身の覚えの無い妹が出来てしまった。しかも、誰も存在を認知できないんだから驚きだ!いやーどうしよう、HAHAHAHAHA!!・・・どーすんのよ、マジで・・・。
52.外に出ると、そこには、乗降車したり、買い物をするため行き来する人々、車を誘導する警備員等、いつものイオンの風景が広がっていた。
52.外に出ると、そこには、乗降車したり、買い物をするため行き来する人々、車を誘導する警備員等、いつものイオンの風景が広がっていた。
「なっ・・・!?」
僕らはイオンの店内を見る。
そこにも、ただ買い物客と店員が行き来している、いつものイオンの光景があるばかりだ。
「あれっ?」
僕は困惑した。二人も困惑している様だ。
「あのゴーレム達はどこに行ったの・・・?」
「私達、今まであいつらに追いかけられていたはずですよね。」
あの下手すれば命失う非日常から急にいつもの日常に戻って、ただただ混乱している。
もう一度店内に戻って、ゴーレムが居ないか確めようと思ったが、また襲われても敵わないので、止めた。
「・・・ともかく、危機は去ったと考えても良いのかな・・・?」
「・・・ええ・・・どうでしょうね・・・。」
「まだ警戒はすべきと思うけど・・・」
三人で、どうしたものかと顔を見合わせた。
とりあえず、このイオンは危険だろうから、この場を去る事にした。
「えっと・・・どうしよう・・・。このオモチャ銃・・・買ってない物を持って来ちゃった・・・いけないよね・・・。でも、持ってないと、またゴーレムに襲われても、戦えないし・・・」
自称妹は握っているオモチャ銃を見て、迷った様に僕に聞いた。
そうなのだ。一応、店内でお金払わず持ってきた物なのだ。
「うーん、このまま持ち帰ったら、私達、泥棒になっちゃいますよね」
困った。困ったのだが。
「のぼり旗とオモチャ銃は持ち帰る事にしよう。返したいのはやまやまだけど、店内に入る訳にもいかない。それに二人が持ってしまっているという事は、もう周りの人からは見えない存在になってると思う。
あれだけ、僕らが暴れたりゴーレムが踏み潰したりして、店内が散々散らかしたのに、ここから見る店内は、散らかした跡が全く無い。
君達とあのゴーレムに関する事は、綺麗さっぱり、普通の人の世界に認知されてない。
だから、多分、『あの状態の店内』の物と今の店内の物は無関係だよ。
お店の人には迷惑はかかってないさ。多分」
「・・・そうですか・・・そうですね。じゃあ、こののぼり旗は拝借させて頂きます。
家につくまで身を守る物は必要ですから」
「うん・・・。そうしないと、また、私達襲われたら、何も出来ないしね」
二人はうんうんと頷いた。
「・・・でも、カートは返しておこうか。これまで持っていくのは何か悪い気がする。
カートが無くなった代わりに、僕が家までおぶって行くよ。」
僕がそう言うと自称従兄弟は顔をパアアと輝かせ、
「本当ですか!!
じゃあ、お姫様抱っこでお願いします!
さっきの約束です!」
と、カートから身を乗り出し、僕に抱きついた。
「あー!ずるーい!!っていうか、約束って何!?」
話のかやの外に居る自称妹は頬をぷりぷり膨らませて怒った。
「いや・・・そのだな・・・
「さっき、ゴーレムと戦っていた時、この戦いが終わったらお姫様抱っこしてと約束していたんですよ!」
ふんすと鼻を鳴らしてドヤ顔になる自称従兄弟。
「んもー・・・
・・・まっ、仕方ないか。千歳さんは、今、歩けないもんね。仕方ない仕方ない。」
自称妹は少し納得いかなさそうな顔をしながら、渋々受け入れてくれた。
「すまんな。千尋ちゃん。」
一応謝る。
しかし、まあ、全くもって僕はモテモテである。こんなしょーもない事で、このうら若き乙女達は一喜一憂している。
いつからリア充になったんだか。
「いいよ、お兄ちゃん。・・・でも、後で、私も・・・その・・・千歳さんみたいな事してね!」
と自称妹は吹っ切れた様ににっこり笑った。
「ああ、勿論だ。」
僕が快諾すると
「やったー!」
と喜んだ。
「千尋さん、お兄さん、お借りしますね」
「ちゃんと返してね」
「ええっと・・・はい・・・?」
「何で、そこで、返事に困るのさ!」
と自称妹は自称従兄弟の頭にチョップをした。
女子学生が戯れてる姿は尊いねえ。
「では、お兄さん!」
くるん、と自称従兄弟は僕の方を向いて、そして、僕の目を見据えた。
「自宅まで、運んで下さいね。ちゃんと、お姫様の様に。」
自称従兄弟は笑っている。笑っているが、顔が真っ赤だ。
あっ・・・照れてるのか・・・。
「うん、分かった。しっかり捕まっててくれよな。」
と僕は自称従兄弟を抱っこすると、
自称従兄弟は「えへへ」と微笑んだ。
その後、カートを返して、自称従兄弟をお姫様抱っこしつつ帰った。
帰路の際、ゴーレムが出る事は無かった。
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