足が冷たい。

 とても怖いから、言葉を吐かせて。

 アラームを聞いてから、悪い想像ばかりしてしまうの。なぜか、地震ではなくミサイルが降ってくるっていうもの。カーテンを全て締め、扉を閉じて、毛布を被り、うずくまる。覚えた。他には、何をすればいいのか知らないから、この想像は、ここまで。

 次のシーンは体育館。避難所。私は、中央で人々に呼びかけている。出来るだけ多くの人とコミュニケーションを取るべきだと。不安はここにいる私たちだけではなく、外にいるものにもあるから。気持ちを伝え、同じだと共感し合い、安心し合おうと。中には家族と会えない人がいるのかもしれないから。友人かもしれないし、ペットかもしれないけどね。みんな不安で、怒りが湧いているの。怖くて、どうすればいいのかわからなくて、寂しいんだ……。だからこそ、話すべきだと思う。だからこそ、伝えるべきだと思う。何が必要なのか、どういう人がいるのか、何が起こっているのか、出来るだけ多くの人に伝えるべきなんだ。そうしたら、ここにいない人も、知れる。助けられることも浮かぶから。

 と、言うの。そうしたら急に、日本語を知らない人もきっといると、思い出したの。だから、もう一度同じことを英語で言った。二人の観光客が私に話しかけてきた。軽く話すと、泣いている小さい女の子がいたから、リュックに詰め込んだぬいぐるみを一つ、あげた。中国人もいた。英語を少しだけ話せる人だった。体育館の中で話せる人を探したのだけど、誰もいなくて、私は頑張って知っている単語を全て使って会話した。アイさんって名前だった。素敵な名前だと、言ってあげた。

 ここまで考えて、怖くなったからやめた。どうしてこんなことが浮かんだんだろうね。必要のない不安が押し寄せてしまったんだろうね。怖い。想像力が豊かな証だと考えれば、なんだか私すげーってなるね。駄目だ。怖い。けど少し、落ち着いてきた。ふぅ……大丈夫。大丈夫。大丈夫。

 よしっ、ちょっと寝てみる。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る