16.スーパーで肉や野菜等を買ってきて帰ってきたのだった。

「まっててね。今作るね」自称妹はエプロン(僕に見覚えが無いが何故か家に掛けていた)をして台所に向かった。


さて、非常に摩訶不思議な事が目の前で起きているが状況を整理しよう。


まずこの僕の妹を自称するガキンチョ。存在そのものが他人には見えない様で僕には見える。


しかも僕の妹と本気で思っているらしい。


後、自称妹は僕と同居していたらしく、自称妹にまつわるもの(今着ているエプロンや初日のカレーを作っていた時の僕の物ではない鍋)は勝手に「有ったもの」として存在する事。


後、年の割りに相当ポンコツである事。


そうこう頭をうんうん唸らせていると


「出来たよー。お兄ちゃん」


と自称妹はキッチンからひょっこり頭を出した。


「ふふふ、今日はオムライスだよ。ふふふ。・・・本当はもう少し凝ったもの作りたかったけど、時間が無いから・・・。はい、食べて食べて」


狭い部屋のちゃぶ台の上に多目に盛られたオムライスと小盛りのオムライスが並べられる。


見るからに卵焼きがふわふわと柔らかそうだった。


ちょうど腹が減っていたので、その匂いと見た目は、僕の胃袋は魅了されてしまったのだった。


「どしたの?食べないの?」


自称妹は首を傾げながら僕を見る。


「・・・もしかして、疑ってる?変なのとか入れてないから。ほらっ」


自称妹は自分の小盛りの皿のオムライスを食べてみせた。


「どう?大丈夫でしょ?」口をもごもごさせながら自称妹は言う。


「・・・・・・」


僕はこの怪しいオムライスを食べるか食べまいか。


普段なら絶対食べないが、腹が減って仕方がなかった。胃袋には逆らえない。


「・・・むぅー、これならどうかな?」


はむっと、自称妹は僕のオムライスにスプーンで掬って食べてみせた。


「ほらっ、大丈夫でしょー?」


またも自称妹は口をもごもごさせながら言った。


何か毒が入って無い事は分かった。分かったが、仮にこのオムライスを食べたら間接キスになるじゃないか。


何ともまあ、鈍感な。


ある性癖の人々からすれば、こんなうら若き乙女との間接キスなんて、金払ってまで受けたいサービスだろうな。


まあ、目の前の、この子はどうもドン臭くて、そういう目に見えないタイプなのだけど。


「・・・食べないの・・・?」


自称妹は悲しそうな視線で僕を見た。


ヤバい。機嫌を損ねて、先みたいに家から飛び出されたら敵わんぞ。


ええい、ままよ!。


「はいはい、食べるよ。戴きます。」


僕は意を決して、自称妹の食べた後が残るオムライスを口にした。





「・・・えと。・・・お味はどうかな?」


・・・・・・お味は、結論から言うとゲキ旨だった。空腹がスパイスになってるにせよゲキ旨だ。


「・・・旨いかな。うん。旨い。」


僕は鳴り響く舌太鼓を抑え、押さえ付けて、平静を努めて言った。


こういうどこぞの馬の骨か分からない奴を調子づかせてはならない。


すると


「え、えへへへへ~。そう~?。そうでしょう~。えっへへへへへ~。」


と自称妹は顔をこれでもかってぐらい破顔した。


「お代わりもあるからね~。いっぱい食べてねー、いっぱ・・・」


ころころ微笑んでいた顔を急に硬直し、僕と、そして自身のスプーンを見つめる自称妹。


「あ・・・ああ・・・」


顔をぼっと赤らめ始めた。どうやらようやく僕に自分が間接キスをさせた事にきづいたらしい。


そんな反応をしたら僕まで恥ずかしくなるじゃないか。


気まずい空気が漂いながら、久々に誰かが作った料理を腹に収めたのだった。


こんな所だ。


考えれば考える程訳が解らない

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