転生回帰 ~異世界人が現代日本へ転生したのに未来のもといた世界に飛ばされた!?~

もりもりベース

第0章 終わりと始まり

1話 プロローグ転生前


 人はいつか死ぬ、それは当たり前のことだ。

 人の身でありながらこの世の理……魔法を極め、さまざまな種族の者達から神とまで崇められたこの私でさえも……当然に。


「ゼェ……ゼェ、私も……ここまでか……」


 私の名はインフィニティ。この剣と魔法の世界『アステリム』で魔法の真髄まで辿り着いた唯一の存在だ。

 そんな私を人々は敬意を込め“魔法神まほうしん”と呼ぶ。


 魔法を極めてからかれこれ2000年近くは生きただろうか。

 通常は100年近くまでしか生きられない人の身ではあるが、魔法の力によって長く寿命を遅らせることで今まで生きながらえることができた。


「魔法神様! どうか死なないでください!」


 周囲を見渡せばそこにいるのは……獣人族、エルフ族、ドワーフ族、魔族、精霊族、龍族など、私がこれまでの人生の中で出会い、心を通わせた多くの種族の仲間達がこのおいぼれの最期を看取りに集まってくれていた。


 目を閉じれば一人ひとりとの思い出がまるで昨日のことのように蘇ってくる。なるほど、これが走馬灯というやつか……どうやらこの命も本当にここまでのようだな。


「皆……悲しまないでくれ、私は自分の人生に満足しておる。皆と出会えたこと、旅をしたこと、そして世界の常識を覆すほどの偉業を成し遂げたこと……。そのすべてが、私にとって大切な思い出なのだ……ゴホッ」


 そう、今こうしてさまざまな種族がここに集まっていることこそ私がこの一生をかけて成し遂げたことの証と言えるだろう。


 時には種族間の争いを鎮め、またある時は世界を統一し、果てには天地を揺るがす災害さえも皆で協力し合い食い止たこともあった。

 そうして私達が創りあげた平和な世界……それをを見れただけでも私は満足だ。

 すでにこの世に未練はない……。


(だが……そう、ただ一つ……ひとつだけ心残りがあると言えるならば……)


「うう……この世界の人々を導くあなた様が死んでしまったら、我々はこの先どう生きていけばよいのですか!」


 私の意識も朦朧もうろうとしてくる中、仲間達の輪の中から一人の人族の男が私の側に来て語りかける。

 この男は……古くから私に使えてくれた私の弟子の一人であるサイモンだ。


「大丈夫だサイモン……昔あれだけいがみ合っていた数多あまたの種族が今こうして分かり合い争うことなく暮らしているのだ。お前達ならばこの先の世も協力し合い、この世界を末永く平和にできる……私はそう信じているよ」


「ですがっ!」


 サイモンがそれでもと体を乗り出す……がしかし、その後ろから巨大なドラゴンが現れ、その大きな腕でサイモンの体を静止させる。

 こいつは昔私が拾った小さな龍族だったが、今では一番付き合いの長い友人であるドラゴスという男だ。


「その辺にしておけ。こいつは今までずっと頑張ってきたんだ。もう、眠らせてやろう……」


 流石我が親友、私の事をよく理解してくれている。


 そして、そのドラゴスの言葉に同調するように辺りが静まり返っていく……。ああ、どうやら他の皆もわかってくれたみたいだ。


「皆、どうか私が死んでも……いつまでもこの平和な世界を守り続けてくれ……」


「わかりました魔法神様……。必ず……必ずや我々があなた様の意思を継ぎ、世界の平穏を永久とわのものといたします!」


 そんな涙でグシャグシャになったサイモンのその言葉を聞き、私は安心して眠りについた。

 そう、二度と覚めることのない永遠の眠りに……。


(ああ……でもやっぱり、お嫁さんが……生涯の伴侶という存在が、欲しかったなぁ……)







 そう、私は生まれてこの方"恋"というものをしたことがなかったのだ。

 若い頃は魔法の研究に明け暮れ、魔法を極めた時にはもう500歳! その期間ずっと地下に潜っていたら、地上にあった村は跡形もなくなっていた。

 その後、見解を広めようと村の外に出てみたわいいものの、黒ずくめの格好のせいで暗殺者に間違えられたり、あちこちで種族間の戦争に巻き込まれたりと、どったんばったん大騒ぎでそれどころじゃありゃしない。


 ……で、そんなことを何十年何百年と繰り返してくうちに気づけばあら不思議、私はヨボヨボのジジイに成り果てていましたとさ。

 しかし、そんな私とは裏腹に周りの者達は紛争や旅の途中の中でいつの間にか男女の仲を深め子供も沢山作っていた。

 なので完全に一人取り残された私は、割りきって周りの皆を家族と思い優しいお爺ちゃんになることでその寂しさを埋めようと決心したのである。


(だけど、やっぱり周りで仲良くイチャつかれると羨ましく思うんだよ……チクショウ)


 と、人生の最後だというのにそんなことを考えながら私の意識は深く暗い死の闇へと落ちていく……。



 ……が、そんな最後の意識が消えると感じた次の瞬間! 突如目の前に眩しい光にが現れ、導かれるままに私の意識は光の中に包まれていった!


(うお眩し! 一体何が!?)


 突然の出来事に驚くが、一瞬の出来事に考える暇も無く私の意識は……一旦そこで途切れるのであった。


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