せないようになってんだろ?」


 ルーシアは絶望した。まさかこの機関銃の仕組みがバレてしまうなんて。バレなければ一種の脅し道具となっていたのに。

 この男はただ者ではないと推測できる。


「まぁこんなことをしても証明なんかにはならないよな」


 男性はそそくさと顎クイてきなやつをやめて、自分の髪の毛を指に絡めてくるくるしながら眼鏡をクイクイする。


「⋯⋯さてと。こっからが本番だ。いまから本気で証明を始めようか! 覚悟を決めてくれ」


 今までのはやはりおふざけだったのか!

 ルーシアはそう思ったがふと頭によぎるものもある。


「⋯⋯多分この男の事だからどーせまたザ・ウザイで賞をとるような行動をするに違いないわ」



 さぁこのくそ眼鏡はザ・ウザイで賞にノミネートされるのか?



「はい」


 男は押入れをあける。すると──




「は?」



 中から大量に何かが⋯⋯



 イセカイセキ──




 異世界石、異世界石、異世界石! 異世界石? 異世界石、異世界石、異世界石! 異世界石? 異世界石──




「いせかいせきぃ??」


 しかも一つじゃない。ざっと四億はある。

 なんでこの男は異世界石を持っている??


「な、な、なんでぃえ、あ、あんたゃぎゃ、あ、あ」


「どうした? 舌が回ってないじゃないか」




 いや、誰のせいだよ。




「ごほん⋯⋯。えーなんであなたが異世界石を持ってるの? そこんとこ詳しくかつ的確に解答して頂きたいのですが」


「えーと、なんか公園の砂場で遊んでたら大量に出てきたんだけど。異世界石って書いてあったけど意味分かんないから一応持っといた」


 ホワッツ? ユーアーアースピーポー??

 なんで? なんで? なんで? なんで? なんで? なんで? なんで? なんで? なんで? なんで??


「⋯⋯えーと、さっきから言ってるけど嘘は良くないわよ。ちゃんと本当のこと言ってくれる? はは⋯⋯」


「アニメなんかではこういう時によくある回想シーンを用いるものだが俺はありきたりが嫌いなもんで」


「いや、別に回想しなくても⋯⋯」


「アニメでの回想シーンは主人公やヒロイン目線で進んでいくけどここはその異世界石目線で回想していこうではないか」


 いや、異世界石目線て何?


 「じゃあ回想始めまーす」


 「回想シーンはそんな始まり方しないわよ!!」




 でも回想シーンが始まる。


 ──異世界石目線で。

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