第2話

「よお、G.久しぶりだな」


「何があったんですか?」


「記憶を抜き出して欲しい」


Rの言っていることは、すぐに理解した。


私は人間の脳内にある記憶を、特殊なコンピューターにメモリーする研究を続けている。


自分で言うのもなんだが、その道においては世界一であると自負している。


そしてここは秘密の軍事関係施設であり、そのコンピューターが常設しているのだ。


となれば、記憶を抜き出すのは敵対国のエージェントか拘束したどこかのテロリストか。


どちらにしても、ろくでもない奴だ。


人間の脳から無理やり記憶を抜き出すと、相手は間違いなく記憶喪失になる。


その上に、人格障害を起こす可能性が高い。


可能性が高いというよりも、人格障害にならない可能性は、ほぼゼロである。


そうなってしまえばその人物は廃人同様となり、まともなコミュニケーションをとることもできずに、死ぬまで精神病院で暮らすことになるのだ。


だが相手がわが国に害をなすエージェントやテロリストならば、私の良心も痛まないというものだ。


「で、抜き出す奴は、何処にいます?」


「こっちだ」


Rが奥に向かう。


この先にコンピューターがあるからそこに行くのだろう。


私はそう思っていたが、Rはコンピューター室の前を通り過ぎ、更に先へと進んで行った。

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