第1章-6 優しい時間
リュウとの時間は穏やかに流れた
私達は会える時は少しでも会うようにした
隙間をあけてしまうと自分達にもわからない何かに押し潰されそうな気がしてたから
「ノンー、リュウとは仲良くしてるのー?」
同期のユイは何でも言い合える間柄
リュウのことも…カズのことも。
「うん」
「幸せそうねぇ。良かったよ
っで、もうしたの?」
「ん?何を?」
「何を?って、ひょっとしてまだなの?」
「まだって…あー、う、うん」
「そりゃあ、リュウ、可哀想だよ~。
あんまり、おあずけにしてるといくら優しいリュウでも浮気しちゃうよ」
「リュウはぜーったい、そんなことしないよ」
自信満々に言いながらも、少し不安になってた
なんとなぁーく、そんな雰囲気になったことだってあった。でも、リュウは無理しなくていいからって、いつも、言ってくれる……きっと、我慢させてるのかもしれない
秋になると、
大学はあちらこちらで、学園祭の準備が始まる
夜遅くまで残り、それぞれの模擬店の看板を作ったり、飾りつけをしたり。
大変だけど楽しい時間だった
「ノン、帰ろっか!」
大学の近くでひとり暮らしをしていたリュウだったけど、いつも私を家まで送ってくれた
帰り道、リュウが何やら言いにくそうにポツリポツリと話し出した
「ノン……明日さっ、学園祭じゃん?」
「うん、そうだねぇ」
「……打ち上げ行くだろ?」
「行くよー」
「……じゃさぁ、結構遅くなるじゃん?
……っで、そしたらさっ…………
俺んとこ、泊まらない?」
「ぷっ、リュウ~(笑)」
「何だよー!笑うとこじゃないだろ」
あまりにも辿々しく恥ずかしそうに話すリュウに思わず笑ってしまった
「ごめん、ごめん、だって、リュウがぁー
怒らないでよー。
うーん……わかった。家にはユイのところに泊まるって言うね」
「ほんとに!っしゃー!!」
顔をクシャクシャにして笑った彼
嬉しそうにガッツポーズしてる
ほんと、純粋で気持ちが真っ直ぐに態度に出る人
「そんなに嬉しいの(笑)」
「当たり前だろ」
余裕ぶってた私だけど内心は胸のドキドキがリュウに聞こえるんじゃないかと気が気じゃなかった
学園祭当日
私は今夜のことを考えて落ち着かなかった
模擬店の片付けも終わり、近くの店で打ち上げが始まった
「なぁーんか、リュウ、今日はおとなしいねぇ」
ユイがイタズラっぽく言うと急に焦り出すリュウ
「そ、そんなことないよ」
そんなリュウをカズはチラっと見たかのように見えたが、すぐに後輩の女の子達と盛り上がってた
「ノン、帰ろっ」
「うん」
打ち上げが終わりリュウの部屋に向かった
街頭だけが灯る静かな住宅街
他愛もない話をしながら、手を繋いで歩いた
私は大きくてあったかいリュウの手が大好きだった
この手に包まれてるとすべてのことから守られてる気がした
彼の優しくて真っ直ぐな思いが伝わってくる
緊張と幸せといろんな気持ちが入り交じって……夢の中を歩いているような不思議な感覚だった
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