第61話 拷問
「うぁぁあああああ!?!?!?がっ…あぁ…!ハァ…ハァ…」
「耐えるねぇ… ほら本当はできるんだろう?協力してくれよ」
ガシャン
「あぁぁ!?うぁぁぁぁぁあ!?…ハァ…」
クソ… 遊んでくれるな…。
あれから何度も何度も電気ショックを食らっている、今に心停止するんじゃないかというくらい電流を流された、レベルはいくつだったか。
あぁクソ… わかんねぇや…。
「ほらどうした~?死んでしまうぞぉ?野生開放しろよ?少しは楽になると思うよ?フレンズは頑丈なんだから」
ガシャン
「あぁぁぁぁあああああああ!!!!」
「フム… 死なれては困るんだがなぁ… 君はあれかな?肉体的苦痛では危機感がまだ足りないタイプかな?」
後で知ったことだが、レベル5だそうだ。
何度も何度も何度も何度も、電流が体を駆け巡りその度に体は跳ね、痛みを伴い… 断末魔のような叫びをあげた。
「ハァ…ハァ…ハァ…」
「強情だねぇ、なぜそこまで頑なに野生開放を拒むのかなぁ?仕方ない、レベルを上げてくれ」
ここに来てレベルアップかよ!?冗談じゃない、冗談じゃないが俺は死なないからな!
これは強気になって気合いを見せつけているというわけではない、今となっては不確定になったが、かばんちゃんの予知を別の観点で見たとき… 俺は野生開放するまでこの状況に耐えられるということだ。
彼女の予知通りにするには“彼女”が必要不可欠だが、こうしてる間にもゴコク行きの準備が進んでいるはずだ、彼女はここには現れない… あとは心置きなく拷問に耐え抜き父さん達の到着を待てばいい。
俺はただでは済まないが家族は助かる、連中の対策も今後ガッチリとれる、実質これが一番なんだ…。
耐えてやる…!
やつの命令に白衣の女が答えていた。
「現在が人間の耐えうる限界レベルですが?」
そしたらアイツ「あっそう」って顔して答えてた。
「あぁ構わないよ?やってくれ、彼は人間ではないからね、頑丈なんだよ、問題ない」
このド畜生…!!! あぁやってみろ!電気ショックなんかに負けてたまるか!
「あああああああああぁぁぁぁぁうぁぁあああああぁぁあぁぁあああ!!!!!!!!」
それを最後に俺は意識を失ったようだ。
それから三日間ほど拷問の日々が続いたが、内容は電気ショックだけでなく兵士どもが俺をリンチすることもあった。
「ゲホッ… いってぇな…」
独房のような… 暗く狭いところに囚われてしまった。
口の中は切れてるし、度重なる電気ショックであちこち訳のわからん痛みで身体中ガタガタになってしまった…。
人間の耐えうる限界を越えても俺が耐えることができたのもサンドスターを全身に張り巡らせて痛みを和らげ回復を早めたからだ、この三日間を生き抜けたのもそれのおかげ、本当にカコ先生には感謝しかない… がそれにも限界がある、こうして休める間は回復に集中しないと。
奴等の厳しい拷問、これも俺を精神的に追い込んで本来生き物にある生存本能みたいなものを呼び覚まそうとか、そんな魂胆なのかもしれない。
うまい言い訳が思い付かなかったがスザク様のことを話したらコイツらなにしでかすかわからん… 神の逆鱗に触れてしまうかもしれない、だからできないと突っぱねてみたが。
実は野生開放ができないわけではない、かなり気合いを入れればできることはできる… ただし開放したら最後、スザク様の封印が破れ俺は再びセルリアンとしてこの場に君臨することになる。
ただ封印というくらいだから前のようにポンと姿を変えられるわけではない、よっぽど気合いを入れれば体の内からサンドスターを引き出してその勢いで封印が弾け飛ぶという感じだ、もちろん口頭で聞いただけだから実際どうなってしまうのかよくわからない。
そうすればここからは出られるかもしれないが、それは解決にはならない。
力を使い全員海に沈めてやりたいとは思うがそれをやるわけにはいかないのだ、予言の話やミライさん側の立場とか、それもあるがそういうんじゃなくって。
ヒトとフレンズのハーフである俺が人間を憎み、許せなくなってしまったら…。
それは俺の存在を否定してしまうことになる、つまり俺という存在は両親のエゴだと自ら決めつけてしまうってことだ、本来ヒトとフレンズが交わることなど決してないのだと。
ここまでされても尚、俺がこんなことを思ってしまうということは… なんて考えると、やっぱり俺も人間なんだなってそんなことを思った。
…
「さてユウキ君… ずいぶん頑張るねぇ?ただ思ったより元気そうなところを見ると安心するよ」
「肩凝りには丁度いいかもしれないな」
「ハッハッハッ!余裕が出てきたじゃないか?でも私は思ったんだよ、もしかして君にいくら肉体的苦痛を与えたところで意味がないんじゃないかとね…」
こんなこと言っているが… 多分俺への拷問はやめないんだろうな、絶対面白がってる。
俺の体の限界を同時に調べているんだ、そうすると野生開放時との差分みたいなものを割り出せるからだ… と小耳に挟んだ。
フレンズの力を付加された人間は通常時どんな状態なのか?とかも調べているはずだ、丁度いいから同時進行してるんだ。
「そこで私は考えたんだ、もっと気持ちの面も考えた方がいいんじゃないかってね?」
「なら俺の気持ちを考えてすぐに帰れ、そして二度と来るな…」
「本当にナリユキに似て口が減らないねぇ君は?そんな君に“これ”を使わせてもらう」
ヤツは白衣の男を呼びつけると薬品がすでに入っている注射器を手にとって見せてきた。
まさか麻薬かなにかだろうか…?
自分でも表情が強張るのがわかった。
「そんなに緊張しなくてもいい、これは“アドレナリン”だよ?今日はいつものやつの前にこれを打ち込んで元気になってもらおう、闘争心や生存本能を呼び覚まし攻撃的な部分を全面に押し出してやれば君の中の獅子が目覚めるはずだ」
クソ… そんなもん打ち込まれたらせっかく我慢してる怒りが爆発してしまいそうだぞ、耐えられるのか…?
いや耐える!
白衣の男が俺にアドレナリンを注射してくると、そう時間もかからず全身が熱くなる感覚があった。
この感覚はまずいかもしれない、クソ…!ムカつく面ぁしやがって!
「おぉ感情的でいい表情だねぇ?そのまま少し話をしようか?」
「さっさと始めろ…!」
「まぁ聞くんだよ… ところでユウキ君」
血の気が多くなっていくのがわかる、今にも内なる野生が表に出てきそうな感覚がある。
例えるなら檻を破るために猛獣が中で暴れている… そんなイメージだ。
そんな我慢もやっとな俺の耳に続くヤツの言葉は、俺の心を大きく揺さぶった。
「君は… 奥さんと子供がいるんだね?」
ゾクッ と背筋に悪寒が走った…。
ガシャ!
そしてその言葉に両手両足の錠を破ろうと全身に力が入る。
「なぜ知っている?… と言いたげだね?」
「家族に手を出してみろ… 真っ先にお前を殺すからな!」
「よぉしいいぞその意気だ!島を調べさせて置いてよかったよ、子供は双子なんだねぇ?いやいや感慨深いなぁ… 君が結婚して子供もいるとはねぇ?」
「約束を忘れていないだろうなぁ!!!俺以外には手は出さないはずだ!!!」
ふざけるな… ふざけるなふざけるなふざけるな!!!!
妻にも子供たちにも指一本触れさせない!
なんでコイツが家族のことを知ってるんだ!みんなゴコクに逃げたはずだ!シンザキさんはどうした!博士たちだっていたはずだ!なにやってたんだなぜコイツが家族のことを知ってんだよ!!!!
「港の反対側… そこに小さな船があってね?隊員達に島の調査をさせているとそこにこそこそと乗り込むシンザキ君達を見つけてね?いや驚いたなぁ… 他に人間がいたとは、奥さんは若い頃のミライにそっくりで美人だねぇ?あの女隠し子でもいたのかなぁ?なんてね…」
ガシャン!
「彼女になんかしたのかよ…!」
「それにしてもパークに来たのにわざわざ伴侶に人間の女を選ぶなんて君も結局、獣は獣として見ているということかな?お父さんは悲しんだんじゃないか?」
「何をしたかって聞いてんだぁッッッ!!!」
血が沸騰してるみたいだった… コイツらが俺の家族に接触してると考えただけで、島のみんながなにかされる以上に怒りが込み上げるのがわかる。
「なにもしちゃあいないよ人聞きの悪い… 君は我々のことを勘違いしているね?」
「フー…! フー…!」
「でもその反応が見たかったんだよ?もう一息だね?やはり君自身のことより周りの人を攻めたほうが君を追い詰めることができたか、本当にナリユキにそっくりな男だ君は… 実に人間らしくて、私は嫌いではないよ?」
血の昇った頭だがコイツの話を整理するに、フレンズには手を出さないと約束したが島を調べるとは言ってないということらしい。
妻や子供達は予定通り島を出る準備を進めていた、どうやら博士たちが俺の意思を汲み取って妻を説得してくれたようだ。
港から船を出すと連中に見つかることを危惧したシンザキさんは反対側から迂回してゴコクに向かうことを提案していた、事前に俺の船を移動しておいたのだ。
そして俺が囚われた翌日、みんなが船の方に向かったときだ。
あっさりと連中に見つかった。
「君の奥さんねぇ… 子供達を逃がすために抵抗してきたらしいんだよ?なにやら不思議な力を使って手も触れずにうちの隊員たちを吹っ飛ばしたらしいんだ、話を聞いた時にそれが不思議だなぁって思ってね?研究対象が増えたと思ったよ」
ガシャン!!!
「なんだとッ!!!」
「まぁ聞きなさい、それで無線越しに聞いたんだよ、君に会いたいか?と… そしたらミライそっくりな声で彼女答えたよ“夫を返して”ってね…」
連中はこそこそ逃げようとするシンザキさんたちを追い詰めて銃を向けた、それに怒った妻が野生開放して数人を返り討ちにした。
子供達を連れて先に船を出させた妻はその場に残り、ここにいるコイツと無線越しに話し合いをした。
「我々はまだ手を出していないのに彼女から先に攻撃を加えたんだ」
「妻が守らなかったら子供たちをどうするつもりだったんだ…!」
「それはその時にならないとわからないよ?というわけだから、正式な話し合いのもと君の奥さんにもここに来てもらったんだ」
「なに…!?」
「君、連れてきてあげなさい」
嘘だ… なんで、なんで来ちゃったんだよ?
扉が開き白衣の男女が横に付き、後ろからは銃を持つ男が…。
そしてその中心にはいた…。
ほんの三日間のことだが、もう会えないんじゃないかとさえ思ってた彼女が。
「シロさん!」
「かばんちゃん…!」
俺は頑丈な錠に繋がれ、彼女は後ろから銃を突き付けられているのに…。
ほんの一瞬だけ俺たち二人しかそこに存在していない… そんな気持ちになった。
「フフフ、夫婦感動の再会というやつか…」
だがその言葉と共に、そこにはいつものようにニタニタと不気味な笑いを浮かべている男がいる風景に戻った。
なにか企みがあるんだ、わざわざ俺の前に連れてきたということは間違いなく彼女になにかするつもりなんだ。
「彼女の体も検査させてもらったよ?あぁもちろん女性職員にしか触らせていないからご心配なく… 結果わかったことなんだが、どうやら彼女も人でありそうではない特殊な人間らしいねぇ?体内にサンドスターが確認されたよ、これでいろいろ合点がいった…
彼女はまさか人間のフレンズということかな?しかもその素体となっているのはあのミライだ、DNA情報が一致している、どーりで似てるわけだね…」
ガシャン!ガシャン!
「彼女を離せッッッ!!!!」
「それは君次第だ… なぁ君達!」
そいつは振り向くと男達に向かって大きな声で尋ねていた、わざと俺に聞こえるように言っているのだ。
「その女は人間じゃなくてフレンズだ、人権は無いから何をしても許されるぞ?好きにしたまえ、旦那に妻が乱れる姿を見せてやりなさい」
コイツ何を!?!?!?
「さすが、社長は気前がいいな」
「なかなかいい女だよなぁ」
「旦那の前でするのか?いいね興奮するじゃねぇか!」
「なんですかあなた達… 近寄らないで!」
「えぇ~奥さん?抵抗したら彼はこうだ…」
男達が妻を囲み、妻は野生開放してその目に光を灯し臨戦体勢に入ったが。
ヤツは俺を人質に使い容赦なく電気ショックのレバーを下ろした。
ガシャン
「あぁぁぁぁうわぁぁああああああああああああああああぁぁぁぁああ!?!?!?」
「シロさん!?やめて!なんでこんなことをするんですか!お願いやめて!!!」
「じゃあ抵抗はなしだ、おとなしく彼等を受け入れてやりなさい… いつも旦那にしてやってるみたいにね」
やめろ… やめろ… やめろ…。
「やめろ…!約束が違うぞ…!」
「それはこっちのセリフだよユウキくん、野生開放もできない君ではこれ以上なんの成果も得られない、ゆっくり妻が汚れる姿を眺めるといい、悔しかったら止めてみなさい」
やめろ…!触るなッ!
この!体が自由にさえなれば…!
「おら、おとなしくしろよ奥さん?」
「たっぷり可愛がってやるからよぉー?」
「大丈夫すぐ気持ちよくなるから」
「よーし脱がすぞ」
「いや…!いや… 触らないで!」
やめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろ。
「やめろ… 触るな!彼女に触るな!」
「自分で止めてみせろ、野生開放してな?」
腕を掴まれ、頭を押さえられ、彼女は数人の男に取り押さえられると恐怖のあまり泣き叫んでいた… でも俺のせいで抵抗もできず、ただ泣き叫び助けを呼ぶこともできない。
俺の目の前で…。
「うわぁぁぁーッッッ!?!?やめろぉぉぉぉぉ!?!?!?」
「ほらほらどうした!悔しくないのか!早くしないとお前の大事な女が…!男どもの慰み物になってしまうぞ!!!」
その言葉の後…。
俺の耳にビリビリと布の裂ける音が鳴り響き、眼前には肌を晒し体を必死に隠す妻の姿があった…。
ッッッ!!!!!!!!!!
瞬間… 何かが俺の中で爆ぜた。
「汚ねぇ手で触るんじゃねぇぇぇぇぇぇぇぇぇええええーッッッ!!!!!!!!!」
バギィィィィン… !!!
大きな金属音が船中に鳴り響き…。
獅子の鎖が。
放たれた。
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