第1章-15 最初で最後の夜

夜…

温泉の帰り道、手を繋いで歩いた



カズは昼間とは別人のように口数が少なくなった




ペンションに着いて、部屋に入るとカズは私の手を引いてソファに座らせた


彼はその前にしゃがみ、両手をぎゅっと握りしめて上目遣いでしっかりと見つめた




「ノン、俺はノンが欲しいよ。

ずっと、抱きしめたかった。

でも、本当にそれでいいのか?

もう……会えないかもしれない俺と…。

後悔しないか?」



私は手を離し、カズの髪を撫でながら言った



「このまま、別れたら、もっと後悔するよ。私は大丈夫。

カズが思ってるほど…弱くないよ。


カズに……愛してほしいの」




「わかった」





彼は私を抱き上げて、静かにベットにおろした

……と思うと少し焦ったように跨がり上から見下ろす



「ノン……俺、優しく、出来ないかも」


その途端、彼の中で何かが壊れたように荒々しいキスが始まった


強引に舌を絡め、唇を貪るような…。


息が苦しくなる



「んんっ、ふっ」


「ごめん、俺、余裕ねぇな」


切なそうに呟いた。

それでも、動きを止めることなく、唇が徐々に下へ降りてくる





カズの

強引なキス

優しいキス、

深いキスが私の身体中に覚えておいてと言わんばかりに続く




私は意識が遠のくほどの感覚にたまらなくなってた



彼の指が一番敏感なところに触れた時、もう恥ずかしい程に溢れてた




「ノン……」


「やっ、恥ず…か…しいよ」



カズはさっきまでの動きとは違い、優しくそこに触れる



「あっ、もう」


「俺も…無理だわ。

……いい?」



私が頷くと彼は静かに、そして、次第に深く激しく




「のぞ…み、ハァ……

俺の……名前も……呼んで」



「カズ…キ」



周りの友達は "ノン” "カズ” としか呼ばなかった



二人だけの呼び方

特別な人だけの呼び方




泣いたらダメと我慢しても止まらない涙




「カズキ…好き」


「んっ」


「大好き」


「カズ…」


「のぞみ、もうわかった、わかったから

泣くな」




やっと愛し合えたのに……



逞しい腕、

泣きボクロ、

柔らかい頬、

固い髪、

何もかもカズのすべてを忘れないように何度も抱き合った




額に涙がポタポタと落ちてくる



「カズも…泣いてるよ」



「泣いて…ないよ」




カズは泣き顔を隠そうとして、私を包み込むように抱きしめた



強く、強く抱きしめた




二人の少し早い鼓動が不規則に響きあってた




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