第8集 おさまってない

「おさまってない」


ポケットにもぐって暖をとっていた両手おのずと出てくる春は


メニューとはちがう気がする春野菜パスタ見比べあきらめがつく


見本より色あせているパスタだが味はおおむね差し支えない


この人にも家族があるんだろうなあと想像させる顔の店員


無着色ながら真っ赤なケチャップをつけてポテトを無意識に食う


耐えているみたいな顔の男から目をそらす、また見る、耐えている


支払いを終えたら外の強風がおさまって、いや、おさまってない


均等な間隔をおいて植えられた黄色や赤に将来はある


若者の味方だという顔がもうしんどくなって背中が痛い


見通しのよい地点から沈む陽を見ていたずっとこうしたかった

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